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Miranda July

Miranda July

Aug,06 2011 12:00

ミランダ・ジュライの短編集、『No One Belongs Here More Than You: Stories / いちばんここに似合う人 (新潮クレスト・ブックス)』('07)(翻訳版 2010)をようやく読む。
映画『Me and You and Everyone We Know / 君とボクの虹色の世界 [DVD]』('05) の監督でもある彼女の16話からなる不器用で孤独ゆえに奇妙な行動してしまう人々のお話。

この人は何だろうね、もの凄く自分に正直で等身大の己の感性を作品に投影している気がする。
人間は見栄をはって背伸びしてみたり、他人が自分の事をどう考えているかを妙に気にしてみたりする訳なのだけれども、「だって人間なんだもん、仕方ないじゃない」といとも簡単に肯定する。
そして孤独だけれども、何処かユーモラスな人々を描く彼女の独特の手法は非常に細やかで、更には彼女の持つ一種の優しさみたいなものまでが作品の内側から溢れ出てくる。
そのディテールの丁寧さや日常のなんでもない事が、この人にかかると魔法にかけられた様に生命力を持つ。
無造作に置かれた雑誌やらベットのシワやらそこら中のものが、大事なアイテムであり物語の布石となる。
神は細部に宿るとは良く云ったもの。

名もなき者の、しかしその人にとってはそれが全てである生活、どこにでも居そうな人間のささやかやな生活を大事に大事に表現する。
その辺りは彼女のアートパフォーマンスやWebサイトにおける取り組みでも垣間見る事ができ、その名もなき人々を尊重する態度に尊敬すら覚える。

ソフィア・コッポラを引き合いに出すのもアレだけれども、昨今の女流作家として懐の深さを表現するに至ってはミランダ・ジュライの方が個人的には好みではある。
共に恵まれた環境で育った様だが、ソフィア・コッポラの方はそれはそれで面白いのだけれども、どうにも富裕層の悩みと云うか、いささか共感しづらいものがある。
と云うか、単純にミランダ・ジュライの方が可愛いかったりする。ストライクでタイプ。
容姿に関してはこっちに完全に軍配が上がる。

ミランダ・ジュライの作品は細かいものにまで持つ彼女の旺盛な好奇心がこちらに伝わってくる。
生活するって事が、まるで宝探しをする事だと言わんばかりの表現が作品内の不器用に生きる人々と同様に享受しているこちら側のどうしようも無くパッとしない生活にも束の間の安堵を与えてくれる。
彼女の好奇心は自己の分析に始まり、壮大な宇宙の心理にまで辿りつく。彼女自身の言葉で。
良くも悪くも自分を知ると云う事が、自分を表現するにあたっての超がつく程の基本事項なのだと再考させられる。
語り口にユーモアが溢れているのもやはり好奇心の結果としての視野の広さの賜物であるのだろう。

忘れた頃にちょくちょく読み返したくさせる、そんな一冊である。
映画の方の次回作の"The Future"もそろそろっぽい。最も公開が楽しみな作家の一人である。

Miranda July Website (死ぬほど重い)

))<>((

category: 映画芸術

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