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白痴

白痴

Mar,04 2007 15:00

新・習劇 第14回 『白痴

「マリィが歌ったぞ!」

いまさらながら、ドストエフスキーの『白痴(新潮文庫)』をこの3ヶ月の間読んでいた。
正直『カラマーゾフの兄弟(新潮文庫)』や『罪と罰(新潮文庫)』の方が面白いと個人的には感じるものの、ドストエフスキー自身はこの作品がお気に入りらしい。
無条件に美しい存在として描かれた「ばか」と呼ばれる青年が普通の人々の間に投入されると云う設定。
実際キリストみたいなのが、突然職場なんかに現れたら何事もおこらないでは済まないみたいな。

自分達と極端に異なる性質を持つ人間を異端児と見てしまう我々の性の切なさ。

読み終えたと云う事で、黒澤明版の『白痴』('51)を久々に観る。
なんと、まぁ、原節子(那須妙子)の顔がいつ観ても凄い。
そんなに過剰に引き攣らなくてもと云った感じである。
これが絶世の美女として描かれているナスターシャ・フィリポブナかと思うとややげんなりする。
那須妙子=ナスターシャ・フィリポブナ
う〜ん。
亀田欽司=ムイシュキン公爵
綾子=アグラーヤ
う〜ん。。。
レーベジェフが左卜全って云うのはなかなか。
三船のロゴージンはハマり役。

この流れで、『生きものの記録』('55)もついでに観る。
個人的には圧倒的にこちらの方が面白い。
どう考えても三船の年寄り役より志村喬の方が年上に見える。
東野英治郎の胡散臭そうなブラジル焼けと言い、内容以外でツッコミどころが多いこの作品。
最後の中村伸郎扮する精神科医が言う台詞、


「狂っているのは、あの患者なのか、
こんなご時世に正気でいられる我々がおかしいのか。」

なんとなく『白痴』とリンクしていないでもない。