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フィルム·フェチ ロゴ

荒島晃宏監督作品『フィルム・フェチ』

Mar,29 2013 12:30

filmFetish

その昔に都内某映画館で一緒に働いていた『映画館のまわし者―ある映写技術者のつぶやき (SCREEN新書)』著者、 荒島晃宏氏の監督作品で自主製作短編映画『フィルム·フェチ』のサウンドトラックを担当させて頂いた。
私が評価するのもなんですが、この荒島晃宏氏と云う人物、非常に個性的な人で映画は勿論、音楽やら美術にも理解が深く、 インターネット黎明期にやたらディープなウェブサイトを運営するなど、なんとも多彩な人であります。
一緒に働いていた時期は映画や映写機周りのお話よりはくだらない話ばかりしていた記憶の方が多いのですが、今日まで続くいくつかの習慣はこの人に影響されたものであったりする。

さて、そんな事で荒島氏よりサントラ制作の依頼をされる運びとなった訳ではありますが、長年音楽をやっているものの考えてみればちゃんとサントラを書くなんて事は初めての事なので、正直できるかどうか不安だったのだけれども、軽〜く承諾してしまったのは去年の夏頃。
その後、荒島氏が撮影と都内某映画館の閉館による多忙を極め、かたやこちらは秋から冬にかけてはすっかり忘れていたのだけれども、この2月の終わりより晴れて制作作業に入る事となる。

当然の事ながら、渡された映像には音声のみ。
監督が用意した音楽の挿入部分はルームノイズもない見事なまでの無音状態。
頭では分かっちゃいるけども、映画音楽を作る時はこの状態が当たり前な訳で、にもかかわらず思わず音を探してしまう超経験不足な自分がいた。
やべぇどうしようなんて思いつつ、ファミレスにて監督との打ち合わせをする。
先に頂いていた脚本を元に作ってあったイメージトラックを基軸に展開して行く事となる。
とりあえず、キーだけは決まったようなものなので、早速後日より作業に取りかかる。

普段は音だけなので、DAWを立ち上げたら思うがままに音を詰め込んで行くだけなのだけれども、サントラの場合そうも行かない。
先ずは音挿入部分の映像を読み込み、テンポ検出やらタイミングのポイント設定やら、普段はやらない下準備をきちんと行う。
いやまぁ、プログラミングとかでも何でもそうなのだろうけども、できる人は常にこう云う事をちゃんとやっているのだなと己の適当さを再認識する。
しかし、このタイミングってものはなかなか難しくて、やはり極力映像に音が合っていた方が効果的な訳ではある。
ガッと変わってバッと音が入った時の気持ち良さってものがある筈です、はい。岡本喜八的な。
しかし、映像を編集している方にしてみれば、別に4/4でテンポとって繋いでいる訳でもないって事で、曲作りの段階からかなりこの問題には悩まされました。

そんな具合で困りつつもなんとかラフテイクをサクッと完成させてOKを頂き、いざ正式な録音の段階へ移る訳ですが、季節はすっかり春。
宅録人間には自然音やら生活音が最大の的でもあります。
連日の様に吹き荒れる春の風。煙霧なんて日もありました。
なんでアコギ中心の構成にしちゃったかなぁと後悔しつつ、マイク位置やら何やら工夫を重ね、録音してはやり直しての毎日を過ごす。

当初は2〜3週間で終わらせようと考えていたものが、まるっと1ヶ月かかった末のようやくの完成。
なにぶん初めての事だったので、苦労を重ねた分だけ一通り完成して映像に合わせて流して観た際は感無量の境地。
大変ではあったけれども非常に充実して幸福な1ヶ月だった。
この後、整音を経て晴れて2013年5月10日、第4回 日本シアタースタッフ映画祭 in 成城にて上映が予定されているとの事。
それに合わせてサントラアルバムをまとめられたらと思う今日この頃。

自主製作短編映画『フィルム・フェチ』公式ブログ
http://ameblo.jp/kariyahikaru/

日本シアタースタッフ映画祭 公式サイト
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