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アニー・ホール

Films: Nov.2025『アニー・ホール』ほか

Dec,03 2025 13:00

相変わらず捗らない間にまた一つ歳をとってしまった。サクッと進めたい気持ちはあるにはあるものの、妙な完璧主義のおかげでどうしてもスムーズにいかない今日この頃。
そんな11月はアンドレ・ド・トス監督『肉の蝋人形』から始まり、マリオ・バーヴァ監督『ファイブ・バンボーレ』、山本政志監督『リムジンドライブ』にジョン・ウー監督『ハード・ボイルド / 新・男たちの挽歌』とクセ強な作品がチラホラと。
先月からの続きで、今月もオタール・イオセリアーニ監督作品で『ある映画作家の手紙。白黒映画のための七つの断片』、『月の寵児たち』、『エウスカディ、1982年夏』、『トスカーナの小さな修道院』、『そして光ありき』、『蝶採り』と大分進む。
日本映画は小津安二郎監督『風の中の牝鷄』、鈴木則文監督『文学賞殺人事件 大いなる助走』、降旗康男監督『冬の華』、山田洋次監督『キネマの天地』、そして木下恵介監督『不死鳥』とどれも傑作揃い。
イオセリアーニ監督作品が多かったせいか、フランス映画ばっかり観ている気分だったものの、数えてみればモロなのはジャン=ジャック・ベネックス監督『ディーバ』にアニエス・ヴァルダ監督『アニエス・Vによるジェーン・b』くらい。
上のフランス作品2本にイオセリアーニ監督作品の『月の寵児たち』や『蝶採り』などと悩みに悩む。11月はファッションについてやたらと考えていた月でもあり、その流れで久々なウディ・アレン監督『アニー・ホール』がやはり象徴的で、お洒落ってのはやはりこういう事だよなの再確認として11月の顔とする。

そんなかんなで気付けば師走。年内に予定の作業は終わらなそうな雰囲気なものの、やるだけはやりたい。

観た映画: 2025年11月
映画本数: 18本

蝶採り

古城と老人を中心とした失われゆくものたちが描かれる。可愛い婆ちゃん達にのどかで歴史を感じさせる田舎模様、美味そうなあれやこれ等々、目に優しい視覚要素に満たされている。イオセリアーニ作品らしく、常に何処かで流れる音楽に自然や動物の心地よい音の効果も抜群。なんだけど、形あるものは壊れる世の常を粛々と映画の中でやる。バブル期の日本人の図も如何なものかと思うけど、監督の予想とは事なるも21世紀に入ってもっと酷いことになってるユーロ圏でなんとも言えない気分。美しいものや良いものを壊す人々への憤りを、時に亡霊を用いながらあくまで品のあるやり方で映画にする。傑作。

鑑賞日:2025/11/30 監督:オタール・イオセリアーニ


ハード・ボイルド / 新・男たちの挽歌

出来上がってるな。二丁拳銃にスローは当たり前として、無限に敵と弾が出てくる感じが適当で最高。細かい事は置いといて、映画的にカッコいいを極限まで追求する姿勢が素晴らしい。『インファナル・アフェア』の10年くらい前に先取りな潜入捜査官ものなんだけど、後半はそこら辺がなし崩しというか、より熱いバディものに変化してる感じで二度美味しい具合。ゴッドファーザーやら色んなパロディみたいなやつも満載でやりたい事をやりたいだけやってる感じ。破壊し尽くすまでの銃撃戦でスッキリよ。

鑑賞日:2025/11/28 監督:ジョン・ウー


そして光ありき

冒頭の生首蘇生でフィクションとしながらも、近代化への思うところあるイオセリアーニの作風もここまで来たって感じ。多声楽ほかの音効果も極まってる。迫り来る伐採に象徴される文明で、アメちゃんやら漫画で原住民の子供から虜にするっていう。ほっとけば幸福にやってるところに、文明格差を埋める必要があるのかという疑問と、高い文明は力なりなんなりで侵略されるジレンマとでなかなかに奥深い。まずは服を着るところからだって事で、木の像まで服を着る辺りがシヴィライゼーション・レボリューション。通信手段は木ってのはスマホより味がある。

鑑賞日:2025/11/26 監督:オタール・イオセリアーニ


不死鳥

本作デビューの若き佐田啓二と田中絹代38歳。ちょいと無理のある女学生も次第に違和感なくなるし、抑圧を重ねた上のクライマックスの爆発で問答無用な大女優の貫禄って具合。家父長制に抗いながらの燃えてるキッスシーンに、若者達が己れの道は自分達で決める時代にこれからはなるのだっていう木下恵介以下、戦中派の静かなる決意表明にも思えて熱い。未亡人となっても幸福と言い続ける事の出来る幸福ってのが実に良い。で、片や没落華族といえど両家共にデラックスで華があるのがこれまた良い。昔のニコライ堂のあたりもたまらんな。

鑑賞日:2025/11/24 監督:木下恵介


ディーバ

色んなブルーが出てくるんだけど、全てが美しい。夜明け〜早朝の感じとか特に素晴らしい。インテリアからロケーションに至るまで映像が完璧なんだけど、2本のテープを巡ってのすったもんだも良く出来ている。『波を止めたい男』のリシャール・ボーランジェの超面倒くさそうな海のパズルの如く、どうやって埋めてくのよって感じなんだけど、終わってみれば最後のピースまでキッチリすっきりハマって気持ちいい。これがデビューのジャン=ジャック・ベネックスで、この後のフランスの監督に結構影響与えてそうなニオイもする。

鑑賞日:2025/11/23 監督:ジャン=ジャック・ベネックス


トスカーナの小さな修道院

ほかのイオセリアーニ作品同様に和声と田園風景の切り取りが心地よい。生きる為の殺生含めた自然との程よい調和具合で、出て来る食べ物やワインも添加物なんかが入ってなさそうでどれも美味しそう。ハンティングのシーケンスの後で得意の毛皮描写は監督お得意って感じ。ちまちました壁画や楽譜の修復のとこも良い。けたたましいTVの下りもちょっとしたアクセントになっている。20年後に妙な具合で近代化されてない様にって願いを感じる。

鑑賞日:2025/11/21 監督:オタール・イオセリアーニ


キネマの天地

大船撮影所50周年記念作品って事でなかなかに力が入ってる。強力な4人の脚本に、監督山田洋次でガッチリ出来上がってる。とらやの面々のみならず、名優揃いな常連で脇を固めつつで、80年代の松竹っぽさもあって非常に華もある。田中絹代モデルって事らしい有森也実で、辿々しいというか下手くそな感じが役柄に合っててこれまた良い。何はともあれ、渥美清と倍賞千恵子でねじ伏せるって感じ。荒廃しきった浅草の最後の時期に某劇場で働いていたけれど、栄華を極めた時代との雲泥の差に時の流れの残酷さを見る。そんなかんなで、渥美清のラストからオールナイト番の際に遭遇した死人の記憶が蘇って、これを対応する劇場側がちょっと気の毒だなと思ってしまった。

鑑賞日:2025/11/20 監督:山田洋次


アニエス・Vによるジェーン・b

なんというか、この2人じゃなきゃ撮れない作品。ジェーン・バーキンの存在感とアニエス・ヴァルダの映画的魔法が満載って感じ。時折、ミック・ジャガーに見える40歳のジェーンではあるけれど、昨今の判で押したような顔面整形の安っぽい連中には到達できない総合的な美を感じる。服装から何から気取らないのにお洒落っていう、まさに生き様って感じ。そんな人物像を、名画風静止画やら超現実的なあれこれに美しく映像化しつつ、断片みたいなシーケンスを見事に組み立てるA・ヴァルダで良く出来てる。貧乳好きのセルジュ筆頭に身内的な登場人物の出演時間の塩梅に、チキンの縄に過剰反応するレオーも良い。

鑑賞日:2025/11/18 監督:アニエス・ヴァルダ


リムジンドライブ

Y2K時代にガングロコギャルがNYにいるって設定(その上ラッキーガール)だけで掴んでくる。ちょっと色モノっぽい感じでその昔流行ってたT•M•スティーブンスが、主演に音楽にとかなり頑張ってる感じでこれまたイイ。そんな訳でこれまでのところどれ観ても面白い山本政志監督作品で、今作も例外じゃなくその時代を描きながら時代を先取りしてる印象は変わらず。小話が通じない→通じる、リムジンの後部座席→助手席の距離感のほっこり描写とか、広がったものの綺麗な回収とか見事。ベースの弦だけ響いてるとことかも実に良い。で、恐怖の鬼丸さん要素と諸々のコメディ要素のバランスも絶妙。

鑑賞日:2025/11/16 監督:山本政志


冬の華

久々。あしながおじさんをベースに、倉本的な人情ものに東映の実録もの、更にはゴッドファーザーでやってそうなあれやこれのごった煮感。欣也含む設定から食い物のバリエーション、「なんとかならんか」の小池朝雄までかなりまんまな感じで、まぁ上手いことオマージュしてる。時勢の中で苦悩する昔カタギの図はお手のモンな具合で流石な健さん。存在感だけで押し通せるからスゴイ。で、冒頭からラストまで何とも言えない表情が上手。ヴァイオリン片手にチャイコのピアノ・コンチェルト(アシュケナージ指揮)が好きな池上希実子もまた何とも言えない。三浦洋一が暴れる背景に健さんと田中邦衛の冷静な図等々含めて、総じて結構面白く出来てると思われる。昔の横浜もやっぱりイイな。ネットミーム化したジャムパンに、オロC飲みまくる上にカレーは飲み物を実践する小林亜星。クドいまでに繰り返されるクロード・チアリもしみったれてて実に良い。

鑑賞日:2025/11/14 監督:降旗康男


エウスカディ、1982年夏

十人十色なかぶり方でみんなバスク帽が流石に似合ってるな。祭りの準備から本番できっちり伏線を回収した上で、モノクロからカラーの鮮やかな切り替えで尚のこと素晴らしい。そして他の作品同様に音使いも絶妙。牧童の村総出の一体感みたいなのも現代から見るととても良い。検問の描写を交えてフランス側バスクの微妙な立ち位置を一瞬で表現するのも上手い。何はともあれ、ワンコが牛を追い、メルメルメェ〜の軍団がドドドドと駆ける絵面だけでも楽しい。

鑑賞日:2025/11/12 監督:オタール・イオセリアーニ


文学賞殺人事件 大いなる助走

文壇に対する筒井康隆の私怨全開で最高。日本におけるSF作家の扱いの不満を自らぶち撒ける。メタ的な展開の組み立て、味のある役者群でそれらをきっちり映像化、更には女優の無駄な露出やカーアクションもねじ込まれていて実に面白い。文学のみならず、芸術全般に携わる成功できてないミカン箱状態な末端の人々の話な具合で結構グッとくるものがある。歓喜の歌抜きな芥川也寸志版第九と車のナンバー444の不吉な感じ等の細かいとこも良く出来てる。

鑑賞日:2025/11/10 監督:鈴木則文


アニー・ホール

久々。冒頭のグルーチョの引用『私を会員にするようなクラブには入りたくない』で完結してるからスゴイ。10代で初めて観た時から座右の銘みたいな具合で影響を受けた末に、改めて中年になって観てみると一つ一つの台詞がグイグイ来る。テンポも良いし、ユダヤネタにベルイマンネタなんかのジョークも冴えてる感じ。ポール・サイモンほか錚々たる出演も、それぞれきっちり適材適所にピタっとハマってる。クリストファー・ウォーケンのあの顔と暴走願望の下りとか最高。そして、ファッションってのはこう云うのってお手本映画でもある。ダイアン・キートン期やっぱり良いな、傑作。

鑑賞日:2025/11/08 監督:ウディ・アレン


風の中の牝鷄

屹立するガスタンクの鉄骨とその下のボロ家屋だけでハードな状況が良く分かる。のっぴきならない事情で踏み外し、物理的にも落ちる田中絹代が気の毒。嬢に諭すお客をやりながら、妻を許すもキツく当たる佐野周二の素直になれない感の人間臭さが良く描かれている。生存確認はしつつも、座って待つ嫉妬やら何やらでグチャグチャになって安易に駆け寄らない微妙な表現がまた良い。若かりし頃の明るい未来を川辺で語り、社会と個人の挫折を経て尚、明るい未来へって事で、小津安二郎本人は失敗作と位置付けてるらしいけれども実に良く人の苦しみが描かれており素晴らしい出来。しかし普段あんまり暴力描写しない監督がやると余計にくるものがある。

鑑賞日:2025/11/06 監督:小津安二郎


ファイブ・バンボーレ

きっちりアガサ・クリスティ的クローズド・サークルに仕上がっている。と云うかお洒落物件にウミリアーニ劇伴にとモンド全開なだけで楽しい。『最後の晩餐』のマルコ・フェレーリ然り、冷凍室にズラッと死体を詰め込むイタリア人の傾向が意味不明で好き。エロいエドウィジュ・フェネシュがエロい殺され方してて堪らん。人間の欲望は酷いナー。

鑑賞日:2025/11/04 監督:マリオ・バーヴァ


月の寵児たち

18世紀の絵皿と裸婦像から現代、色んな階級や職業の人から人、原因から結果へと滑らかで流れる様な群像劇。手品みたいにシャッフルしながらも、最終的にスーッと展開する気持ち良さがある。ブルジョワの破滅とプロレタリアの奇跡の組み合わせがテオレマっぽくもある。そんなかんなで『ある映画作家の手紙』がここに実現されてる感じなのも実に面白い。ジョージア時代から一貫してテンポと音楽や効果音の音使いが巧みで素晴らしいの一言。新しいものより、破壊からの再生に監督のこだわりを感じる。

鑑賞日:2025/11/03 監督:オタール・イオセリアーニ


ある映画作家の手紙。白黒映画のための七つの断片

活動の場をパリへ移し西側を満喫してる風でありながらも、やっぱり都市のそれに対して田舎的音響を当ててくる感じとかのアイロニーがピリッとしている。映像のあれこれがこの後の『月の寵児たち』にも活かされいる模様。ワンちゃんと毛皮を着る人間のやつとか、フランス的縦列駐車の斜め上を行く斜め停めとか非常に面白い。

鑑賞日:2025/11/02 監督:オタール・イオセリアーニ


肉の蝋人形

肉がどうやって蝋人形なるのか気になって。冒頭のタイトルからやり過ぎな立体フォントに、呼び込みが無駄にバンバン球をこっちへ向けて打ってくると思ったら、元々は3D公開だったとの事で納得。火事で蝋人形がドロドロになる結構なトラウマ級グロを最初の方でやってキッチリ掴んできてから本題な構成でなかなか良く出来てる。中盤から出てくる地下室のグッツグツなやつ、最後に飛び込んでくれと言わんばかりで最高。助手はチャールズ・ブロンソンの蝋人形かと思いきや、駆け出しの頃の本人だった。

鑑賞日:2025/11/01 監督:アンドレ・ド・トス