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ワンダーウォール

Films: Jan.2026『ワンダーウォール』ほか

Feb,01 2026 11:30

新年一発目は好きなものという事で、何年かぶりの勝新太郎監督、主演作品『顔役』より。問答無用って感じ。
続いて2日は去年の誕生日に貰ったジョー・マソット監督、ジョージ・ハリスン音楽の『ワンダーウォール』のBlu-ray開封からの20年振りくらいの鑑賞。
そして3日はこちらも久々、ヴェラ・ヒティロヴァ監督『ひなぎく』。4日に押井守監督『ケルベロス 地獄の番犬』、5日に中原俊監督『櫻の園』と傑作揃いで充実の正月映画だった。
正月が明けてからは、山田洋次監督『愛の讃歌』、久々のポール・トーマス・アンダーソン監督『マグノリア』、デルバート・マン監督の『マーティ』、シドニー・ルメット監督遺作作品『その土曜日、7時58分』といずれも素晴らしい。
それから『軽井沢シンドローム』を読んでいたせいか、後半は'80年代ムードで、『天使を誘惑』、『スローなブギにしてくれ』の藤田敏八監督作品で時代感を堪能。
昨年から初期作品より観続けてきたオタール・イオセリアーニ監督作品は『月曜日に乾杯!』、『ここに幸あり』、『汽車はふたたび故郷へ』、『皆さま、ごきげんよう』の晩年の作品を経てついに完結。いずれも素晴らしい作品だった。
あと昨年から続いていた『銀河英雄伝説』も正月明けについに完結。銀英伝ロスに浸る間もなく外伝を鑑賞中。それの合間に押井守監督『御先祖様万々歳!』とこちらも圧倒的クオリティだった。
そんなかんなな2026年1月で、月を飾る顔は例年通りだと『顔役』なものの、前にやった気もするので、今年は華も考えて『ワンダーウォール』に決定。

だいぶズレ込んだ末に今年リリース予定のアルバム作業も、現在は最後の曲に取り掛かってる最中。
加えてウェブサイト刷新にその他のサイトや諸々で、なかなか忙しく過ごしている。
ともかくは結果を残したい今日この頃。

観た映画: 2026年1月
映画本数: 17本

皆さま、ごきげんよう

初期短編から観続けたイオセリアーニ作品もこれにて完結。フランスお家芸的ギロチンから始まり、ジョージア内戦模様を挟んで現代へ。大きなものから小さなもの、無駄なものから再利用まで、人間同士は常に何かを奪い合ってるって滑稽さ。自然の恩恵や与えられるものなど、そこかしこに存在するものを見逃すなかれっていう変わらぬ切り口。歓喜の歌をディスりつつ、手の届く幸福の数々が失われてしまう前に機を逃してはならぬと。まさに冬の時代の歌って具合。色んなイオセリアーニ作品に登場するモチーフがあっちこっちに散りばめられているのも楽しい。常連に加えて、今作はルンペン役のピエール・エテックス。良かった。

鑑賞日:2026/01/29 監督:オタール・イオセリアーニ


スローなブギにしてくれ

久々。最近『軽シン』読んでたせいで、個人的に80年代ムード。浅野温子という仔猫を抱いた仔猫ちゃんを第三京浜で拾う山崎努と古尾谷雅人。からのお馴染みな米軍ハウスで原田芳雄をはじめとした乱れた感じと、あっちこっちの暴走族で片岡義男感が満載。増殖する居候、増殖する仔猫たちで、人間か猫かってな具合で、終盤に浅野温子を探す男2人の図は完全に野良猫探してるソレって感じで微笑ましい。良くも悪くも刹那的な世代だけど、やっぱり今の若いのとは熱量が違う気がする。と、吉野家感のある吉野家。

鑑賞日:2026/01/27 監督:藤田敏八


汽車はふたたび故郷へ

映画は90分に収めるべきに抗う126分。苦労人イオセリアーニの自伝とも言える内容で、ジョージアからフランスへの流れが良く分かる。検閲食らった『珍しい花の歌』から、ところ変わって『ある映像作家の手紙』で何処へ行っても憂き目に遭う監督。幼い頃のノスタルジーから行き着く先は、共産圏でも資本主義圏でもない場所へとって事で水難の相が出まくりな具合。いささかキレがなくっている気もしなくはないものの、蛇行する列車の美しい絵面や監督の作品に度々登場するモチーフ等々とで普通に良い。孫が祖父の役を演じて、祖父が見守り、祖父の役が孫の行く末の水面を見届けるややこしさ。おまけにエディター役、ピエール・エテックス。遊びまくってて良い。

鑑賞日:2026/01/25 監督:オタール・イオセリアーニ


その土曜日、7時58分

シドニー・ルメット遺作。リオの楽しいひとときのOPでガッツリ掴む流石な巨匠。からの、家庭崩壊っていうレベルじゃない。フィリップ・シーモア・ホフマンとイーサン・ホークのただでさえルーザー面な2人なんだけど、監督の期待以上のモンをだしてる感じで素晴らしい。この兄弟を中心として、家族間の潜在的な問題を浮かび上がらせ、ぶつ切り、時系列シャッフルで整えられて行く見事な構成。悪魔に知られる前に天国へとんずらキメたい、ってタイトルも納得できるほど気の毒な内容ではある。悪い事をした順にきっちりジャッジする感じもシドニー・ルメット作品っぽい。旬な時期のマイケル・シャノンもなかなか。んで、ピザデカいなー。

鑑賞日:2026/01/22 監督:シドニー・ルメット


天使を誘惑

時期的に百恵・友和コンビも阿吽の呼吸みたいなぴったりしっくりくるものかある。東京に挫折した女を無理矢理東京に引き戻すってとこから始まる東京物語で、実に乱れた親世代。そんな刹那的な青春を切り取らせたらやっぱりピカ一な藤田敏八で、不自然なパンからのカメオ出演ありでもう流石って具合。過去のドス黒い何かを背負いつつ、未来の重荷を迷いから捨て、それでも一応は進んで行くっていう役柄は百恵ちゃんしか出来ない気もする。そんなこんなで、結構重い話なのに、プレイバックPart2をネタ的にやってみたり、変なヅラ被った大友柳太朗とか、加山雄三を真似る津川雅彦とかおふざけが過ぎててまた最高。で、ファンキーなアレンジのブラームスとのっけタイトルは大林作品っぽい。

鑑賞日:2026/01/20 監督:藤田敏八


マーティ

痛みを知る者が流されなくて良かった良かった。デブサメンと地味子(ベッツィ・ブレアが冴えない子は無理がある)の、そこここにありそうな話。世の中、顔じゃないんだよっていう真理の部分と周りの圧、男の見栄の葛藤。更には戦後の核家族問題とで、もうコイツをほっといてやってくれと何度も思う。宝物を見つけたんだって言う2人の止まらない21時から深夜までのおしゃべりと、幸せが溢れんばかりになって画面から漏れそうになっている演技が素晴らしい。

鑑賞日:2026/01/18 監督:デルバート・マン


闇金の帝王 銀と金

中原俊作品を観たくて。『櫻の園』的な演出はない。そんな訳で福本伸行原作は読んでないけど、キャラが立ってるのは良く分かるし、カイジなんかにも通ずる'90年代のあの金にまみれた感じは良く出てる。全体的に安っぽい仕上がりになりつつも、坂ロケーションの数々や天本英世ほかのサブが結構熱かったりで、総じて結構面白くはある。銀王・中条きよしのヘアースタイルが超個性的。

鑑賞日:2026/01/16 監督:中原俊


ここに幸あり

ほかの作品と変わらず豊かさについて問う落書き王のイオセリアーニ。のっけにまず棺桶を出してから、劇中の台詞で『人生は長いのだ』、ならばと言う事で流れる至福の時間。与えたものだけが残るって言うかなり重要な人生の哲学を、タバコをあげる小さなところから始まり、色んな優しさで示される。だからこそ幸福でいられるのだと、持たざる者のなんたるかを示す。主人公のお母さんの声がなんかオッサンっぽいなと思ってたら、まさかのミシェル・ピコリ。ほんと色々やるよねこの人。しかしパリの様子も'00年代に入っていよいよ本格的に変わってきてるな。

鑑賞日:2026/01/14 監督:オタール・イオセリアーニ


マグノリア

25年振りくらい。子供の頃に『はれときどきぶた』流行った世代なので、空からは色んなものが降ってくるもんだくらいに捉えている。未来を云々のソレに対して、今作はそれぞれのキャラに過去がついてまわる群像劇となっている。贖罪を求める全てのダメ人間たちを、どこまでも優しく愛おしげに描写する神の目線ことPTA。恐らく彼の名を世に知らしめる事となった今作で、それぞれを丁寧に描きながらもテンポを失わず飽きさせない仕上がりになっているので、その昔勤めていた都内某封切館で長尺ながらもの凄いヒットしてたのも頷ける。『あり得ない事は起こり得る』=アレが降ってくる映画で、観た人全てがこの作品を一言で表現する事が可能なのもまた凄い。なんという赦しの映画。傑作。

鑑賞日:2026/01/12 監督:ポール・トーマス・アンダーソン


アメリカン・ジゴロ

とりあえず、OPのヒット曲『コール・ミー』と絶頂期のジョルジオ・モロダー劇伴でガッチリ掴んではくる。リチャード・ギア自身もポロんと曝け出しながら、おばさま相手のあれやこれを力説するリチャード・ギアは結構熱い。ハメる仕事がハメられるって言う筋書きなんだけど、良く考えると総体的にローレン・ハットンにハメられてる風でジゴロも形無しといった具合。「探してたのは君だったんだ」って言う女の術中にハマって、飼い慣らされるジゴロの末のトホホ感。そこら辺と後半をもうちょい丁寧に演出して欲しかった感じはする。

鑑賞日:2026/01/10 監督:ポール・シュレイダー


愛の讃歌

マルセル・パニョルの戯曲ベースって事で、瀬戸内海もなんとなく地中海に見えてくる。脚本山田洋次と小さく森崎東で、OPの時点で約束されてる感じ。おかっぱの倍賞千恵子が異常に可愛いのはともかくとして、有馬一郎、伴淳をはじめとした紅一点を囲む味のある役者たちを的確に使い分けてるのが見事。常にヘソ出しルックの千秋実に、とらやにいるみたいな太宰久雄、ポストマン小沢昭一、左卜全に北林谷栄などなどで非常に彩り豊かって言葉がしっくりくる。飛び出す中山仁がしょーもないのは置いといて、それぞれの主要キャラの忍耐模様が泣ける。良かった。

鑑賞日:2026/01/08 監督:山田洋次


月曜日に乾杯!

人生の束の間のログアウトの表現が実に豊か。旅の道中もさることながら、冒頭のタバコと工場の煙モクモクなブルーマンデーの群像描写すら見事。サイレントでも成立してしまう様なクオリティでありながらも、音楽に自然音に雑音を操るイオセリアーニで相変わらず見事なんだけど、カメオ出演で音でハッタリかます辺りが凄すぎ。海上を行く観光客の知らない高い目線のヴェニスに泣きそうになる。素晴らしい、傑作。

鑑賞日:2026/01/06 監督:オタール・イオセリアーニ


櫻の園

久々。のっけからラストまで無駄のない異常な出来の良さ。おばちゃん予備軍のまさに櫻の園の時代を切り取ってるって感じ。去年とも来年とも違う特別な一日の数々のエピソードに、中年男性をも連続してキュン死にさせる破壊力がある。青春の胸中の大きな動きを、あくまで静かな動作や描写で表現するって感じでクオリティが高い。吉田秋生の原作また読みたくなってきちゃった。やっぱり生まれ変わったら女子高生になろう。傑作。

鑑賞日:2026/01/05 監督:中原俊


ケルベロス 地獄の番犬

前作の逃亡中の話。終始徹底した哀しきワンちゃん目線と迷宮感が後のイノセンス的な雰囲気を感じさせる。かと思えば埋立て地の特車二課棟全景みたいな開けた構図に、満喫しきった台湾、香港ロケのGHOST IN THE SHELL感やらの押井守満載な具合。迷子の野良犬ちゃん達の束の間の安息をやりながら、国家の痕跡を探し求めている様にも感じられる。哀愁ギターの川井憲次劇伴も素晴らしく合う。『殺しの烙印』の炊飯器ばりなカルピスのCMも最高。

鑑賞日:2026/01/04 監督:押井守


ひなぎく

2026年3本目。我が家のライブラリから15年振りくらい。現代だったら回転寿司の醤油舐めてそう。貪欲に摂取し、破壊を重ねるっていう現実社会の惨状をガーリィフィルターを通してやる。現実の酷さに比べたらコイツらの奔放さなんてかわいいもんみたいな。破壊の末にあるのは単なる瓦礫かニューオーダーか、プラハの春的予感と劇中の行為と共に異様なエネルギーが封じ込められてる。色彩豊かな映像にファッション、更には鬼コラージュで時代を先取りしすぎ。

鑑賞日:2026/01/03 監督:ヴェラ・ヒティロヴァ


ワンダーウォール

2026年2本目は昨年の誕プレで貰ったブルーレイ開封で20年振りくらい。ヨレヨレのVHS画質で初めて観た16~17歳くらいの頃は内容も分からず、只々サイケな映像に圧倒されていただけだったものの、改めて中年になって観ると超哀しい映画で泣ける。研究対象がマウスからロンドン時代の可愛いジェーン・バーキンに入れ替わる訳だけど、物理的~精神的な壁が厚過ぎてまぁ切ない。パーティーの下りとか、完全に飛雄馬のクリぼっち回だわな。スウィンギング・ロンドン絶頂の見渡す限りの大好物な映像は勿論、ラーガな『不思議の壁』からモーグ全開な『電子音楽の世界』の流れを感じさせるジョージの才能が迸ってる。素晴らしい。

鑑賞日:2026/01/02 監督:ジョー・マソット


顔役

2026年一発目。次に何がどう映されるか分かってても楽しい。極道も警察もへどろにまみれた社会の中で、歯車というか機械から脱する勝新で生命力しか感じない具合。カッコいいをストイックに追求する映像、演出もさる事ながら、大滝秀治や伴淳をはじめとした役者達のポテンシャルを最大限に引き出す手腕も飛び抜けてる感じで、監督デビュー作品とは思えないほど。圧倒的。と、山崎努の飯テロ弁当。

鑑賞日:2026/01/01 監督:勝新太郎