
Films: Feb.2026『ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ』ほか
Mar,01 2026 11:30
バタバタしてる間にただでさえ短い月があっという間に過ぎ去っていった2月。
そんなかんなで、月の始めはお初のナンニ・モレッティ監督の『親愛なる日記』から。続けて『ナンニ・モレッティのエイプリル』も鑑賞。グダグダしてるとこが最高。
それに釣られてか、配信されていたので久々の『ウディ・アレンのバナナ』も。
再鑑賞もの他には、先日亡くなった長谷川和彦監督を偲んで『青春の殺人者』と、スタンリー・キューブリック監督作品を2作で、『非情の罠』と昨今の騒ぎを予告したような『アイズ ワイド シャット』と流石なクオリティ。
初鑑賞ものはフランソワ・トリュフォー監督『トリュフォーの思春期』、タモさん出演の『喜劇役者たち 九八とゲイブル』、月の最後はジョン・スタージェス監督+チャールズ・ブロンソン主演の『さらばバルデス』とどれも素晴らしい。
そんな訳で、昨年の終わり頃から読んでいたセルバンテスの『ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ』(荻内勝之訳)読了で満を持しての映画版って事で、未完の『オーソン・ウェルズのドン・キホーテ』と『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』。原作の構成的自由度を踏襲しつつで、それでいてそれぞれの持ち味を活かせているって事で、どちらも監督名を冠したものに相応しい。そんな訳で、2月の顔は愛すべき凸凹コンビで決定。
観た映画: 2026年2月
映画本数: 13本
さらばバルデス
永遠に観てられるタイプの映画。ジョン・スタージェスは置いといて、制作陣がマカロニ風なものの、中身はなかなかアメリカン。自由は有刺鉄線で終わると対極にある野生の馬達の描写が実に良い。ものの、孤独に生きる混血児は時勢に飲み込まれ、追われていくっていう切ないやつ。白人の所業ベースなものの、チャールズ・ブロンソンとの交流で一皮剥ける少年と、リアルカミさんとの絡みとでバランス良く作られている。イタリア人兄弟が作るアメリカン・ニュー・シネマ気な劇伴も素晴らしい。少年役のヴィンセント・ヴァン・パタンに既視感があると思ったら、後にテニスプレーヤーになったやつか。
鑑賞日:2026/02/25 監督:ジョン・スタージェス
アイズ ワイド シャット
エプスタインリストで世界中が大騒ぎになってるので20年振りくらいに。見て見ぬふりをしろっていう、ド直球なあくまで建前のタイトルからしてセンス良い。当時ものすごいヒットの要因の一つがこの大物夫婦共演だったと思うけれども、改めて2026年現在に観るとそこよりも内容自体が先見の明というかなんというかスゴイな。陰謀論的な裏側の世界の惨状を見ろと、アレックスばりに直視せざるを得ない状況を作り出す流石なキューブリック。当時はどこかの上流階級の戯れくらいな感じくらいのものが、支配階級の腐れっぷりの根の深さというか根の広がりが具合がただ事じゃないってのが今更理解出来た具合。トム&ニコール夫婦起用にショスタコーヴィッチからの緊迫感異常な劇伴、シドニー・ポラック使いにポスターほかのデザインも含めて、総じて出来が良い。
鑑賞日:2026/02/23 監督:スタンリー・キューブリック
青春の殺人者
追悼ゴジ監督。ついに3本目がなかったな。市原悦子のあの下りをことある度によく観てるので近年に観てると思ったら、通しで観るのは15年振りくらいだった。まずはゴダイゴフェードイン、トラックに水ぶっかけられてからのバーンと出るタイトルは何度観ても痺れる。そんなかんなで、学生運動に間に合わなかった70年代のしらけ世代の行き場の無さってものが集約された青春の蹉跌感。成田闘争横目にって舞台設定ながら、矛先から何から何までエネルギーが空回りしてる具合で、それがまた演技にも繋がってる感じ。ちょっと後だけど、当時の社会問題を描く新藤兼人の『絞殺』とも共通するものがある。しかしまぁ、露出にスク水にと大盤振る舞いなこの頃の原田美枝子のとんでもない美少女っぷり。傑作。
鑑賞日:2026/02/21 監督:長谷川和彦
ナンニ・モレッティのエイプリル
フェリーニばりに撮り悩みながら、ウディ・アレン ばりに全方向にボヤきまくるナンニ・モレッティ。右派左派諸々のどこの陣営にも文句の尽きない混迷の政局模様、他所のニュースとウチんちのニュースの重みの違い、からの80-44の青天の霹靂でエンジン入ってベスパで走る感じが最高。時間がない事に気付く年頃のソレが描かれ過ぎてて胸にくるものがある
鑑賞日:2026/02/19 監督:ナンニ・モレッティ
白昼の死角
いきなり岸田森の火だるまで掴みは上々。『狼は生きろ、豚は死ね』って事で、ゴリゴリした頭脳型のアプレ犯罪に、角川春樹筆頭に豪華出演陣で楽しくはある。暑苦しい夏八木勲の顔面七変化に、暑苦しいいつもの身のこなしな千葉ちゃん中心にやたらと濃度は高い。やっぱりミュージシャンな宇崎竜童の70年代感と戦後感のミックスもなかなか。なんだけど、全体的にはダラっとした濡れ場ほか、ちょいテンポが悪い印象は否めない。んだけど、白塗りの怨念の面々にうなされる図とか、だんびらに消化器で立ち向かう夏八木勲とか面白いとこが山ほどあったので観て良かった良かった。
鑑賞日:2026/02/17 監督:村川透
ラ・カリファ
モリコーネの新旧の雰囲気のメロディ詰め合わせって具合で、それだけで保ってる感じ。負けん気の強い風なロミー・シュナイダーはタイトルの如しって感じだけども、なんなら経営者とデキつつ、そっちには加担しないくらいの強さが欲しかった。ブルジョワとプロレタリアを繋ぐのは人情だって事で、それが見事に打ち破られるイタリアっぽい映画。施し物を池に捨てまくる女たちに、ある意味いちばんイタリアを感じる。
鑑賞日:2026/02/15 監督:アルベルト・ベヴィラクア
テリー・ギリアムのドン・キホーテ
アラビア語原典を翻訳してる体のセルバンテス原作の入れ子構造がまず凄いんだけど、それに現代と映画撮影を盛り込んだオーソン・ウェルズの未完成品を経た上でこれである。撮影してるアダムがサンチョになり、ドン・キホーテになり、更にはテリー・ギリアム本人もっていう入れ子も極まれりって具合で大変な事になってる。それでいて、風車という巨人に進撃する序盤から公爵の城、木馬クラビレーニョの後半まで、かなり広い範囲で忠実に再現してて恐れ入る。欲を言えば、サンチョが毛布で弄ばれるとこと、羊の軍勢に立ち向かうシーンも見たかった。遍歴の騎士の物語にうつつをぬかすよりも現実世界に帰結した原作に対して、夢想の新たな世界が始まってしまう、まさしく『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』。おまけに原題的には八百比丘尼みたいな話でこれまた面白い。パラレルワールドみたいなショスタコーヴィッチのワルツ第2番みたいなやつと、ちょいロッシ・デ・パルマも良かった。
鑑賞日:2026/02/12 監督:テリー・ギリアム
非情の罠
久々。鏡越しやら試合のシーンなんかの撮影が良い。後年の視覚的シンメトリーはないんだど、こっちの部屋と向こうの部屋っていう構造的シンメトリーで良く出来てる。ボタンの掛け違えみたいな、スカーフからマネージャーのとこのトリガーから始まる一連のとこも実に上手い。で、不本意ながら殺しをやる羽目になるマネキン工場の一幕の映の強烈な事。
鑑賞日:2026/02/10 監督:スタンリー・キューブリック
ウディ・アレンのバナナ
エンタメ仕様の暗殺のOPから、エンタメ仕様の初夜EDまで極限まで不謹慎な悪ふざけ満載。どの時代のウディ・アレンも好きなんだけど、『泥棒野郎』から『スリーパー』くらいの時代のキレは結構なもの。若い頃の悪そうなスタローンも良い。マーヴィン・ハムリッシュの劇伴最高だな。
鑑賞日:2026/02/09 監督:ウディ・アレン
喜劇役者たち 九八とゲイブル
実に良いバディムービー。やもめのジョナサン味のあるキンキンこと芸利九八と、既に出来上がってるタモリこと苦楽芸振。劇中の内容同様に結構な具合で若きタモさんが序盤から掻っさらっている感じ。四カ国語麻雀ほか、お馴染みのネタやりたい放題。あと君が代のとこもヤバい。そんな笑いの部分と、相方が病人なら芸人やってる俺だって病人だっていう、キ印と健常者の線引きについてなかなか考えさせられる部分とで良く出来てる。赤塚不二夫との師弟共演に味のある財津一郎ほかも堪らん。まだまだ栄えてた頃の浅草の古巣が映ってて、これまた胸熱。
鑑賞日:2026/02/07 監督:瀬川昌治
オーソン・ウェルズのドン・キホーテ
アラビア語原典を翻訳してるという体のセルバンテスの原作の入れ子構造、からの現代の舞台や映画撮影の一幕を交えて自由にやってる感じでオーソン・ウェルズのものになってる具合。ドン・キホーテとサンチョもイメージ通りな感じ。風車という巨人のとこのエフェクティブなやつとか、色々と時代の先を行ってる感じ。羊軍団のとこも最高。完全版が作られなかったのが実に残念。
鑑賞日:2026/02/05 監督:オーソン・ウェルズ
トリュフォーの思春期
大人が判ってあげないとっていうやつ。トリュフォーの描く無垢さってのは、ちゃんと子供目線な感じでリアリティがある。どの子も良い子って訳じゃない色んなタイプの子供時代のあれやこれだけれども、子供に罪はないが大前提から始まってるので安心して観ていられる。ドドドっと駆けてくるOPから最後まで微笑ましい。良かった。
鑑賞日:2026/02/03 監督:フランソワ・トリュフォー
親愛なる日記
お初のナンニ・モレッティ。ローマを巡り、島を巡り、医者を巡る記録。ゆったりと映し出される映像に対して、日々の細かいのから大きな葛藤までなかなか大変。しょーもない事柄の数々と魅力的なあれやこれが同居してる感じで全く飽きない。パゾリーニの現場を訪れるのと、モリコーネのとこが良かった。街にも良し悪し、孤独と混雑も良し悪し、医学も良し悪しで考えさせられるものが多い。『僕はマイノリティだから』って感じがウディ・アレンっぽくて良い。で、レナード・コーエン、キース・ジャレットほか選曲が秀逸。しかし視覚的にうるさくない街並みはずっと見てられるな。
鑑賞日:2026/02/01 監督:ナンニ・モレッティ
category: 映画レビュー
tags: 2026年映画レビュー, ウディ・アレン, オーソン・ウェルズ, スタンリー・キューブリック, ナンニ・モレッティ, フランソワ・トリュフォー









