otom

ママと娼婦

Films: Jul.2025『ママと娼婦』ほか

Aug,01 2025 15:30

相変わらずなんやかやでバタバタしていたのでアルバム制作に新曲にと遅れに遅れている今日この頃。
映画はまずまず観てるって具合で、先月の『民子三部作』に続いて山田洋次監督作『霧の旗』に『男はつらいよ 寅次郎子守唄』。つまらない訳がないって感じ。
そしてようやくの宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』に、桑田佳祐企画、渡辺正憲監督作品『モーニング・ムーンは粗雑に』と2作ともクオリティが高い。
旧作外国映画はこれまた先月に続いてダニエル・シュミット監督『季節のはざまで』から、セドリック・クラピッシュ監督『猫が行方不明』、月の最後にシドニー・ポラック監督、ロバート・レッドフォード主演の『大いなる勇者』となかなか泣けるラインナップ。
新作系は『ノベンバー』のライナル・サルネ監督作品『エストニアの聖なるカンフーマスター』に『オオカミの家』のクリストーバル・レオン+ホアキン・コシーニャ監督によるアニメーション作品『ハイパーボリア人』とどちらも素晴らしい出来。
そんなかんなで7月の顔な訳だけれど、とにかくジャン・ユスターシュ監督と山本政志監督作品を次から次へと観ていた印象。
どれも底辺の謎のエナジーをビンビンに感じる山本政志監督『闇のカーニバル』、『ロビンソンの庭』、『てなもんやコネクション』。
そしてフランスのフランスしてる時代の若者の悶々としている様を見事に切り取ったジャン・ユスターシュ監督『わるい仲間』、『サンタクロースの眼は青い』、『ママと娼婦』、『ぼくの小さな恋人たち』。
どちらも甲乙つけ難いものの、ジャン・ユスターシュ監督作品『ママと娼婦』を7月の顔とする。

気付けばもう8月。
時間の流れが早すぎて困るので、1日72時間くらい欲しいと変わらずボヤいている。
夏休みはタルコフスキー祭りしたいとぼんやり考えている。

観た映画: 2025年7月
映画本数: 16本

大いなる勇者

緩めなのとは違う、筋金入りのアウトロー像って具合。文明に嫌気がさすとこから始まり、行けるとこまで山男度が濃くなるロバート・レッドフォード。ネットで良く見かけるgifミームの元ネタのとこの疑似家族を経て最後は熊帽子を被り獣状態でも、何やら穏やかな表情にも見えてくる。日本アルプスとは桁が違いで、距離感とかバグりまくるロッキー山脈の自然がとにかくデケーって感じの演出。そしてただでさえサバイバル+族に次ぐ族で過酷を極めるものの、山に抱かれる感覚の魅力ってやつを感じさせてくれる。劇伴も素晴らしい。傑作。

鑑賞日:2025/07/31 監督:シドニー・ポラック


てなもんやコネクション

凄まじい熱量。ほかの山本政志監督作品同様に底辺の人々の生命力みたいなもんに溢れてるんだけど、大阪〜国内に留まらず返還前のあのイメージ通りの香港で超カオス。どちらも現在は失われてしまった謎のエネルギーに満ちている。景気と時代柄か、このところすっかり見かけなくなった地上げ系映画全盛期って感じで、闘争具合がまた振り切ってる具合。オバはんと室田日出男の二人一役が意味不明過ぎて最高。本編の内容から字幕に至るまで自由にして大分先行ってる感じ。

鑑賞日:2025/07/29 監督:山本政志


ハイパーボリア人

チリの歴史と精神的闘争をアナログ尽くしでやったマトリックスみたいな話だな。前作に続けて圧倒的な人力感に加えて生身の使い方の按配がなかなか。引き合いに出されそうなシュバンクマイエルとどちらも筋は通ってると思うものの、こっちはよりグリッチっぽいと云うかノイズ感が多く、これはこれで現代的で結構好き。貧乏家のお母さんが作った風のPCと穴の声にちょっとツボる。

鑑賞日:2025/07/27 監督:クリストーバル・レオン, ホアキン・コシーニャ


エストニアの聖なるカンフーマスター

オジー追悼的な意味ではベストなタイミング。15歳くらいの頃に死ぬほど聴いてた"The Wizard"のイントロドンで掴みは上々。色見は大分異なるものの、凝りまくった映像は前作に遜色ないって具合。ドゥームメタル的俗世+エストニア正教+カンフーで組み合わせもなかなかなものの、その辺を期待すると後半はやや失速な印象。内なる戦い的視点で観ると、誘惑てんこ盛りに抗いまくった末の結末で結構ジーンと来るものがある。

鑑賞日:2025/07/26 監督:ライナル・サルネ


ぼくの小さな恋人たち

肉欲に目覚めまくってるのに解消するテクを知らな過ぎな童貞具合。遠い昔のあの感覚を見せつけられている様で生々しくて小っ恥ずかしいくて死にそうになる。都会へ行って覚えた事はイチャつく事と煙草を吸う事って云う按配で、結婚するって決めてからって云う絶対的お預けフレーズを間に受ける奥手っぷりと青さに青春を見る。出ているガールズがみんな自然体で可愛い、やっぱこうあるべきだよな。ポインッ→拒絶→森へダッシュでまだまだ子供ENDでありながら、故にチャリ屋や童貞に止まらない未来の可能性は無限大に感じる。傑作。

鑑賞日:2025/07/24 監督:ジャン・ユスターシュ


モーニング・ムーンは粗雑に

憧れのナウいハマっ子像。冒頭のメッセージからテロップにデ・パルマばりの分割と当時にしてみたら結構尖ってたんじゃないか。出会ってほぼ1日で繰り広げられる挫折(故障)からの再生の男と女+車を軸にした筋で結構青春してる。人生は思い描く様には進まない、んだけどイレギュラーの末の初夜明けのモーニング・ムーンのあの感じと合わせて上手い事表現されてる。そこへ辿り着くまでのカーネル・サンダースの下りとか結構胸キュンだわな。デビュー同年の『無力の王』同様にきっちり脱ぎつつ、お嬢なオーラを失わない高樹澪の演技も素晴らしい。渡瀬恒彦の大人風をふかしつつ、説教臭い偽の美学等々で大人になりきれてない感も良かった。胡散臭い岸田森はもっと観たかった。で、肝心の企画・桑田佳祐とサザンで特に思い入れはないけど、日本人ばなれした歌唱力にシティ・ポップ的クオリティの演奏力は改めて凄いと思ってしまった。

鑑賞日:2025/07/21 監督:渡辺正憲


猫が行方不明

猫探しのメインを忘れそうなくらいに男探しの方向って感じだけど、この段階カワイイ90年代の女子感がたまらんわー。バスチーユの再開発の当時の社会問題を盛り込みつつ、時代と世代の両方から新旧を絡ませる。結果全員良い人ばかりでほっこりする。人も含めてパリがイメージするパリっぽい最後の時代だったのかもって感じがする。灯台下暗しなニャンコも見つかり、何やら人生が上向きになってきた→ポーティスヘッドENDでやられる。

鑑賞日:2025/07/20 監督:セドリック・クラピッシュ


ママと娼婦

グダグダしてる風で内容量がスゴイ。『市井の人々とは違い僕は殻に籠る(キリッ)』と5月革命以後もヒモ的な闘争を続けるティーポットの注ぎ口ことレオー。愛に飢えた女と執着する女に挟まれてなかなかに奔放かつ羨やま。長尺でありながらも緊迫感があって結構手に汗握る展開で、各々の心模様を表す様な暗転の行間も効果的。愛に溢れ泣き上戸と化した女の娼婦理論にギュっと心を締めつけられ、ベッドに横たわるアフリカ型体型ことベルナデット・ラフォン(断然こっちだろ)がエディット・ピアフの曲を聴きながら顔を覆うシーンでキューンとなる。そしてハマるべくしてハマるレオーENDで大傑作ですな。LPで流すイケてる劇伴の数々に『亜流は本家を上回る』ほか数多の名言も盛り沢山でその辺りも素晴らしい。

鑑賞日:2025/07/17 監督:ジャン・ユスターシュ


男はつらいよ 寅次郎子守唄

久々。始めからそこに居たみたいな三代目おいちゃん下條正巳デビューのシリーズ14作。博の労災のやつから、子守騒動に恋愛指南で自爆と実に上手い事流れる。飴振って痔固まる(テヘペロ)とかます十朱幸代も悪くないんだけど、『お客さんはアンタの綺麗な心を見に来ているんだよ』と寅次郎の千里眼と云うか、コブ付きの面倒見る春川ますみの良い女っぷりの方が効いてる感じ。子供没収されるおばちゃんが結構泣ける。序盤に何かと引っ掻き回す御前様も良かった。

鑑賞日:2025/07/14 監督:山田洋次


ロビンソンの庭

80年代のイケイケな時代に敢えてって事で、文化的なものも然り先取りしてる感じな制作サイドの面々。生命力って部分ではロビンソン繋がりで共通しているものの、こっちのキャベツばばあのソレは文明圏から見てるとほぼキ印状態で圧倒される。全てを覆い尽くそうとする自然に対して抗い続けても、結局最後はああなるのが必然ってのを再認識させられる。数えきれないほど印象的で美しい撮影はジャームッシュ作品にも参加したトム・ディチロとの事。タイトルもお洒落。予想外の若いナイルさん登場でムルギーランチが無性に食いたくなる飯テロ。とKFC食うガキのまた別の種類の生命力。傑作。

鑑賞日:2025/07/12 監督:山本政志


サンタクロースの眼は青い

モテなくて悶々としてる男子校生みたいなレオー。憧れのダッフルコートへの道のりも、ゲットしてみればケチはつけられるわでなんだか冴えない大晦日って事で、その昔高校生の頃に野郎だらけで新宿富士そばで年越し蕎麦食べた微妙感が甦りまくってザワザワくる。売春宿!へ赴く残念無念な青春感だけど、本人達はそこそこ楽しそうなのでまぁ良いんだろう。サンタコスで役得しながらダッフルコートを夢見てた辺りがこの映画的には絶頂って感じで、現実世界も目的へ向かってる時が一番充実してたりするもんなー。

鑑賞日:2025/07/10 監督:ジャン・ユスターシュ


君たちはどう生きるか

宮崎駿の締め括りみたいな具合で、過去作シーンを散りばめた遺作感が半端ない。太平洋戦争時のガワでありながら、現在形のジブリ的お家騒動って感じで、後継者を望みつつも芸術ってもんはそう云う事ではないって云う老監督の胸中が伺える。宮崎駿作品と銘打ってるだけにアニメーションの力の入れ具合は流石なもんだけども、エンタメと私小説の絶妙なバランスが保たれた過去作とは異なり、全体的なキレは失われている。高畑遺作と比べると特にそう感じる訳だけど、考えてみたら得意としてる分野のこの関係性は昔から変わってない気もする。そんなかんなでジブリにおける宮崎駿世界は崩壊するけど、君たちはツィートの糞にまみれながら頑張って生きろと言われている様なアフター宮崎駿のアニメーション業界。『風立ちぬ』で終わらせてた方がって気もしなくはないけど、敢えて晩節汚してる風なのもらしいっちゃらしくはある。時折、露骨にアルヴォ・ペルトな久石劇伴も精彩を欠いていていささか残念。

鑑賞日:2025/07/09 監督:宮崎駿


季節のはざまで

過去とは互いに干渉しないと言いつつ、存分に回想して接触せんばかりに鮮やかに蘇る記憶。子供目線で捉えた大人の世界のあれやこれを大人になって巡るってノスタルジーなやつで、'80年代後半辺りの映画の雰囲気が強くて堪らん。エットレ・スコーラの『ラ・ファミリア』や『ニュー・シネマ・パラダイス』的な前提としての二度と元に戻らない時ってやつに心がキューっとなりっぱなしになる。で、目当てのミッキーマウス、目を閉じて貝殻を耳に当てればスイス山中の海の見える部屋でお宝感が凄い。南米人しか気持ち良くないやつは見てるだけで痛い。

鑑賞日:2025/07/06 監督:ダニエル・シュミット


闇のカーニバル

暗黒都市な新宿100%って感じ。大小様々な悪徳の坩堝って具合でありながら、負の中に何やら生命力みたいなモンを感じる。のっけから最後まで尖りまくった描写と音使いで、ムンムンと臭ってくる感じ。牛乳配達員にハッテン場の事件と印象深いシーンは多いんだけど、火葬場からバルサン供養の繋ぎとか痺れるものがある。で、青い朝と灰が散々汚いもの見せられた後で余計に美しい。

鑑賞日:2025/07/04 監督:山本政志


わるい仲間

駄目な青春だな。出てくる人物がみんな冴えないんだけど、目が離せない。ひたすらの口説きモード→急にスイッチ切り替わってからの展開が素晴らしい。で、悪事を働きながら良い奴ぶろうとするどっちつかずの駄目っぷりで若さを浪費しまくっていて泣ける。あと小林正樹『切腹』のチョイスがニクい。

鑑賞日:2025/07/02 監督:ジャン・ユスターシュ


霧の旗

この恨み晴らさでおくべきかって事で、魔太郎より怖い倍賞千恵子に当たってしまった滝沢修。山さんがやらかした『罪と罰』的老婆殺しの話かと思いきや、無碍に扱われた貧乏人の復讐で次々とミラクルな展開で面白い。三顧の礼+土下座で凍てついた心が解けたと思いきや、捨て身の処女進呈までする女の怖さたるやゾーっとする。汽車フェチな山田洋次のOPから引き込まれる今作な訳だけれど、物理現象としての霧描写に何考えてるんだから分からない人の心の霧とで非常に上手い。霧の流れには音があるってキリッと言いながら、読みきれなかった男の残念無念。更に残念なのが餌食にされた新珠三千代で後味極悪ながら実に面白い作品だった。イタリア映画みたいな林光の劇伴も素晴らしい。

鑑賞日:2025/07/01 監督:山田洋次