
Films: Aug.2025『ドゥーム・ジェネレーション』ほか
Sep,03 2025 12:00
今年の夏季休暇は何事もなくって感じかと思いきや、そうでもなかった今日この頃。
夏休み中もほどほどに映画を観ていた筈なんだけれども、八千草薫見たさにひたすら『夕陽ヵ丘三号館』('71)を観てた気がする。
あと、数ヶ月に渡るメルヴィルの『白鯨』も夏休み終わってからのようやく読了で、なんとなく遅れて海気分。
そんなかんなな8月は、ジュゼッペ・トルナトーレ監督作品『みんな元気』よりスタート、久々の『マレーナ』、『海の上のピアニスト』と続けてなんとなくイタリアモードな夏。
夏休みにはこちらも久々なタルコフスキー2本立てで『アンドレイ・ルブリョフ』、『サクリファイス』をチョイス。更にはラース・フォン・トリアー監督の『ドッグヴィル』、『マンダレイ』を20年振りくらいで、なかなかに重めなラインナップ。
そしてようやく何度目かのZZが終わったので『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』と『ドラえもん のび太の大魔境』でこちらもなかなか夏休みっぽい。
そのほか再鑑賞ものはゴダール『はなればなれに』、ブライアン・デ・パルマ監督『カジュアリティーズ』、今月も続いて山田洋次監督『幸福の黄色いハンカチ』といずれも名作。
初鑑賞ものはまだまだ観てない作品の多い押井守『Talking Head』にシャンタル・アケルマンの方と間違えたもののかなり良かったアンリ=ジョルジュ・クルーゾー『囚われの女』とクオリティが高い。
そんな訳で、Slowdiveほか好きなのが流れまくるグレッグ・アラキ『ドゥーム・ジェネレーション』が最高に面白かったので8月の顔とする。
連日の暑さのせいか、衰えてきたせいか、無理が効かなくなっているので作業のペース配分をきちんとコントロールせねばと思う今日この頃。
のんびりやるをテーマにしたい。
観た映画: 2025年8月
映画本数: 17本
ドゥーム・ジェネレーション
666で不吉な感じしかしない90年代のUSA。あらゆる方向に荒れ放題って感じなんだけど、現在からみると逆に活気がある感じもする。こんな中で生きてるオルタナ時代真っ只中の若者って事で、おかっぱボブ+真っ赤な口紅+マーチンって云う当時も今もどストライクなファッションからサントラ(イギリスのシューゲイザーばっかりだけど)まで大好物が揃ってる。スロウダイヴをここまでフィーチャーした映画もこれが初めてかも。ラストの"Blue Skied An' Clear"とか絶妙よね。で、『ミスター・グッドバーを探して』のストロボシーンみたいな痛いアレがホント痛くてたまらん。台詞の多くが気の効いたを通り越して詩的な域に達してる感じが、ハル・ハートリーを思い出させる。なんにせよ傑作で良いロードムービー。
鑑賞日:2025/08/30 監督:グレッグ・アラキ
ザ・レイプ
この時代の敵なしな田中裕子が良く伝わってくる。細かいところから大きなとこまで演技が上手な上に脱ぎまくるって云う、改めて凄い役者だなとしみじみ思う。そんな主演の魅力とは裏腹に当時の男社会と理解の無さが最大限に描写されていて、あっちこっちのデリカシーの無さで同性ながら流石に心苦しいものがある。犯人はもとより、初動で処置を怠った風間杜夫に、生々しい弁護士に、不倫男な津川雅弘にとまぁ全員クズだったが故に、田中裕子の光が増す感じ。総体的には良くも悪くも東陽一作品って感じのニオイがする。脚本に70年代後半の出崎統作品によく参加してる篠崎好で、面白いんだけどなんとなく締まらない感じも納得。
鑑賞日:2025/08/29 監督:東陽一
海の上のピアニスト
公開時以来で完全版を観る。前年のタイタニックのソレとはなんかこう何もかもが違う感じで、極上の寓話ながら生きる道を選択するって事の重みと説得力に満ちている。陸に上がって地に足が付かない人生に対して、海上にいながらにして『終わりの見える』無限の世界を爆破されてもなお選ぶって云う引きこもりの鑑みたいな1900。こう云うのを宿命って表現するんだろうな。酸いも甘いも分かる様になってしまった大人の目線からは余計にくるものがある。モリコーネ劇伴に全般に渡るトルナトーレの演出が素晴らしいのは勿論の事、額縁の様に見立てれられた船窓とピアノのシーンの美しさったらない。傑作。
鑑賞日:2025/08/27 監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
カジュアリティーズ
久々。集団における同調圧力と事なかれ主義の典型的なやつ。小学生の頃に観た時と変わらずにショッキングな内容なのは大前提なんだけど、大人の世界の汚れた保身も理解できてしまう自分が嫌になる。で、トラウマ級なショーン・ペンにマイケル・J・フォックスって感じの演技、脇を固める役者もそれぞれ良い感じ。デ・パルマらしい分割が無くてもスリリングでとても良く出来てるんだけど、線路の相打ち不可避っぽいやつは別の意味でヒヤヒヤする。尺八みたいな音を使ってる期のモリコーネ劇伴もまた素晴らしい。
鑑賞日:2025/08/25 監督:ブライアン・デ・パルマ
豹/ジャガー
ビジネスライクな関係から最後はきっちりアミーゴしてて最高。ストーリー的に『ガンマン大連合』のもとと言われるとそんな気もする。拘りのある殺し描写とスタイリッシュなカットの連続でまぁ飽きない。擦れるところであればどこでもマッチを擦るフランコ・ネロで、そのバリエーションだけでも楽しい。『夕陽のガンマン 地獄の決闘』の三つ巴みたいなシーンもたまらん。軽薄と国への情熱が同居するトニー・ムサンテも良い。で、この時代のモリコーネ劇伴はどれも似てるものの、やっぱりどれも特徴的なフレーズを持ってるってのがホント凄い。
鑑賞日:2025/08/24 監督:セルジオ・コルブッチ
幸福の黄色いハンカチ
20年振りくらい。五臓六腑に沁みるビールからのラーメンとカツ丼セットのとこが見たくて。民子三部作と地続きって感じ。ジャケでネタバレしてる上に何度も観てるのになんでこんなに泣けるのか。草野球のキャッチャーことミットもない武田鉄矢と桃井かおりと健さんって云う変なパーティのロードムービーな訳だけども、細かいとこまで笑いと泣きのツボを押さえた作りでほんと良く出来てる。テンプレ的健さん像ではなく、カッコいい風でありながら、ここぞでヘタレるって云う人間臭さまで演じ切る健さんの上手さは勿論なんだけど、映画全体でカッコ悪いのオンパレードでありながら、劇中の若いふたりと鑑賞者に愛ってのはこうなんだときっちり納得させる山田洋次で素晴らしい。倍賞千恵子の泣き演技と渥美清のニラレバの下り、タコ社長のイラっとくる旅館の親父も最高。
鑑賞日:2025/08/21 監督:山田洋次
機動戦士ガンダム 逆襲のシャア
今年の初めから1stからジークアクス挟んでZZが終わったので久々に。ガイナックス仕事のクオリティが半端ないなー。ロリコン+マザコンを拗らせ、なんだかんだで人に期待するシャアの人間臭さ=富野節って感じで良い。最早ゼクノヴァにしか見えないサイコフレームのラストで胸熱。シャアの女性遍歴の中でもcv: 榊原良子の色気ムンムンなナナイが一番イイ女だわな。しかしBEYOND THE TIMEアガる。
鑑賞日:2025/08/19 監督:富野由悠季
マンダレイ
先日の『ドッグヴィル』に続いて久々。微妙にコケていた風な今作なものの、良く出来てるって印象は公開当時と変わらず。理想主義者の鼻っ柱を丁寧に丁寧に一つずつへし折って行くラース・フォン・トリアーの性格の悪さ、もとい正しさは健在。均衡を保っているところへ偽善の介入で崩壊する例ってのは今の世界にも溢れてるところで、我が国的な話だとヤクザのそれみたいな。今作のまさに『怒りの葡萄』時代においては外の自由と内の抑圧でどちらが幸福かって云う話でもある。宗教以降の巧妙な人類の搾取の図で、支配者の正体が朧気でゆるやかに殺してくる現代の前のフェーズって感じ。人や理想に従う訳ではなく本質的に人間は力に頭をたれる訳で、権力を失ったものへの民衆の逆襲は常に手ぐすね引いて待ってるって筋書きが映画の作法にかなっていて、そこら辺の作り込みも流石。3作目『ワシントン』はいつやるんだかって感じだけども、まさかの『キングダム』もあったから程々に期待してる。
鑑賞日:2025/08/19 監督:ラース・フォン・トリアー
サクリファイス
久々。変わらずの湿り気と4元素。全体的な日本、または黒澤贔屓な具合。自己犠牲からの無言の行って云う受難で、とどのつまり世界にはHARAKIRIの精神が足りないから平和にならないのだと叫んでいる様。謙虚さの美徳が失われ、何となく大陸に近づいている我が国の現在を考えると複雑な胸中ではある。不可能は可能にって事で、枯木に花を咲かせましょうエンドから『僕の村は戦場だった』の冒頭に繋がるのが熱い。傑作。
鑑賞日:2025/08/17 監督:アンドレイ・タルコフスキー
アンドレイ・ルブリョフ
久々。少年親方にあてられての沈黙の受難からの解放のカタルシスに尽きる。宿命を受け入れ、信仰に立ち返り、魂を注いでこそ真の芸術。15世紀の内外大小物騒なロシアにおいて、更に云えば当時のソ連の状態であってさえ、作品を作る事の障害にはならんって云う映画の方のアンドレイの熱いものも伝わってくる。タルコフスキーならではの水を含む4大元素の描写が素晴らしい。傑作。
鑑賞日:2025/08/16 監督:アンドレイ・タルコフスキー
はなればなれに
久々。過剰なくらいに攻めてるな。しょーもない話を映画と云う媒体のあらゆる技術を駆使して別なもの昇華させてるって云う、無理矢理な姿勢でヌーヴェルヴァーグって感じ。撃たれ方やら電車での一幕等々、見せ方と状況ひとつで意味が変わるあれやこれで現実世界も然りな具合。からの人類補完計画みたいな願望の裏にあるこの時代の若者の挫折感がヒシヒシと伝わってくる。それでいてルーブル爆走みたいなほとばしるモンも同時に存在するってのが青春って云う説得力。あのダンスシーンは方々に影響を与えてそうだけど、ハル・ハートリーの『シンプルメン』が一番雰囲気を引き継いでる気がする。何はともあれ、Pコート+チェックのスカート+黒タイツのいでたちのアンナ・カリーナが最高だわな。ミシェル・ルグラン劇伴もとても良い。
鑑賞日:2025/08/14 監督:ジャン=リュック・ゴダール
ドラえもん のび太の大魔境
夏休み感出したかったけど、もとは春休み映画だった。実に40年振りくらいで、原作の長編シリーズでもお気に入り上位だった。劇場版になるといい奴になるジャイアンの代表的な作品でもある。道具縛りをしつつも、なんだかんだで四次元ポケット前提のご都合主義的な一本道の展開ながら、きっちりドラマになっていて良く出来てる。子供の頃も結構沁みていた挿入歌は武田鉄矢作詞で納得。TENETを数十年先取りするラストの伏線回収は堪らん。バウワンコ巨像の声にゴジラが混じってるのも、東宝作品っぽくてイイ。
鑑賞日:2025/08/13 監督:西牧秀夫
ドッグヴィル
15年振りくらい。更に遡って公開当時は尖ってる絶頂みたいなラース・フォン・トリアーで、予告からして度肝を抜かれた記憶。壁で見えない筈の人々全員に同時進行の演技を求める鬼畜の所業と、ジェームズ・カーンとの傲慢問答のとこで安定のアンチクライストっぷりを披露しつつもこの街みたいなのを広めちゃいけないと人類への優しさを滲ませるって云うなんだこの人感。課題が多過ぎなヤング・アメリカンと現代文明で、それらの憤りを可能な限りこれでもかと目立つ形で表現して、当時も結構絶賛批判が入り乱れていたけれど、問答無用で普通に傑作。盲目のベン・ギャザラの夕陽の美しいところ→控えめなスケベ具合が泣ける。
鑑賞日:2025/08/11 監督:ラース・フォン・トリアー
マレーナ
久々。トリュフォーの『あこがれ』でサドルの匂いを嗅ぐやつをもっと生々しくした感じ。性への目覚めからの区切りをイタリア史と共に描く。対象となるのは最強な頃のモニカ・ベルッチで、こんなのが近所を闊歩していたら猿化するのも無理はない。歴史に翻弄される凡庸な街にあって、美しい事は罪って云う不幸でしかない現象で超気の毒で仕方ない。失われた愛を埋めるマレーナと、坊やだからさって事で埋められる事のない愛が側から見ていて切ない。彼女を守るのを神頼みにし、長ズボンを履き、初体験を済ませ、タバコを覚えた坊やは『お幸せに』と声を掛けた瞬間にやっと大人になった。ジュゼッペ・トルナトーレのどこまでも明るく広い空の絵面と演出、モリコーネの泣ける劇伴とで云う事なしの傑作。
鑑賞日:2025/08/08 監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
囚われの女
シャンタル・アケルマンの方を観たかったのだが、こっちが届いた(そもそも原題が違う)。どっちにしろ観たかったから良いんだけど。で、内容はと云うと、『失われた時を求めて』の同章とは全然違う(捉えるつもりが囚われてるってところは共通してる)話ながらこれはこれで面白い。卑猥なオブジェの数々からポップアートにファッションにと強い時代のそれらだけでも観ていて楽しい。そして言葉責めの台詞選びに、接写からアホみたいな海のカットまで全てに力が入っていて素晴らしいんだけど、ラストのどサイケ映像の怒涛っぷりの末に全員救われてないってのが更にスゴイ。
鑑賞日:2025/08/06 監督:アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
Talking Head
実写でもやりたい放題具合は遜色ないって感じで、後年の作品のあれやこれが既に完成してる押井節。2025年の現在から見てみると、映画のうんちくに次ぐうんちくと愛に溢れたドス黒いSHIROBAKO、または天井桟敷的な雰囲気で結構堪らんもんがある。動く千葉繁と川井憲次劇伴、だるまさんが転んだ...ネタで完全なる押井作品で、この頃の人たちは懐が深いと云うか、厚みがあるなと改めて思ってしまった。傑作。
鑑賞日:2025/08/04 監督:押井守
みんな元気
年老いた親に対してだからこその見栄と真実を辿る旅って事で、瓶底みたいな眼鏡のマルチェロ・マストロヤンニの盲目なのかデカい目で良く見てるのかって云うキャラ設定からして素晴らしい。時代と国が変わったイタリア版『東京物語』な内容な訳だけども、視覚効果の力の入れ具合が本家とは別のベクトルでこっちはこっちで実に良く出来ている。前作の郷愁に続いての現実を目の当たりにする今作って感じで、どちらにせよクオリティは高い。後ろ姿でオーラビンビンなマエストロのカメオ出演も痺れる。
鑑賞日:2025/08/02 監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
category: 映画レビュー
tags: 2025年映画レビュー, アンドレイ・タルコフスキー, アンリ=ジョルジュ・クルーゾー, グレッグ・アラキ, ジャン=リュック・ゴダール, ジュゼッペ・トルナトーレ, ブライアン・デ・パルマ, ラース・フォン・トリアー, 富野由悠季, 山田洋次, 押井守









