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フルスタリョフ、車を!

Films: Feb.2019『フルスタリョフ、車を!』ほか

Mar,03 2019 13:00

何故だか久しぶりに『警視-K』を再鑑賞中で映画も減り気味な2月。
そんな中で、先月からの続きはアレクセイ・ゲルマンものをちょこちょこと。
フルスタリョフ、車を!』は期待通りの素晴らしさだった。
ラスボス級の『神々のたそがれ』がまだ残っているけれども、現在ストルガツキー兄弟の原作で『神様はつらい』を読んでいるので映画はそれから。
ありがとう、トニ・エルドマン』が初鑑賞、ドイツ出身の女流監督マーレン・アーデ(同い年...)は良い発見だった。
アッバス・キアロスタミものが再発ラッシュの様で、来月はイランな日々が続く予感。

観た映画: 2019年2月
映画本数: 16本

サルタナがやって来る〜虐殺の一匹狼〜

どの時代も情報を支配できる奴が勝つんだね。にしても、圧倒的なアルフィーとオルガン使いじゃないか。黒澤的要素を始めとして、色んなマカロニ・ウェスタンのいいとこ取り感満載(どれも結構そうか)で飽きない。ほとんどモリコーネなブルーノ・ニコライの劇伴も無条件でテンション上がってくる感じ。

鑑賞日:2019/02/28 監督:ジュリアーノ・カルニメーオ


恋愛社会学のススメ

人と人とのフィーリングが合わないってのは...大災害だっぴー。フィットしてる風だったり、一人だけフィットしてたり、フィットしそうになったりと心の揺れ動きの表現が実に繊細な事。張りつめてからのキャット・スティーヴンスが沁みる。

鑑賞日:2019/02/27 監督:マーレン・アーデ


桜桃の味

宗教独裁国家の教えのソレとは異なる、人間にとって普遍的とも云える説教が堪能できる。一つ食べたら、二つ三つと欲しくなるんだな。それを欲とは言うなかれ。まるで人生の如くな分岐点ありまくりの荒地でロケーションなんてあまりに出来過ぎな傑作。困った時には自力で視点を変えられるだけの機知をあらかじめ持っておきたいもんだなぁ。

鑑賞日:2019/02/23 監督:アッバス・キアロスタミ


ラストコンサート

天使降臨レベルのキラキラしたセブンティーンとゴニョゴニョなんて、オッサンの妄想過ぎる...けどイイ!! 全体的に金ローかノエビアのCM的雰囲気かつベタベタなんだけども大変良い。去年くらいからマイブームのチプリアーニの代表作って事で、リチャード・クレイダーマンっぽいのから逆にベルセバっぽいポップでウィスパーなやつまでクオリティが高い。飛ばし気味なほわっとした色味も岡田茉莉子がフランスにいる吉田喜重のやつみたいで嫌いじゃない、と云うか好き。途中試しに吹き替えしたら紅緒の声で萌えた。

鑑賞日:2019/02/21 監督:ルイジ・コッツィ


ジョン・レノンの僕の戦争

VHSを引っ張り出してきたのを鑑賞。イギリス軍と砂漠でアラビアのロレンスと云うベタベタなネタを筆頭にいかにもなイギリス的ブラック・コメディ。かなり滑りまくってるところとグッとくるところがせめぎ合う感じ。アーミーメンの使い方はなかなか。ジョンは居ても居なくてもって良いとは思うよ。

鑑賞日:2019/02/19 監督:リチャード・レスター


戦場からの脱出

意地でも小人出してくる辺りにヘルツォークを感じる。実話ベースって事でランボー的バトルはなく、どこまでもストイックかつ淡々とサバイバル。マシニストのついでにやった感があるものの、この人の痩せ演技は圧巻。思えば太陽の帝国の頃から不遇な追い詰められ系の役柄が多い気もするものの、キッチリこなしている印象。常にマンソン風なジェレミー・デイビスは常に人の足を引っ張っているイメージ。

鑑賞日:2019/02/18 監督:ヴェルナー・ヘルツォーク


ありがとう、トニ・エルドマン

ホイットニー爆唱に毛むくじゃらに脱げない!にどんどん突いてくる感じ。なんとなく違和感を感じて娘の人生を不器用かつ無様に心配する父。親だって完璧じゃないから人生の意味を聞かれたって急には分からんと。過程の重要さに気付き、それを伝達し、ちゃんと継承された静寂からの『Plainsong』の俺得で絶妙な選曲に鳥肌。心も体も映画まで解放されている感じ。当たり前なんだけど、親も子も一緒に成長していくもんなんだね。

鑑賞日:2019/02/17 監督:マーレン・アーデ


レベッカ

昨年末くらいから超絶可愛いダフニ・デュ・モーリエが何故か我が家でブームなので、『ブライズヘッドふたたび』のロケーションを併せてイメージしながら、いざ。まずは全員キャラ設定が活かされてない感じ。骸骨どころか、ポンヨリ可愛いデンヴァース夫人は嫌いじゃないけど。映画的には詰め込んでいかなきゃイカンので、あっちこっちいじるのは仕方ないとしてもエンディングはちょっと酷い。レベッカへの劣等感や立場の不安も何か軽く、舞踏会の屈辱の一夜もあやふやにクライマックスへ突入する。見えないレベッカの存在感はまずまずとしても、もうひとつの主役とも云えるのマンダレイの扱いがあまりにショボくて切ない。文体だけで伝わってくるデュ・モーリエの豊かな情景と色彩が、モノクロとセットで完全に無きものとされているのは残念この上ない。この話をキッチリ再現するには尺が足りな過ぎるってのが正直なところ。あと3時間くらいは欲しい。巨匠&アカデミー作品に対してなんだけど。カメオ出演はちょっと難易度高い。

鑑賞日:2019/02/15 監督:アルフレッド・ヒッチコック


女相続人

みんな欠落気味。平和そうに見えてドロドロしながら展開早めなワシントン・スクエア。当人同士楽しければ...良くないと、ヘンリー・ジェイムズの時代的には当たり前だったんだろう。もはやメラニー的な聖なるオーラが強いオリヴィア嬢。そんな彼女が萌えから怨念系へと魅せる。女性を怒らせたくないねぇ。うむ、裏切りはイカンよ。Can't Help Falling In Love〜♪なテーマがプレスリーをパクってると思いきや、こっちが原曲との事。

鑑賞日:2019/02/13 監督:ウィリアム・ワイラー


ステップフォード・ワイフ

ブブブブ...すごいバグってる。これは良いエラー映画。'50年代的家庭での男の権威よ再びって事で、ディズニー脳な男連中があまりに馬鹿過ぎる。郊外問わず、似たようなタイプが同じ街に集って同じ様な生活スタイルってのは、タワマン然り、何も'70年代アメリカに限った事じゃないだけに余計怖い。貧乳から巨乳へバージョンアップ(ダウン?)するキャサリン・ロスをみんな好きと思うなヨ。ウディ・アレンじゃないけど、「僕を会員にするクラブには入りたくない」とキッパリきっちり言えない男に問題があると思われ...気をつけよう。

鑑賞日:2019/02/12 監督:ブライアン・フォーブス


フルスタリョフ、車を!

この混沌として理不尽な感じが当時のソ連と理解しておく。カラマーゾフの兄弟(ドミートリィも出てる!)でも引用されるゴーゴリのトロイカの下りで、「諸国が道を開け〜」で爆走するロシアどころか、今より悪くなる事はないと切り捨てるアレクセイ・ゲルマン。ひとつの混乱が幕を閉じ、それでも線路は続いて行くんだね。数え切れない奇行と数え切れないツバ吐き。凄まじい。

鑑賞日:2019/02/11 監督:アレクセイ・ゲルマン


聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア

アウリスのイピゲネイアに精通(敢えてこの言葉を選ぶ)していないので詳しくは良く分からないけれども、なんかかこうREDRUMな感じ。人間の奥底に隠されたいやらしい優先順位を暴くメタファーなのか、体を開いてわざわざ心臓とか映さなくてもねぇ。痛いの嫌いマンとしてはキュ〜っとなりっぱなし。カープレイにガツガツとフロス、夫を相手にほとんど買収の手段としての女の武器と、とんでもない汚れ役を淡々と演じるニコール・キッドマンに役者魂を感じた。怖いねェ、人間。

鑑賞日:2019/02/09 監督:ヨルゴス・ランティモス


輪舞

オフュルス版は観てない。「1914年は何にも起きないなぁ」と、これがパリの人々が感じるのであろう過酷な時代の前における黄金時代な雰囲気が満載。日本で云うなら大正時代みたいな。下品に乱れて何が悪いとばかりな快楽主義。男女の数だけ発生する、ほとんど無限ループなロンド。お耽美なセットまで曲線なイメージ。エロゲ風メイドのアンナ・カリーナもなんか馬鹿っぽいカトリーヌ・スパークも良いけれど、ブサかわ犬に混ざるフランシーヌ・ベルジェが一番タイプ。

鑑賞日:2019/02/07 監督:ロジェ・ヴァディム


わが友イワン・ラプシン

至るところでヨシフだらけな大粛正前のあの日々。音楽や笑いがあり、反革命連中も含めて感情が爆発していつつも、ほのぼのしている感じ。そんなロシアな歴史と'80年代世界を複雑に眺めるアレクセイ・ゲルマン。理想国家建設の夢の果てはモノクロより色褪せて見えてしまった。

鑑賞日:2019/02/04 監督:アレクセイ・ゲルマン


できごと

一部のけたたましい効果音以外はそれこそ絵に描いたような平穏なイギリス的風景が展開される。そんな風景とは裏腹に中年男ダーク・ボガードの欲望と劣等感との戦いが彼の胸中で大変な事になっている。一般的には満ち足りている人生の筈が不義の対象及び奔放にできる周りに対してのうらやまけしからん具合が平静な表情からダバダバに漏れまくる。悶々とする状況から展開を支配する側に変わるアクシデント(意味深)とそれがもたらす文字通り大放出と虚無感。フラッシュ・バック、フォワードやちょっとした眼くばせなんかがとっても効果的。

鑑賞日:2019/02/03 監督:ジョセフ・ロージー


勇者の赤いバッヂ

勇者の赤いバッヂを求める無知。経験を積むほど見えてくる景色は変わってくるもんなんだってのを見事に映像で表現している様。硝煙と木漏れ日と北部と南部の旗の交差とモノクロながらハッとする美しいシーンに溢れている。人類の多くがそうである様に、遠くて実体があやふやなものだからこそ憎みがちなんだな。気をつけよう。乾パンと肉の連呼で若干飯テロ気味。良かった。

鑑賞日:2019/02/02 監督:ジョン・ヒューストン