Films: May.2012『HOUSE』ほか
Jun,06 2012 00:40
相変わらずの雑食。ややアメリカン·ニュー·シネマな気分でもある。
しかし、やはり先月は新藤兼人監督が亡くなった事が一番大きくショックな出来事でした。
改めて合掌。
観た映画: 2012年5月
映画本数: 28本
鑑賞時間: 3160分
ミッドナイト・イン・パリ
素敵な一本。テンガロンハットが似合うアメリカンナイスガイ、O•ウィルソン主演のW•アレン作品。魅惑の街パリで憧れのロストジェネレーションの世界へロストするお話。偉人達のキャラが濃いので、普段のW•アレン作品より主人公のアクが弱く若干マイルドになっており、バランスが良いのは流石。しかしO•ウィルソンはパリが似合わないが、文句なしの良作。
鑑賞日:05月31日 監督:ウディ・アレン
赤い部屋の恋人
映画『スモーク』の監督•脚本コンビの官能的な一本。マーク•ザッ◯ーバーグばりのオタ成金が恋したストリッパーをものにしようと、本番無しの条件で3日間を過ごす苦行ばりの契約をすると云う、男にとっちゃ何ともむごい内容。お互い満更でもない女と男のせめぎ合いが、焦れったくも面白い。良作。
鑑賞日:05月30日 監督:ウェイン・ワン
スローなブキにしてくれ
片岡義男の同名小説を藤田敏八が洒落乙に映画化した一本。しかし、藤田敏八の映画には不思議ちゃんばかりが出てくる。野良猫よろしくJK浅野温子が山崎努と古尾谷雅人を振り回す。山崎努のくたびれた大人役のアンニュイさ加減がこの歳になると良く分かる。ちょっと長いがなかなかの一本。
鑑賞日:05月29日 監督:藤田敏八
戒厳令
昭和維新を扱った吉田喜重作品。なんと云うか、かなり鑑賞者を置いてけぼりな感じで、5•15、2•26事件の背景を理解していないと楽しめない。リスカ趣味の三国連太郎=北一輝が色々とまくしたてるが、あんまり頭に入って来なかった。雰囲気事体は嫌いではないが、クーデターものならば、岡本喜八監督の『日本のいちばん長い日』の方が好きだ。時代が若干違うけど。
鑑賞日:05月28日 監督:吉田喜重
ウエディング
人がとにかく沢山出てきて騒々しく展開する群像劇な訳だが、どの人間もかなりクセ者で、いずれも笑わしてくれる。そんな人間達をテンポ良く繋いて行くあたりはさすがロバート•アルトマンと云ったところである。嵐の様な一本。
鑑賞日:05月27日 監督:ロバート・アルトマン
戦場でワルツを
監督アリ•フォルマンが体験したレバノン戦争を題材としたヌルヌル動くアニメーションドキュメンタリー映画。切り取られたトラウマレベルの虐殺の記憶を辿る告解的な内容に賛否はありそうだが、歴史的事実なだけにズーンときた。不謹慎だが戦場とショパンの汚ないものと綺麗なものが組み合せの混沌具合にうっとりしてしまう。良作。
鑑賞日:05月27日 監督:アリ・フォルマン
絞殺
社会問題になっていた家庭内暴力を描いた新藤兼人作品。脚本、演技云々を凌駕した独特の妙な空気の流れる世界観は健在。お馴染みの蓼科ロケもあり。イケメンDV男、狩場勉の素人臭い演技も別に気にならず、西村晃の横暴な父親っぷりも腹立たしく効果的。そして何よりも乙羽信子の精神崩壊気味な演技も見事。50代で脱がないで欲しいけど。良作。
鑑賞日:05月25日 監督:新藤兼人
もっとしなやかに もっとしたたかに
ニューファミリー志向の奥田英二はしたたかな女たちに翻弄される訳だが、はたから見ていると割と楽しそう。高度経済成長期のテンプレに対しての藤田敏八監督の冷めた目線が良く分かる。そして、さすがにエロスを良く熟知していらっしゃる。秋吉久美子には敵わないが、森下愛子も結構良い。良作。
鑑賞日:05月24日 監督:藤田敏八
フレンチ・コネクション2
1作目で取り逃がしたフェルナンド•レイを捕まえるべく、マルセイユへやってきた2作目。前作より話はシンプルですんなり観られる。1作目が云々と、比較と云うよりは2作で1本。ヤク中にされた恨みを晴らさんばかりにアロハを着た銭形ばりのジーン•ハックマンがフェルナンド•レイを追い詰めるシーンは圧巻。ラストはしびれる。名作。
鑑賞日:05月23日 監督:ジョン・フランケンハイマー
ギャンブラー
流れ者ウォーレン•ベイティの身から出た錆的な映画であるが、商売上手とは裏腹に愛する女との不器用なやり取りが何とも切ない。カナダ国境近くの街の寒々しい雰囲気とレナード•コーエンの曲が何よりも沁みる映画。雪の特撮は別として、白っぽい映像はかなり好き。良作。
鑑賞日:05月21日 監督:ロバート・アルトマン
嵐が丘
岡田茉莉子の居ない吉田喜重作品。荒ぶる松田優作=ヒースクリフのピュア男っぷりが発揮されてはいるものの、全体的にはやや空回りしている感が否めない。が、舞台のヨークシャーの荒野を鎌倉時代に置き換えて日本古来の神道の雰囲気を醸し出しているのは見事。セットも黒澤明の"乱"みたいで好き。武満徹の音楽も素晴らしい。
鑑賞日:05月19日 監督:吉田喜重
夢の中へ
今の自分を選択したのは、全部金星人のせいなんだッ!...って言いたい気持ちが分かります。荒削りな映画と思いきや、役者の何気ない演技がリアルだったり、夢との切り替えが絶妙だったりと、園子温監督の製作に対する厳しさも伺えます。良作。
鑑賞日:05月19日 監督:園子温
脳内ニューヨーク
あんまり考えずに観た方が良い気がする、迷走っぷりが何とも悲しい作品である。方向性を決めきれず迷走する、そいつが人生ってもんなのだろうね。でも希望は持ちたいのが人間って云う悲しい性。チャーリー•カウフマンとフィリップ•シーモア•ホフマンの描くズタボロの人間像はまさに宇宙の塵のごとく、しかしながらちっぽけで愛おしい。複雑な映画だけれども、素晴らしい作品。
鑑賞日:05月16日 監督:チャーリー・カウフマン
HOUSE
ファンシーでガーリーかつ、奇天烈な変態ホラーの大傑作。若き日の大林宣彦があらん限りの映像エフェクトをこれでもかと駆使してかなりサイケ度が高い。池上季実子他の無駄なヌードも多々あり。最高。
鑑賞日:05月15日 監督:大林宣彦
フレンチ・コネクション
久々の鑑賞。文句なしの傑作。"ポパイ"の駄目さ加減が逆に格好良い。サントラも最高。フェルナンド•レイは金持ってそうな役が良く似合う。
鑑賞日:05月14日 監督:ウィリアム・フリードキン
告白的女優論
浅丘ルリ子、有馬稲子、岡田茉莉子他やたら豪華な出演者な一本。このくらいの時期の吉田喜重作品はいささか観念的過ぎな気もする。戦隊ものよろしく、3人の女優がズンズン迫ってくるラストは圧巻。
鑑賞日:05月14日 監督:吉田喜重
女と男のいる舗道
えらい昔に観て全く印象に残ってなかったのだが、久々に観たら結構良い映画だった。読書するオヤジの言葉"人生をあきらめた方が上手く話せる"は妙に納得。難しいけど。ゴダール作品の中では一番好きかもしれない。
鑑賞日:05月13日 監督:ジャン=リュック・ゴダール
薬指の標本
原作の世界観を損なう事なく、かなり忠実に再現されている作品の一つ。なんとも艶かしい感じが良く表現されている。ベス•ギボンズの音楽も効果的。原作とともに良作。
鑑賞日:05月10日 監督:ディアーヌ・ベルトラン
ええじゃないか
面白い様な面白くない様な。今村昌平作品には珍しくボヤ〜っとした印象の映画。ちょっと長い。が、江戸庶民のパワフルな感じは伝わるし、時代が変わる前のざわざわしたところも良く撮れていた気がする。泉谷、桃井のコンビは新鮮で良かった。この題材は『赤毛』の方が面白い。
鑑賞日:05月08日 監督:今村昌平
スパルタカス
十数年振りに観たが、やっぱり名作。監督交代云々がある作品ではあるものの、キューブリックの後の作品を伺わせる箇所がいくつもある。ケツアゴ大将のギラギラした感じも良い。ただ、Blu-rayで観て綺麗なのは良いとして、綺麗過ぎて背景の絵が分かり過ぎて、やや萎える。が、傑作。
鑑賞日:05月07日 監督:スタンリー・キューブリック
サンサーラ
フラフラと身一つでユーラシア大陸を流れ行く、やたらとアクティブな浮浪者気味の男のお話。日本にもやってくる。その放浪さ加減にかなり憧れる。それを具現化した様な90年代風の倍速やスローを盛り込んだ映像も素晴らしい。音楽家の"人間を知れば知る程、犬が好きになる"のセリフにグッときた。至福の2時間。
鑑賞日:05月06日 監督:ジークフリート
煉獄エロイカ
久々にわけわからん作品を観た。左翼革命の崩壊と云うところはうっすら分かるが、時系列やらが入り乱れて完全に混乱させられた。が、吉田喜重の冷ややかな視線は全体を通して感じる。お話とは対極に映像は、これ程完璧な映像は観た事ないくらいの素晴らしさ。O•ウェルズの『審判』を思い出す。とりあえず、しつこく何回か観たい作品。
鑑賞日:05月05日 監督:吉田喜重
フランシス・フォード・コッポラのリップ・ヴァン・ウィンクル(C/W マルコム・マクダウェルの赤ずきんちゃん)
コッポラのリップ•ヴァン•ウィンクルとM•マクダウェルの赤ずきんちゃんを鑑賞。低予算な感じながらもブラックで完全に大人向けの童話。出てくる役者も結構豪華。ヴァン•ダイク•パークスが音楽監督ってのも凄い。
鑑賞日:05月03日 監督:フランシス・フォード・コッポラ、グレーム・クリフォード
キカ <ヘア無修正版>
変なのがワンサカ出てくる色物映画と思いきや、かなりお話もしっかり作ってある。確かにピーター•コヨーテは『赤い航路』と似た様な役だった。そろそろ公開のアルモドバルの新作も楽しみ。
鑑賞日:05月01日 監督:ペドロ・アルモドバル
category: 映画レビュー
tags: 2012年映画レビュー