Films: May.2018『反撥』ほか
Jun,02 2018 12:30
先月から続く、10年ぶりくらいのハネケ祭りは相変わらずとして、全体的にヨーロッパなラインナップ(後半で成瀬巳喜男祭り)。
ナスターシャ・キンスキー、イザベル・ユペール、カトリーヌ・ドヌーブ、そして原節子と綺麗どころが多し。
傑作、良作揃いの5月で甲乙つけがたいけども、『エル・スール』と『アメリカの夜』はちょいと別格。
劇場に観に行った、『男と女、モントーク岬で』もなかなかだった。
観た映画: 2018年5月
映画本数: 20
ジョルジュ・バタイユ ママン
後の方のバタイユは読んでないけど、気になったので鑑賞。 "破滅を宿していないと快楽は得られない"とまるで眼球譚の少女がそのまま成長したかの如くなユペール様とバタイユ自身の投影かどうか分からんけど、とにかくイケメンでケツ出しまくりのルイ・ガレル。展開されている地獄絵図はバタイユの追求した"死とエロス"そのもので、排尿カットをしっかり入れてくるあたりも著者の作風が尊重されている気がする。バーバーのアニュス・デイのチョイスもなかなか。うーん、生きているって感じ。良作。
鑑賞日:2018/05/31 監督:クリストフ・オノレ
山の音
乱れに乱れまくった昨今ならば嫁(原節子)と老け役の義父(山村聰)で間違いでも起こりそうな筋ではある。三島由紀夫曰く接吻だけで自決する大正の女性の貞操観念から戦後の昭和で緩くなったとは云っても劇中の家庭問題はさぞかしショッキングだったろうと思われる。 川端康成のいぢめがちな美学、成瀬巳喜男のスムーズな演出も文句なく素晴らしいけれども、今時こうはならんよなって思いもよぎらないではない。 トリガーとしてのまたしてもの鼻血、吹っ切れた原節子とビスタな代々木公園の組み合わせはとても良かった。
鑑賞日:2018/05/30 監督:成瀬巳喜男
男と女、モントーク岬で
ニンフォマニアックの延長を行く程では無いにせよ、一般的にはとんでもなくクズ男を演じたスカルスガルドではある。 しかし、視点を変えると劇中の恩師ウォルター曰く『この絵は俺のだからどうしようと俺の自由』の台詞同様に一般論では通用しない場面が人生の中で多々あり、この映画のケースもそうかと思われる。 モラルも何も全てを投げ打っても取り戻したいものがあると云う男。そんな男が行き着く、あと少しで手が届くみたいな海辺到着のシーンの全然届きそうな気がしなくなる『ヴェニスに死す』とアダージェット感。 いくら"I
Want You"してみたところで蓋を開けてみれば、完全にあとの祭状態で何もかもが後には戻る事が出来ない。 男も女もそれぞれが変わり、そして現在を所有している。 そんな中で届かぬ過去の幽霊こと、失意の女に突き付けられる「あなたの子供が生みたかった」一言を受けた際の表情に後悔の全てが集中する。 その後、元鞘に戻るこの男をクズとは言うなかれ。 人間は完全無欠じゃなく、弱さもあるし猪突猛進的な情熱もあると。
これはもう人生に後悔したくなくなったoverアラフォーくらいじゃないと全然グッと来ない映画かと思われるも、人生の分岐点にまつわるとても悲しいお話で非常に良かった。 そんな切なさの中でクロスビー、スティルス、ナッシュなニャンコ達にほっこりするも、ヤングがいなくて余計に悲しくなる。良作。
鑑賞日:2018/05/29 監督:フォルカー・シュレンドルフ
愛なき女
筋自体は古典的なもので如何様にもなりそうなもんなんだけど、尺のせいかバスバス展開して行くのでカタルシスが弱いと云うか重厚さがない。とは云うものの愛と憎と各人の立ち位置の絶妙さ、クサクサする兄の暴発(気持ちは分かる)からの荒れ狂う家の感じとかなかなか見応えはある...けどバスっと終わる。ブルジョワジーの生態に対する軽蔑的な視点と思えばつまらん事もないかもしれない。
鑑賞日:2018/05/28 監督:ルイス・ブニュエル
エル・スール
思った事を言えなくなってしまった大人と無垢な問いかけをする子供。親の青春時代を知りたくとも物理的に決して知り得ないと云う絶対的な溝。その溝のこちらとあちらとこの時とあの時でそれぞれが歩み寄ろうとしつつ、距離を縮めようとする。その切なさたるや。無垢なる視点の末にエル・スールへと赴く少女。『彼女』と父親との距離はこれ以上広がる事はない。傑作。
鑑賞日:2018/05/27 監督:ヴィクトル・エリセ
竹取物語
わが家的に徒然草等の平安ブームなのと、先日のかぐや姫共ににまんまと触発された形。小学生の時に劇場で観た際は特撮スゲェくらいだったと思われるも、今回改めて鑑賞してこんなに酷かったかと閉口。まぁでもこう云うのが流行ってたんだと思うけど。元シカゴのピーター・セテラとか今聴くとちょっと恥ずかしィ。筋って事もないけど、話そっちのけで百万年さんレベルの沢口靖子だけ愛でていた感じ。
鑑賞日:2018/05/25 監督:市川崑
めし
よそん家の夫婦喧嘩と云う最高にどーでもいい題材ながら実にドラマチック。他の作品でもそうだけども、ピキピキしている時の原節子の怖さと表現の濃密さ。加山同様に隠しきれないモテDNAの上原謙、ド正論の小林桂樹+ニャンコ等々で層の厚さもまた感じる。締め方としては、フェミニストの皆さん的に大激怒しそうな終わり方ではある。しかし、もはや神話かお伽みたいなレベルになってしまった昭和の人々の営みに、林芙美子じゃないけども愛おしさを覚える。傑作。
鑑賞日:2018/05/23 監督:成瀬巳喜男
反撥
数十年後にセクハラ告発を批判する人とは思えない乙女設定。腐敗と瓦解でもって崩壊する。瞳孔開きっぱなしでも超絶可愛いカトリーヌ・ドヌーブの怪演と割と初期のなんか固いんだけども、アクの強いポランスキー演出の数々でドキドキは止まらない。で、イケてるスネアロールと悪夢系の舞台セット。とってもバランスが良い印象。傑作。
鑑賞日:2018/05/22 監督:ロマン・ポランスキー
愛の奴隷
この霧を抜けても五里霧中な恐ロシア。メロウなテーマ曲を必ず一本立てつつ、しっかりカメオ出演もするニキータ・ミハルコフ。全然合ってないんだけど、ビル・コンティみたいでかなり好き。ロシア革命の混乱、動乱によって損なわれる芸術と彼らが愛するロシアの大地。超絶的に印象に残るやたらとアヴァンギャルドな演出のオンパレードの中でもやはりラストのシーンが記憶に焼き付けられる。良作。 追記: サントラ調べてみたら、エドゥアルド・アルテミエフ先生でした。どーりで好みな訳だ。
鑑賞日:2018/05/21 監督:ニキータ・ミハルコフ
アトミック・カフェ
VHSから取り込んだやつを久々に。なんでもアリなこれが戦勝国ってやつなんだな。最後の2人まで殺しあうのが人類...認めたくないけどねぇ。どこの国も変わらないのだとは思うけれども、自己防衛の名のもとに繰り広げられる諸々の滑稽さ。嫌だねぇ。
鑑賞日:2018/05/19 監督:ケヴィン・ラファティ他
71フラグメンツ
三作目。すっかり内容を忘れていたものの、開始5分でオチまで鮮明に思い出す。日々ニュースやネットでいかに断片なソースしか受け取っていないか。街の事件から紛争までその裏側には人の分だけ物語がある。それらを知らずに過ごす、背筋が冷たくなるような距離感の中での社会生活を描く、からこそのハネケの善への願望。で、「まともな人間の話題は俺の話だけだ」と来る。凄い。傑作。
鑑賞日:2018/05/18 監督:ミヒャエル・ハネケ
映画に愛をこめて アメリカの夜
我が家的にはヘビロテのサントラの方が馴染みのある一本。タイトルの昼から夜のフィルター、フィルムのサウンドトラックのOPから始まり映画制作のあらゆるものが詰まっているメタ構造作品。森崎東の『ロケーション』もまた観たくなるな。『市民ケーン』のスチールとイタリア映画のアフレコの下りがもの凄く分かる。幸せな気分になる作品。傑作。
鑑賞日:2018/05/16 監督:フランソワ・トリュフォー
フレンチアルプスで起きたこと
なんか胃が痛くなる。仮定の段階でカッコいい事はいくらでも言えるんだけどね。収集の付け方としてはカミさんが一枚上手だけども、微妙な傷が残る。反面、したり顔でタバコをふかす旦那に赤面。恥ずかしい人にはなりたくないなぁ。
鑑賞日:2018/05/12 監督:リューベン・オストルンド
イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男
映像美と音楽の使い方はまさしくソレンティーノのソレなんだけども、如何せんイタリアの近代史に馴染みがなさ過ぎなのと、登場人物がてんこ盛りでちょいとくたびれる。裁かれるは善人のみ的な感じで、どこの国にも悪知恵の働く奴が居ると。
鑑賞日:2018/05/11 監督:パオロ・ソレンティーノ
パリ、テキサス
最近、『LUCKY』と『テス』を観たので久々に鑑賞。やっぱりマジックミラーにトランシーバーにと距離感が絶妙だな。「パパもママも生きていると感じてた」ってところに尽きる。遠くて近くて、近くて遠い。ヴェンダース作品の中でも頭一つ出ている感じ。傑作。
鑑賞日:2018/05/09 監督:ヴィム・ヴェンダース
未来よ こんにちは
絶大なる時の癒しの力だわな。知的かつ高尚なユペール様を悩ます日常的なダメージの数々。思想だけでは抗い難い現実の悲劇と言えども、それは永遠ではない。毛嫌いしていたニャンコの席を変える、そんな時の流れの中で生きている。
鑑賞日:2018/05/07 監督:ミア・ハンセン=ラヴ
ガーターベルトの夜
奔放な振りして意外と純愛な年上のオネーサンの一面とな。中学生の妄想レベルでとんでもなくユルユル。でもすごい好き。エリザとエリックと甲乙付けがたい。ミカドのサントラ欲しい。
鑑賞日:2018/05/06 監督:ヴィルジニー・テヴネ
この庭に死す
激しくブニュエルらしくない気もするものの、信仰の挫折感はやっぱりブニュエルっぽくはある。世にも雑な群像劇からこれまた雑なサバイバルに移行する。とにかく雑な印象しか残ってないのだけれども、終わってみればなかなか見応えのある極限状態の人間心理を描けていた気もしなくはない。
鑑賞日:2018/05/03 監督:ルイス・ブニュエル
テス
シャロン・テートに捧げるってのにグッとくる。貧困と家柄問題に加えて性的なものへの厳格さ。19世紀におけるイギリス文学のテンプレとも云えそうな閉塞感に包まれる。完全なるメロドラマな上に時折なにか雑な演出をするポランスキーではあるものの、まぁナスターシャ・キンスキーを愛でる映画と思えばなんて事ぁない。パリ、テキサスの時の方が好きだけど。良作。
鑑賞日:2018/05/01 監督:ロマン・ポランスキー
category: 映画レビュー
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