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地球に落ちて来た男

Films: Jul.2022『地球に落ちて来た男』ほか

Aug,03 2022 13:00

2022年7月7日リリースの『if』の後、捗らないながらも間髪入れずに次作に取り掛かっていた7月。
劇場版の『RE:cycle of the PENGUINDRUM 前編 君の列車は生存戦略』を観るにあたって再鑑賞の、やっぱり別格アニメ作品だった『輪るピングドラム』が一番印象的。併せて見ていた、青春時代のマイバイブル『Bバージン』作者、山田玲司の考察も面白かった。『輪るピングドラム』をより深く堪能したい人にはお金を払う価値がある。
そしてまたまた観始めてしまった、『タフ PART1 誕生編』、『タフ PART2 復讐編』、『タフ PART3 ビジネス殺戮篇』、『タフ PART4 血の収穫篇』に加えて『KAMIKAZE TAXI』と怒涛の原田眞人祭りと云った具合(最高)。
先月頃から、恐らく夏になると勝新が観たくなる現象と云う事で、『座頭市牢破り』と『座頭市と用心棒』な勝プロ系座頭市に大映娯楽超大作過ぎな『富士山頂』とこちらも結構アツイ。
久々のルイス・ブニュエル『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』とジャンヌ・モロー主演の『小間使の日記』もなかなかに印象深い。
初鑑賞ものとしては、ドストエフスキー『白痴』を魔改造した体なアンジェイ・ズラウスキー『 狂気の愛』に『ロッキー』の監督ジョン・G・アヴィルドセンの世代間のあまりにあんまりな断絶を描いた『ジョー』、観る映画にハズレなしなベルトラン・ブリエの『料理は冷たくして』と強烈なやつが多かった。
そんな異色作に混じってキョーレツの度合いの一段上を行くフライング・ロータスことスティーヴの『KUSO』はスーパー悪夢系の紛れもないKUSO映画だった(褒めている)。
久々の伊丹十三『タンポポ』にこちらも久々なニコラス・ローグ『地球に落ちて来た男』と7月もまた傑作揃いだった。
色々悩んだ末、不動のビジュアルって事でデヴィッド・ボウイを7月の顔とする。
そんな今日この頃。

観た映画: 2022年7月
映画本数: 18本

小間使の日記

増幅する排他主義とブルジョワジーの皮肉と云う大テーマをゲス男達を並べて描写。溜まり過ぎなミシェル・ピコリ筆頭にそのどれもがクセ者過ぎて最高。少女の事件含めて展開が雑っぽい感じで、市原悦子か猫村かって云う雰囲気なんだけど、色気を振り撒くるジャンヌ・モローはやっぱり存在感があってイイ。

鑑賞日:2022/07/30 監督:ルイス・ブニュエル


タンポポ

生活の大きな部分を占める大小古今東西様々な食のあれこれ、そこに庶民の味にして小宇宙なるラーメンを軸にする妙。散りばめられた伊丹十三的うんちくと宮本信子で面白くならない訳がないのに、山崎努、加藤嘉らを始めとした役者陣のポテンシャルを活かしまくっててスゴい。牡蠣とベニスに死すみたいな役所広司からの藤田敏八の敗者からの大滝秀治の蕎麦屋の流れが最高過ぎ。

鑑賞日:2022/07/25 監督:伊丹十三


狂気の愛

二郎インスパイア系みたいな。ドストエフスキーが云う所のムイシュキンと健常者面してる奴らのどっちが狂ってるかって事だけど、これに関しては全員狂ってる。と云うかテンションおかしい。結構な『白痴』ベースでありつつも、決定的に何かが違う気もしなくはない。ものの、腐っても美しいパリとイケてるカットの多さに、脱ぎっぷりの良いおかっぱソフィー・マルソー(可愛ええ)とで満足っちゃ満足。あと『風と共に去りぬ』のビデオがヤバ過ぎなのと、移民政策失敗し過ぎなフランスとで対岸の火事じゃない感じで笑えない。中盤で出てきたリアルなアルムの山小屋的な場所に今すぐ行きたいぞ。

鑑賞日:2022/07/24 監督:アンジェイ・ズラウスキー


RE:cycle of the PENGUINDRUM 前編 君の列車は生存戦略

RE:cycle of the PENGUINDRUM 前編 君の列車は生存戦略

最終回から繋がる1話のネタバレのやつを回避しつつ再構築。新たなカットを挿入し、パぁーリぃー♪等々の時籠ゆりパートやらあちこち端折っているものの、大分丁寧に分かりやすくなっている印象。桃果登場に『きっと何者かになれるお前たちに告げる』の下りではちょっと感激する。作画微妙回そのまま使用は頂けないけど、元が面白いので全く問題なしって感じ。最後のDEAR FUTURE挿入から眞悧エンドはなかなか。で、おいしい役をゲットしたすみぺ。後編楽しみ。

鑑賞日:2022/07/21 監督:幾原邦彦


ブルジョワジーの秘かな愉しみ

久々。満たされる事のない欲望の道をカッコイイ感じで颯爽と行くブルジョワジーたちの図からして超意地悪。あらゆるものをお預けにし、縦横無尽な夢オチ連鎖で奴らに好き勝手はさせんゾと並々ならぬブニュエルの意志を感じる。フェルナンド・レイのセカンド・ディナー(夢)が美味そう。

鑑賞日:2022/07/19 監督:ルイス・ブニュエル


ジョー

最近の若い奴は〜って云う太古の昔からあるテーマ。保守とヒッピーの世代間の溝が埋まりそうなとこまで持って行ってからの断絶で上手い事作ってる。で、動く危険物ことジョーがアメリカの良心の化身みたいな奴で、まぁ取り扱いに困る。クリーンに(粛清)するを実行するトラヴィス的、もしくは日本でも最近発生した正義マンってのは皆んな矛先が狂ってナンボなとこがあるのが余計怖い。ジョン・G・アヴィルドセンのサイケ演出と『ロッキー』っぽい選曲もなかなか。プリっとしたスーザン・サランドン可愛ええ。

鑑賞日:2022/07/18 監督:ジョン・G・アヴィルドセン


KAMIKAZE TAXI

役所広司(ペルー育ち)登場の絶妙なタイミングからして上手過ぎな原田眞人。そよかぜに乗っての逃亡劇から、最後の神風の畳み掛けが凄まじい。どんどん駄目になって行く日本国家に内側から抗う高橋和也に外側視点の役所広司の図式とで上手い事出来てる。あいつからミュージックが聴こえんだよと憎めない悪役ミッキー・カーチスと存在感あるタフの二人も最高。散々ヴァイオレンスでありながらも、何やら優しい世界に溢れてる。

鑑賞日:2022/07/17 監督:原田眞人


KUSO

KUSO

スーパー悪夢系の紛れもないKUSO映画。リンチ、クローネンバーグ、或いはArcaのMVなんかより酷い事になっとる。凝りまくった効果音に時折、フライング・ロータスのフライング・ロータス的なサウンドが挿入されるとむしろホッとする。史上最低映画ながら最強のインパクト。

鑑賞日:2022/07/16 監督:スティーヴ


タフ PART4 血の収穫篇

血飛沫を浴びたピザでシリーズ回収(収穫)って事で秀逸過ぎ。怪しい奴だらけのフェリー等々の大きいところから細かいオマージュネタ、シロハタの呟きまで全てが最高。亡霊と生者の叫びの間で『何言ってるか分かんねーよ』のとこなんか痺れる。素晴らしい。

鑑賞日:2022/07/15 監督:原田眞人


タフ PART3 ビジネス殺戮篇

奴隷の色んな形。ブツブツ呟くシロハタの亡霊が有能過ぎて最高。で、水を得た様な根岸季衣とエロかわいい山下容莉枝 。やっぱり原田眞人監督で冴え具合が全然違う。サテュリコン読まにゃ。

鑑賞日:2022/07/14 監督:原田眞人


タフ PART2 復讐編

銃の構えは体幹ブレブレだけども、濡れ場等々で女の武器(映画的に)を発揮する三原じゅん子回。各々の過去を明かしつつ、本気出し始めるシロハタへの復讐劇。改めて観ると原田眞人がキレ過ぎなだけであって、門奈克雄演出もなかなか味がある。成長する木村一八を見守る根路銘とガレージみたいな気分にさせる一本に仕上がっていて楽しい。

鑑賞日:2022/07/13 監督:門奈克雄


タフ PART1 誕生編

再鑑賞。観れば観るほど良く出来てる。唯一無二なタイトルから始まり、台詞回しからアクションまで全シーンが異常にスタイリッシュ。『ロンサム・ダブ』が観たい。

鑑賞日:2022/07/12 監督:原田眞人


座頭市と用心棒

バケモノ(勝新)とケダモノ(三船敏郎)に綺麗どころの若尾文子、第三の男に岸田森、その他喜八組の面々とアラカンと好き要素は多い。で、岡本喜八+勝プロ+伊福部昭の組み合わせと最強布陣感が半端ないわ。テンポ等々、喜八色が若干薄まってる気もするけれども、この世の地獄絵図まで丁寧に積み上げてから、ラストの畳み掛けはやっぱり素晴らしい。あー白飯からのお茶漬け食いてぇ。

鑑賞日:2022/07/11 監督:岡本喜八


富士山頂

日活の超大作ってあんまし観てないので新鮮。大蔵省の上から下は地元の青年団まで無茶振り連鎖で中島みゆきが流れそうなお仕事系。三菱電機全面バックアップ、豪華キャストで淡々と難易度の高い土木工事を観させられる訳だけども、ババーンとした絵面と音楽の割にまぁ地味だわね。ものの、遠い目をした渡哲也のヘリでドーム設置の下りと台風直撃のとこはハラハラして結構楽しい。裕次郎と山崎努のメイク顔対決や勝新と佐藤允の組み合わせ好き。

鑑賞日:2022/07/09 監督:村野鐵太郎


旋風の中に馬を進めろ

とことんツイてねー。ハリー・ディーン・スタントン一味の所業から始まり、遅れて登場のジャック・ニコルソン達。完全なる巻き込まれ型でありながら、意地でも縛り首は避けるって云う不遇と妙な信念とが混ざり合ってる。ドツボにハマる劇中とは裏腹に伏線と回収がまぁ綺麗で良脚本。屍の上を行くラストの光の具合がたまらん。

鑑賞日:2022/07/07 監督:モンテ・ヘルマン


地球に落ちて来た男

ヴィジターの哀しき末路。故郷の星でも地球でも渇きは癒える事がない。莫大な財力を持ちつつも思う様にはいかない地球の社会と堕落の海の深い事。そんな俗世と異星人のムズカシイ役柄を、時に背脂みたいなのにマシマシになりつつ、ボウイ自身をも曝け出す頑張りに満点上げたい。ニコラス・ローグのトリッキーなやつも最高。

鑑賞日:2022/07/05 監督:ニコラス・ローグ


料理は冷たくして

料理は冷たくして

ドパルデューが隣らーする最初から面白い。コンクリートの郊外に自然をディスりつつ、全シーンがいちいちこの上なく美しい。希薄な現代の人間関係を匂わせながらも、結構仲良く楽しそうな登場人物達。食洗機に血のついたナイフを放るカミさんを筆頭に、不条理を重ねていくと麻痺してくる現象。これに慣れ親しんでる現代社会って事でどうかしてる。最後は人形みたいな美貌のキャロル・ブーケってのも映画的に良い。

鑑賞日:2022/07/03 監督:ベルトラン・ブリエ


座頭市牢破り

勝プロ1作目って事で、のっけの『勝新太郎』バァーンなんかは意気込みを感じる。ものの、山本薩夫っぽい社会派なやつが若干詰め込み過ぎな感もある。豹変する三國連太郎も悪くはないけど、活かしきれてない気もしなくはない。全体的にしっくりいってない中、サド面でロウソク垂らす西村晃が一番フィットしてる感じ。そんなこんなでカルミナ・ブラーナ風の劇伴に乗せてのラストはなかなか。牢は破らないけど。

鑑賞日:2022/07/01 監督:山本薩夫