Films: Sep.2022『山猫』ほか
Oct,01 2022 12:47
何を思ったのか突然『ふぞろいの林檎たち』のシーズン1から4までを観て映画本数が極端に減った9月。
『座頭市海を渡る』から始まったものの、再鑑賞を含めてアラン・ドロンばっかり観ている気がする。『さらば友よ』、『レッド・サン』、『山猫』と本数をまとめるとそんなでもないものの、やっぱり印象深い役柄が多いって事なんだろう。ヤコペッティ『世界残酷物語』なんかのせいもあってかイタリアっ気が目立つ。
号泣必至の今月の寅さん『男はつらいよ 寅次郎純情詩集』にジェームズ・ギャグニー+ヘンリー・フォンダ+ャック・レモンとジョン・フォードの『 ミスタア・ロバーツ』も良い感じ。
ラストのジャ・ジャンクー『帰れない二人』も素晴らしい。
アキ・カウリスマキ『コントラクト・キラー』、アピチャッポン・ウィーラセタクンの新作『MEMORIA』にタル・ベーラの貴重なアーカイヴな『ダムネーション 天罰』と満点目白押しなものの、再鑑賞ながら現在の心境に一番にグッと来たルキノ・ヴィスコンティ『山猫』を9月の顔とする。
そんなかんなで今度は『ママハハ・ブギ』観てる今日この頃。
10月はまた映画に戻ろうと思う。
観た映画: 2022年9月
映画本数: 14本
帰れない二人
目まぐるしいチャイナ。17年の歳月で渡世人としての立場の入れ替わりから見える風景まで変わってしまう二人って事でまぁ哀しい。遊星の如く接近しては離れの、いわゆる腐れ縁の一つの形と、個人のあれこれを凌駕する国家のド級な規模の発展、山西省→三峡ほかとで『長江哀歌』とも通ずる。ペットボトルに黄色シャツの同じいでたちの登場で探してるの図も凝ってて良い。鳥の巣での一幕『渡世人でなくなった人間には、この義理は理解できない』の粋な台詞に心を掴まれる。
鑑賞日:2022/09/30 監督:ジャ・ジャンクー
山猫
主要人物を交えて展開するも、まぁややこしいイタリア統一戦争。節操のない人種と没落する人種って事で混乱を挟んだ新旧時代のあれやこれが生々しく描かれる。バート・ランカスター演ずるサリーナ公爵が抱く、絶対的な若さと新時代への喪失感、疎外感と云うものが、自ら中年にしてヒシヒシと伝わってきて泣きそうになる。どう足掻いても届かない無念さは『ベニスに死す』のソレと通づるものがある。で、最高潮なフィナーレからの宴の後演出(おまるのとこもスゴイ画)がまぁ素晴らしい。
鑑賞日:2018/02/22 監督:ルキノ・ヴィスコンティ
ダムネーション 天罰
室内でもビショビショなハンガリアン。『俺は復活ではなく破滅の話をしている』って事で金は破滅を防ぐ事ができると言いつつ、旧約聖書を引き合いにして金では身を守る事はできないと丁寧な振り幅の説明。動くカメラに次に何が映し出されるか結構ワクワクしながら観た末、最後は濡れそぼった犬畜生化の人間って事でこっちが凹む。人の道は外れちゃイカンな。
鑑賞日:2022/09/26 監督:タル・ベーラ
男はつらいよ 寅次郎純情詩集
アラビアの寅ンスから始まり、最後の晩酌を挟んでラストは号泣。京マチ子に美少女な檀ふみのダブルマドンナにシリーズ唯一の展開って事でクオリティは高い。空気読めない寅さんにみんなして非難轟々な序盤から、グワっと変化するさくらの胸中がかなり来る。特に芋と花屋のとこ。脇で存在感出す浦辺粂子や別所温泉ロケーションも大変良い。
鑑賞日:2022/09/25 監督:山田洋次
MEMORIA
久々な感じなゴリゴリの音響系映画。音を頼りにした時間の旅って事で、ドゥンから始まって、無音、控えめ→暴力的なまでのフィールド・レコーディングとで脳汁出まくる。医者曰く、『世の美しいものを感じ取れなくなる』要素が多い世の中、薬を飲まずとも既にそんな感じの現代において、戻れるかどうかは別として欲しているものはハッキリしてると思われる。しかしこの感染はヤだな。眠りと静止の映画的な時間の扱い方も実に冴えてる。
鑑賞日:2022/09/24 監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン
世界残酷物語
ほとんど嘘くせ〜ってのも含めて大分エンターテイメントしてる。劇中のあれこれを残酷と呼ぶか否かは場所と時間によって大きく変わるって事で結構考えさせられるものがある。で、汚いに痛い等々で視覚を攻めてくるかと思えば、ヒョイと美しい画を挿入してきてなかなかニクいヤコペッティ。更にはマーティン・デニーみたいなエキゾチカなサウンドがとってもイイ
鑑賞日:2022/09/23 監督:グァルティエロ・ヤコペッティ
ル・ミリオン
金だけが全てじゃないと分かっちゃいるけど、みずほ銀行の別室に案内される日を夢見てる。お祝いと称したフランス人のお呼ばれ感がスゴイ。バタバタの合間の花びら舞うステージ上の一幕がまぁ素敵。
鑑賞日:2022/09/22 監督:ルネ・クレール
ミスタア・ロバーツ
ジェームズ・ギャグニーと戦う中間管理職的なやつに加えてジョン・フォードとも揉めてたらしいヘンリー・フォンダ。戦地から離れた輸送船の退屈な日常って事で前半はパキっとした海と空の色を背景にトロピカルな雰囲気でややまったりしているものの、上陸許可あたりから盛り上がってくる。からの、畳み掛けるラスト10分がかなり泣けて流石。泡に締めにと若きジャック・レモンの下りも結構見もの。
鑑賞日:2022/09/20 監督:ジョン・フォード, マーヴィン・ルロイ
レッド・サン
世界のダンディズムに引けを取らないどころか、流石な貫禄且つやる事やる三船敏郎。チャールズ・ブロンソンとのドライなバディっぷりがかなり良い。悪男役が珍しいアラン・ドロンも結構楽しそう。+ボンドガールのサービスカットとでなかなか見応えのある作品だった。
鑑賞日:2022/09/14 監督:テレンス・ヤング
アウトサイダー
観てないと思ったら観てた。1930年代のオクラホマに比べたら平和な感じではある。スティービー・ワンダーのテーマのOPから中盤あたりの『風と共に去りぬ』的な画作りはなかなかコッポラの気合いを感じる。売れっ子前のスター達に混じって、別に出る必要なさそうなトム・ウェイツとコッポラちゃんが何気に印象的だった。
鑑賞日:2022/09/12 監督:フランシス・フォード・コッポラ
帝銀事件 大量殺人獄中32年の死刑囚
揉み消される731部隊案件って事で、敗戦国ゆえの冤罪。事件の再現そのものも凄惨なんだけど、警察の無茶感も結構なモンで。題材的には森崎東っぽいとも言えるし、新藤兼人が好きそうな脚本でもあってなかなか見応えはある。んだけど、仲谷昇への睡眠妨害の過酷な取調べにこっちもちょっと眠たくなる。
鑑賞日:2022/09/08 監督:森崎東
コントラクト・キラー
ようやっと。ボッチで陰気な役もきっちりこなすレオー。ネタ満載な死から生へのお話って事で、英国でも安定のカウリスマキのリズムと色合いとでとても良い。『労働者階級に祖国はない』名言やフレンチ・バーガー物件とか細かいとこに、歌コーナーのジョー・ストラマーも最高。
鑑賞日:2022/09/06 監督:アキ・カウリスマキ
さらば友よ
再鑑賞。点数低く付けてた自分を叱りたい。OPのスッと交差して登場するとこから、EDのマッチで交わるとこまで最高じゃないか。至るところに溢れる裏切りの中で、頑なに守る友情の純度の高さったらない。で、閉め出し作業からの遠隔なやり取りの構成が素晴らしい。川谷拓三が真似してるやつに、ジョジョにも出てくる表面張力の下りも実に良い。イェー。
鑑賞日:2022/09/03 監督:ジャン・エルマン
座頭市海を渡る
安田道代の美少女っぷりが見たくて。(瀬戸内)海を渡り、今まで殺めた人間を弔うお遍路の筈が上塗りしまくる市。『人間ってのは困って人がいても十年は見ない振りができる』→『お前さんは死んだけど生きていたんだ』と人間の狡さなんかを結構熱い感じで描く流石な新藤兼人脚本。
鑑賞日:2022/09/01 監督:池広一夫
category: 映画レビュー
tags: 2022年映画レビュー, アキ・カウリスマキ, アピチャッポン・ウィーラセタクン, ジャ・ジャンクー, ジョン・フォード, タル・ベーラ, ルキノ・ヴィスコンティ, ルネ・クレール, 森崎東