otom

軽蔑

Films: Oct.2022『軽蔑』ほか

Nov,02 2022 13:00

10月10日リリースのEP、『equal: otom remixed』の詰めの作業で忙殺された前半から脱力しているところで、次々と色んな事が起きている10月。
ただでさえ映画の時間が少なくなっている上に、何故だか見始めた『スチュワーデス物語』とそんな毎日。
傾向としては似てる感じのやつが多い具合で、まずは『さらば愛しき人よ』に『さらば夏の光よ』と共に郷ひろみ主演でタイトルがややこしいやつが記憶に残る。面白さとしては原田眞人の方が圧倒的。
再鑑賞ものが珍しく少ない月で、久々の『昼顔』でドヌーブ様を堪能と、月の最後に安定のジョン・カサヴェテス『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』。
お初では清水宏監督の『都会の横顔』、最近何かと見るチャールズ・ブロンソンの『夜の訪問者』、見てなかった'80年代のシドニー・ルメットで『旅立ちの時』と良い作品が多い。
番外としては先日訪れた川村記念美術館の『マン・レイのオブジェ 日々是好物|いとしきものたち』展で鑑賞の1920–30年代の映像作品の数々もネタの宝庫な具合で大変素晴らしかった。
後半は『ファミリー・ネスト』に『アウトサイダー』と初期タル・ベーラ2本立てに、デニス・ホッパー主演のヘンリー・ジャグロム監督作品『トラックス』と濃ゆい傑作が立て続けな具合。
上記のタル・ベーラ作品のデニス・ホッパーのやつと迷ったものの、先月亡くなったゴダール追悼の意味も込めて今月観た久々の『軽蔑』と『カルメンという名の女』より軽蔑を10月の顔とする。

次曲にその他諸々で目が回るように忙しい日々。のんびりワールド・カップって訳にも行かなくなってきている今日この頃で、果たして11月は何本観られるか。

観た映画: 2022年10月
映画本数: 19本

チャイニーズ・ブッキーを殺した男

久々。のっけの借金返済から始まって、金額的にはゼロとマイナスの領域にしかいない気がするも、何やら心がポカポカする話に仕上がっている。腹に穴は空いてても店に穴は開けられないベン・ギャザラ劇場。最高。

鑑賞日:2022/10/30 監督:ジョン・カサヴェテス


アウトサイダー

アウトサイダー

精神病院の最初のシーンから最後まで満遍なくお先真っ暗な具合。受難と言うには微妙な感じのやつを延々と食らうジーザス面の男。生活に困っていようが何だろうがやめる事の出来ない生き方ってものがある。そんな状態を表すかの様な指揮台での1人ベートーヴェンがえらい切ない。周りの迷惑云々のダメ人間っぷりが自分にも思い当たるフシがあり過ぎて結構重い。ダラっとドキュメンタリー風でありながら、倒れる友人の一連のシーンから、ネタみたいなディスコの下りとか実に上手い。そして酒場のグタっとした雰囲気は完全にタル・ベーラのソレって具合。からの『ハンガリー狂詩曲』で締める流れはがまぁ素晴らしい。で、出てくるキャラがまた濃ゆいのが多い。

鑑賞日:2022/10/28 監督:タル・ベーラ


トラックス

トラックス

列車が進むにつれぶっ壊れと喪失が増して超哀しくなる。誰がいたのかいなかったのか、で、誰も来ないで何もない!って事でそうなるのも無理はない。やり方分からん俺の失った青春の擦った揉んだの末のグレープフルーツ・キッスのシーンがまぁ素晴らしい事。虚しく鳴り響く戦意高揚歌とデニス・ホッパー演技とで結構な反戦映画に仕上がってる。

鑑賞日:2022/10/26 監督:ヘンリー・ジャグロム


地球へ・・・

2日続けて秋吉久美子。いちいち回り込むやつや、火柱やらなんかを含めてヌルヌルするアニメーションはかなり力が入ってる感じ。ジョージ・オーウェル的なのとガンダムとイデオン的な気持ち悪めなキャラデザが混じったってな具合な壮大SFでなかなか楽しい。んだけど、原作読んでるの前提みたいな急展開の連続でちょっと戸惑う。こっちはテレパシー通じんのよと。

鑑賞日:2022/10/24 監督:恩地日出夫


さらば夏の光よ

さらば夏の光よ

夏がないってのがミソ。緩やかな前半から締まってくる後半とで、良くも悪くも濃密、もしくは綺麗過ぎる脚本で上手い事まとまってる上、印象的なシーンも結構あるので地味な雰囲気ながらなかなか面白い。男と男と女の選択ミスで時既に遅しな青春で男目線だとかなりキツいやつ。きっちりボコられまくりつつ義理堅い美少年な郷ひろみに、露出はないけどロッテリアコスで問答無用で可愛いをかます秋吉久美子とで、しみったれた四畳半世界にあって非常に華がある。で、天才的な筒美京平の曲で締め。

鑑賞日:2022/10/23 監督:山根成之


ファミリー・ネスト

ファミリー・ネスト

国家から末端の精神に至るまで機能不全を起こしてる具合。一つの巣を中心としてあっちの人もこっちの人も全てをただただ見渡す視点、そして貧者、愚者のみんな平等に救済がない、もしくはしないってのを徹底的にやる正に神の如きタル・ベーラ。共産主義社会の実態と神の不在を、ビーチ・ボーイズみたいなポップなサウンドを流しつつやるから更に悲愴な具合。『地球上がお前の家だと考えるんだ、逆に』って思いながら観てたんだけども、恐らくはそんな意見も届かなくなるほどに個人の精神が汚染されてる感じで、猛烈に罪の所在を問いたくなる案件。

鑑賞日:2022/10/22 監督:タル・ベーラ


旅立ちの時

『RUNNING ON EMPTY』って原題からして良い。切迫した生活を表現するのに超かわいいワンコを捨てるをやってのけるシドニー・ルメット。親世代の負の遺産を背負わされてるのがデフォルトの状況って云う、面白いに決まってる設定。で、文字通り『悲愴』な顔つきから徐々に感情を発露するリバー・フェニックスの細かい演技だけで泣ける。『あの娘と寝たのか?』→『自転車降ろせ』で父ちゃんがまた泣かせる。グーニーズのお姉ちゃんの雰囲気もとってもよろしい。

鑑賞日:2022/10/21 監督:シドニー・ルメット


男はつらいよ 寅次郎恋愛塾

樋口可南子が見たくて。脱がずとも、風呂上がりのぽや〜っとした感じなんかで可愛らしい。五島列島から始まり瞬間的に耶蘇教へ改宗する寅さんではあるも、全体的に動きは少なめ。ほどほどにお年を召したとらや、御前様の面々を中心に若手が話を進めてる感じ。ベートーヴェン同様に恋愛に向いてない面構えな平田満の下りはまずまずとして、今回は赤門にいる二代目おいちゃんこと松村達雄は少ない見せ場ながらも妙な存在感を発揮していて良かった。

鑑賞日:2022/10/20 監督:山田洋次


カルメンという名の女

カルメンを現代に置き換えてるって言うんだからそうなんだろう。そんな事より、剛毛祭りに男子トイレ使用などの強烈描写のオンパレードで、結構メモしたいレベルな数多の台詞も全然頭に入ってこない。おまけに波間に現れる岩にまで何やらエロスを感じる様になる。ぶった斬る弦楽四重奏を始めとした音楽、海の音などの処理がなんかスゲーやって感じなんだけど、それ以上にブラウン管の砂嵐とトム・ウェイツのとこが良過ぎて震える。と、白痴もしくは錯乱演技が上手過ぎなゴダール。

鑑賞日:2022/10/17 監督:ジャン=リュック・ゴダール


夜の訪問者

爽やかにデッキシューズを履きこなし、フレンチなチャールズ・ブロンソン。倒した筈なのに蘇る、からの殆ど全員自爆で逆に面白い。30分で病院→迫力のカーチェイスで散々飛ばして5時過ぎってのはどう云う事よ。微妙に盛り上がらない作品ながら、陸の巴里祭の花火と共に片付けるラストはなかなか。

鑑賞日:2022/10/16 監督:テレンス・ヤング


1978年、冬。

1978年、冬。

未だ文革の名残りの濃い街って事で結構な閉鎖空間。灰色の空と荒野に生えるのは工場の土地柄で線路のそれを含むルーチンの数々に対してのイレギュラー案件がきちっと揃った具合。若い2人がくっつく下りやこの街を抜け出すからの無言の帰還、ラマン的な見送り等々のベタなのが多い一方で、1979年の1人でも相変わらず工事に寄るのとかハートの出し方なんかは絶妙。外の世界から届く放送に心ときめかす時代から、良くも悪くも随分とデカくなったお隣さんのポテンシャルは普通に凄い。ジャ・ジャンクー作品で描かれるところによると、山西省の辺りは2000年くらいでも変わってないのかもしれんけど。ファントゥに来る日もマントゥ/饅頭(たまに餃子が出る)で飯テロ映画。

鑑賞日:2022/10/14 監督:リー・チーシアン


時代屋の女房2

数年間に何度も挫折した末にようやく。夏目雅子ならギリギリオッケーなのに名取裕子だとイラッと来るのは何故なんだぜ。大人になってもみんな迷ってるテーマはきちんとやってる気はするものの、森崎東らしくない前作よりも更にモヤモヤした印象。渡瀬恒久の何やら尖った得体のしれない何かが時代屋に魅力を添えていたのであって、古谷一行はなんか違うってのがハッキリした具合。

鑑賞日:2022/10/13 監督:長尾啓司


軽蔑

20年振りくらい。幸福度マックスのトリコロールカラーのOPからしてニクイ。B.B.の軽蔑発動から1シーンごとにドツボにハマるミシェル・ピコリな訳だけど、哀しいかな脚本のユリシーズのとこで答え合わせしてるって云う人生上手く行かない感。全ては愛から始まっていても何やっても駄目な時があるあるなアンナ・カリーナがチラつく男(ゴダール)の苦悩と、拝金主義な映画産業へ傾倒する苦悩とで満ちていている。それらを打ち消すかの如く、舞台裏を含みつつこれでもかと芸術的にした全てのシーン、真の映画人としてのフリッツ・ラングの起用に非の付け所のない見事なB.B.のSiri描写とでやっぱりスゴいな、ゴダール。

鑑賞日:2022/10/11 監督:ジャン=リュック・ゴダール(ハンス・リュカス)


フェリスはある朝突然に

何も考えずにジョンの誕生日に鑑賞。これは映画ですからって事でミラクルご都合主義と鬼編集で'86年にしてホーム・アローン感満載。シカゴのダーティーさは微塵も出さない徹底っぷりも見事。あの感じのアメリカン部屋に憧れた。

鑑賞日:2022/10/09 監督:ジョン・ヒューズ


続・世界残酷物語

のっけでイギリスを煽ってて面白。ヤラセの数々に混じってピリリと本気っぽい映像とコメントを入れてくる。全体的にテンポが良くなった上にヤバイ奴と現象が増してる気はするけど、一作目だけで良いかなって気もしなくはない。で、フラミンゴのとこはジャングル大帝の元ネタか? 時折レイモンド・スコットっぽいお茶目なサウンドなモンドな劇伴最高。

鑑賞日:2022/10/06 監督:グァルティエロ・ヤコペッティ


さらば愛しき人よ

さらば愛しき人よ

これがあのコーンブレッドかって云うパワーワード。スターオーラ全開な主役郷ひろみに後の『タフ』面子、先日久々に観た『ふぞろいの林檎たち III』の夫婦役の2人で我が家的に超混乱する。で、前年には音無響子で絶頂期な石原真理子。おまけに次から次へと出てくる特別出演枠が豪華過ぎ。『さらば映画の友よ~』で既に完成形な原田眞人のバイオレンス描写のクオリティの高さは言うまでもない感じに80年代感が絡んで癖になる。どの作品も共通するけども、今作もいちいち粋な演出にどれもイケてるロケーション、カッコイイ構図の数々、CTスキャンのとこなんかのエフェクト等々とで飽きるとこがない。日本にあって南軍国旗とトム・ソーヤー話が全然不自然な感じしないから凄いわ。銃を棄てる→セピア色と涙とで超救われんけどイイ話。

鑑賞日:2022/10/05 監督:原田眞人


都会の横顔

都会の横顔

昼の銀座通りのOPから夜のEDまで全盛期の銀座な具合。交差するアヴェニューを縦横無尽に切り取る清水宏監督で、確かに他の作品同様に道へのこだわりを感じる。たらい回されつつも冷静なみちこちゃんに対して、池部良ほか大人はオタオタする図式が徹底していてなかなか。都会の華やかさとは裏腹に森繁、伴淳ほか登場キャラそれぞれのコンプレックス、街の側面をほのかに感じさせる塩梅が良い。中でも事情が重すぎな木暮実千代は普通にアウトなんだけど、クリームソーダは同情する。靴磨きスタイルの有馬稲子可愛い過ぎ。

鑑賞日:2022/10/04 監督:清水宏


昼顔

15年振りくらい。ドヌーブ様の愛されたい私が事の発端なものの、全部ミシェル・ピコリが無駄に背中押してる感じで面白い。不感症妻の夜ならぬお昼の仮面の殆ど昼ドラみたいな筋でありながら、夫への罪悪感からなる夢、心理描写の混在がまぁ見事。馬車に乗ってのOPから無人のEDでスッキリ出来過ぎ。しょうもないピエール・クレマンティのパートもなんだかんだで結構好き。

鑑賞日:2022/10/03 監督:ルイス・ブニュエル


北斎漫画

エロ可愛い樋口可南子と田中裕子をひたすら堪能する映画だわな。触手のとこの描写がたまらん。胸毛マックスな緒形北斎に西田馬琴の四人を中心に新藤組も勢揃いなんだけど、近代映画協会のソレとは違ってなんとなく松竹的雰囲気に包まれている。乙羽信子に殿山泰ちゃんをはじめとしてフランキー堺に宍戸錠等々と色々出てはいるものの、ちと物足りない。キモい特殊メイクといまいち盛り上がらない筋(執念のとこは痛いほど良く分かる)は置いといて、映像的には超永久保存版。

鑑賞日:2022/10/02 監督:新藤兼人