Films: Apr.2019『ざくろの色』ほか
May,02 2019 12:30
イギリスはイーブリン・ウォーの名著『ブライヅヘッドふたたび』を読みつつ、ジェレミー・アイアンズ主演の'81年版のTVシリーズやらで映画は少なめ。
長年見たかったセルゲイ・パラジャーノフの『ざくろの色』はアルメニアもの特有の意味不明さながらも、中東感が極まる極彩色な映像、音、演出に釘付けになる。
もはや自分の中でほとんどハズレのないジョン・ヒューストンの『黄金』はボギーの意外性のある役柄もプラスして安定の傑作。
勅使河原宏監督の'89年作の『利休』の三國連太郎と山崎努の茶室の戦いは流石としか言いようがない。
なんだかんだで一番面白かったのは『毒薬と老嬢』だった気はする4月。
やっぱり凄いな、フランク・キャプラ。
観た映画: 2019年4月
映画本数: 14本
情愛と友情
原作を読んでるついでに'81年版のTVシリーズを再鑑賞中。で、何となく勢いで本作に手を出してみる。残念と云うかやっぱりと云うか、かなり筋が強引かつスピーディーでノスタルジア感は皆無。英国的な含みのあるやり取りも無く、一つの灯火への過程も乏しい軽い感じのメロドラマに成り下がっている印象。きっちり話を踏襲しているTV版でジェレミー・アイアンズとジェフリー・バーゴンのあのテーマが流れないとしっくり来ない身体になってしまっている。まずまず。
鑑賞日:2019/04/30 監督:ジュリアン・ジャロルド
毒薬と老嬢
突撃〜。狂人と奇声と二度見がわんさか出てくる超ブラックなコメディ。突撃〜。異常なテンションで突き進みつつも、布石の置き所やら影の構図等々しっかり締めて来ている流石なフランク・キャプラ。突撃〜。ぶっ壊れた過ぎなケイリー・グラント。突撃〜。最高。
鑑賞日:2019/04/28 監督:フランク・キャプラ
利休
今も昔もわび・さびの美意識を持つ人なんか少ないのは街を見渡せば良く分かる(寧ろどんどん酷くなってるか)。おびただしい下品さの中にあるからこそ、品の良さが映えるって面もあるとは思うけど。そんなそれらを具現化した様な三國利休と山崎秀吉の茶室の小宇宙での問答はまさに息を呑むってのが表現がしっくりくる。表面の静と内面の動がビリビリと伝わってくる流石の勅使河原演出。そしてアンビエントなのから時折グリーンスリーブスっぽくなる武満徹サウンドも安定のクオリティ。山口小夜子の淀殿は美女過ぎて敵なしな感じ。取り敢えず『叶うはよし、叶いたがるは悪しし』を肝に銘じておこう。
鑑賞日:2019/04/27 監督:勅使河原宏
光をくれた人
先の2作品に比べるといささか弱い気もしなくはない。それでも赦しなさいとレイチェル・ワイズに怒られそうだけど(いや、寧ろ怒られたい)。自己犠牲の精神に文明的な光ってのは分かるけども、展開含めて雑な印象なのが残念。予告でハードルを上げ過ぎた感じ。マイケル・ファスベンダーはブタ箱でハンストしてる風が良く似合うね。
鑑賞日:2019/04/23 監督:デレク・シアンフランス
メフィストの誘い
ふむふむ、カトリーヌ・ドヌーブはメフィストフェレスを凌駕すると...良く分からんけれども。堕落への道も人によっちゃ結構遠かったりするのかね。なんにせよ、ドアバンだけで表現される夫婦バトルは映画史に刻まれるレベル。
鑑賞日:2019/04/21 監督:マノエル・ド・オリヴェイラ
ブロンド少女は過激に美しく
世界の全ての苦悩、不幸は優しさから生まれるとの事。分かるような分からんような...でもそんな気もしないでもない。優しさを与えて破滅し、優しさを与えられても破滅するおじさん。盲目にならない様に注意したいものです。絵画的かつ静かな作品でなかなか。
鑑賞日:2019/04/18 監督:マノエル・ド・オリヴェイラ
ウディ・アレンの影と霧
久々。カフカの審判風でありつつも、しっかりとウディ・アレンになるってのは凄いねぇ。更には美しく幻想的で見事な霧具合(ストーリーも含む)。また、神ネタに自分の存在すら信じられない等々の名言が今作にもどっさりある。無駄に豪華な面子のミア・ファロー期の終わりの方のやつ。良作。
鑑賞日:2019/04/17 監督:ウディ・アレン
台北ストーリー
何故だか片岡義男のあの感じを思い出してしまった。アンニュイだねぇ。過去ほど厄介なものはなく、未来ほど不安定なものはない的な。万能薬のない'80年代の現在を悩みながら生きている、ほとんど大人な人々。上手くいかない事だらけな世界を照らすどぎついネオンで余計に増す白々しさが切ない。大体のシーンがビシッと決まってた印象。良かった。
鑑賞日:2019/04/10 監督:エドワード・ヤン
ブルーム・オブ・イエスタディ
4分間のピアニストの監督か。痛い感じでちょっと納得。やりすぎなくらいに穴のないお尻な人々が沢山出てくる。映画的にはありがちっぽい設定の詰め合わせな感じながらも、要所できっちりと上手い具合に締めている印象。暴力を超越したガンジーのほっかむりに爆発的にホッコリする。再生の種類も色々だよね。なかなか。
鑑賞日:2019/04/09 監督:クリス・クラウス
黄金
終わってみれば、欲深くみみっちい役柄である意味一番オイシイ所をさらった感のあるボギー。自分なら結構無理ゲーかもしれない、疑心暗鬼の渦中で品位を保つ難しさ。ジョン・ヒューストンの実父がドシンとセンターに構えつつ、若い二人が善悪に揺れ動く感じのバランスでとても安定感がある。己の行いは特大ブーメランで返ってくると云う教訓めいたお話で、品格漂う威風堂々みたいな劇伴のタイミングも絶妙。豪華な砂嵐だわな。傑作。
鑑賞日:2019/04/06 監督:ジョン・ヒューストン
LOUISE (TAKE2)
またオマエかと思ったらこっちの方が先だった。放浪者の鋼鉄メンタルとモンマルトルなド底辺の組み合わせ。サンサの方ではあまりの図々しさにドン引きだったけれども、周りが酷すぎて今作ではまともに見える。'90年代後半のベタな映像のテイストとリズムが我が青春感満載。うーん、移民大国。
鑑賞日:2019/04/04 監督:シグフリード
ざくろの色
グルジエフの作品群と云い、アルメニアのそれらの訳分からなさは異常。なんだけどもグルジエフ然り、妙なテンションと妙な説得力で畳み掛けてくる感じは嫌いじゃない。全編イコンの様な画面構成も四方に異文化に囲まれた地理的なものもあってか非常に独特なものがある。筋自体はシンプルだとは思うけれども、詰め込みまくる視覚情報と多種多様の音で混乱してくる感じ。その辺りの装飾要素で好きか嫌いかで問われるならば、圧倒的に大好物なんだけど。中東-ロシア間のこの辺りの食文化もマイブーム絶賛継続中なので、観ててちょっと腹減ってくる。
鑑賞日:2019/04/02 監督:セルゲイ・パラジャーノフ
去年の夏 突然に
ブーン。テネシー・ウィリアムズの描く発狂は胃に来る。戯曲がベースだからだろうけども、会話シーン中心で動きは少ない。ものの、いつの間にやらグイグイ引き込まれている。ホモセクシャルを筆頭に色んなタイプの色情とで真相も映画も混沌を極めて目が離せなくなる感じ。人類は大小それぞれに神の名のつづりを間違えていると。草食じゃ死ぬんだよ、肉喰え、肉...的などう猛な世界に今日も僕らは生きています。しかしエリザベス・テイラー可愛いなぁ。
鑑賞日:2019/04/01 監督:ジョセフ・L・マンキウィッツ
category: 映画レビュー
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