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第十七捕虜収容所

Films: Jul.2020『第十七捕虜収容所』ほか

Aug,01 2020 13:00

先月に引き続き成瀬巳喜男+高峰秀子もの多めの7月。
どの作品観ても安定のクオリティで安心して観ていられる。
こちらも安定、牛てんこ盛りなハワード・ホークス+ジョン・ウェイン、『赤い河』の世代交代感は時も場所も違うけども、後半に観た成瀬巳喜男の『流れる』と通ずるものがある。
エリア・カザン+スタインベック+マーロン・ブランドの『革命児サパタ』やスタンリー・クレイマー+グレゴリー・ペックの『渚にて』、更にはブニュエルの『ロビンソン漂流記』と文芸系も傑作揃い。
7月一番の異色作はようやく観られたデニス・ホッパー監督主演の『ラストムービー』。ハリウッドが与える悪影響でペルーの人々が暴徒と化すって話を鬼編集で異常な熱量と共によく分からんものに仕上げている。
カート・ヴォネガットの短編を読んでいたせいか、『第十七捕虜収容所』的なものが今月の気分には一番合っていた。戦争経験した世代だからこそ描けるユーモアとカッコイイをちゃんと理解しているビリー・ワイルダーとウィリアム・ホールデン。
なぜかイタリアのジッロ・ポンテコルヴォがアルジェリア戦争を描く『アルジェの戦い』は仁義なき戦いみたいなライブ感で釘付けになる。
そんな『アルジェの戦い』でも劇伴を担当しているエンニオ・モリコーネ(1928-2020)が永眠されたのも今月って事で、改めるまでもなくその名作の多さに感嘆し、影響を受け続けている。
そんな今日この頃。

観た映画: 2020年7月
映画本数: 27本

オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分

でっかい過ち以外は全力で正しくありたいと走る男。事態収拾電話のみならず、父親の亡霊とのやり取りまで始めて事故らないのは奇跡だわね。正しくある事への代償としてのいくつかの喪失とそれらに対しての誠実で正しい対処って事で、終わってみれば一筋の光明が残ってるみたいな妙な清々しさがある。瞬間的にブロンソンが出てくる感じの圧巻な演技のトム・ハーディでなかったら成立してたかどうか。疲労感がやばい。

鑑賞日:2020/07/31 監督:スティーヴン・ナイト


第十七捕虜収容所

丁度読んでいたカート・ヴォネガットの短編集のお陰で収容所における煙草通貨なんかの細かいネタや、恨みつらみなんかの事情がかなり助けになった。捕虜側が題材になった作品としてはスローターハウス5より随分前な今作。ナチでさえそこまで非道な描き方をせず、上質なコメディ要素で構築するビリー・ワイルダーの余裕ったらない。そしてスパイ解明までの上手さ。ダンスする捕虜達を縫う様に到達するカメラワークとか惚れ惚れする。散々な濡れ衣なヤングウィリアム・ホールデンの最後の畳み掛けるようなスッキリ感とキメて去る終わりとで全てにおいて抜かりない印象。OPから度々挿入され、ラストへと向かう『ジョニーが凱旋するとき』のチョイスも完璧。

鑑賞日:2020/07/30 監督:ビリー・ワイルダー


流れる

なんとまぁ自然の流れの如き映画な事か。柳橋は落ち目の置屋を淡々と映しているだけなのに固唾を飲む感じ。山田五十鈴を筆頭に失われ行く渦中を演じる女優陣が上手すぎる。特にグズつくデコちゃんを差し置いて、杉村春子のキャラが立ちまくる。そしてそれらを見守るかの様な田中絹代こと45歳梨花ちゃん(女中)の達観ぶりが実に見事。で、三毛のぽん子が置屋の子設定だけあってこれまた芸達者。衰退して行く者達、新しい時代を望む者達に関係なく時間はどんどん流れて行くと云う無常さと隅田川。

鑑賞日:2020/07/29 監督:成瀬巳喜男


血を吸うカメラ

黒水仙しかり後半の畳み掛けと画面に釘付けになる仕掛けが凄い。ビシッと合った効果音と映像、フォーカス係が盲の母ちゃんの触覚で暴かれるとか色々お洒落。病的動機からの出来過ぎな改造カメラも病的っぽくて良い。やめてェーって言いながらそこに突進してくるヒロインのアンナ・マッセイちゃんにナチュラルな恐怖を感じる。

鑑賞日:2020/07/28 監督:マイケル・パウエル


アルジェの戦い

植民地主義は抵抗されるってのはもはや必然だわな。フランス革命やナチスに何を学んだのかってくらいに支配される側の意志を汲み取らない。そんな自業自得な具合で、アルジェリア独立までの道程を静かにふつふつとし始める怒りから民衆の爆発まで異常な緊迫感でもって描く。モリコーネ劇伴然り、仁義なき戦いで鉄砲玉クラスが襲撃するシーンみたいな臨場感で無慈悲なテロ行為があれば、テロリストを建物ごと爆破する無慈悲さもありで途轍もない。中佐曰く、「サナダムシの頭を刈り取れば全てが解決する」と云う絶望的な思い違いで支配下における民衆の怒りを増幅させる愚かさ、これは今も昔もどこの国でも変わりなく未だに存在する。指導者不在の民衆から自然発生する蜂起の図が胸熱。

鑑賞日:2020/07/27 監督:ジッロ・ポンテコルヴォ


ラストムービー

ハリウッドが与える悪影響でペルーの人々が暴徒と化すって現地人を舐めまくった凄い話だな。サミュエル・フラー率いる撮影クルーが去り、現地に残ったが為に一人ハリウッドが残した影響の結果としてジーザスばりの受難に陥る羽目になるデニス・ホッパー。空間や行間が〜と劇中の曲の如く始まりから終わりまでクロスカッティング的な鬼編集で、狙い通りなのかなんなのかキッチリと訳分かんないモノに仕上がっている(劇中劇で綺麗に終わってるとは思うけど)。しかしながら各シーンの異常なお洒落さは流石。輪郭で分かりそうなピーター・フォンダは良く分からなかったのは置いといて、結構な熱量の作品で好きか嫌いかと言われたら、かなり好き。

鑑賞日:2020/07/26 監督:デニス・ホッパー


秋立ちぬ

子供が前面に出ることで浮き彫りになる大人達の軽薄さったらないな。動機が基本的にストレートな子供達とあれこれ入り混じってぐちゃぐちゃな大人。そして、夏の東京は銀座界隈の一時期、を軸としての人の入れ替わりとそれを象徴する橋ってのがまた絶妙。ドブ川レベルに臭い川や街と汚なさを美しさに変える思い出とを一緒に閉じ込めると云う、成瀬巳喜男監督の記憶の中の夏...じゃん。

鑑賞日:2020/07/25 監督:成瀬巳喜男


始皇帝暗殺

後のチャン・イーモウのやつと同じく思いっきり暗殺未遂ではある。出てくる人が全員色々と間違えるのだけど、それらを切り抜け、運的なものも一番持ってる奴が始皇帝と云う。そんなかんなでまさに王者なんだけども、代わりに得た孤独で疑心暗鬼が捗る哀れな人物像でもある。と並行して組み立てられる刺客誕生の物語で、基本的に序盤から当時の情勢やら風習の説明が後出し気味なので慣れるのに時間がかかるも、大義名分作りの策略あたりから歯車が狂い出しまくって面白くなる。まぁ荒俣先生にケチはつけられん。全然好きじゃないんだけど、スーっと表情変えるコン・リーはやっぱり上手いな、全然好きじゃないんだけど。劇伴TKと結構スペクタルな3時間でまだ日本が金持ってる風な時代感がある。

鑑賞日:2020/07/24 監督:チェン・カイコー


静かなる男

アメリカ帰りのジョン・ウェイン同様に現代人には尚更理解に苦しむ土着の精神。こっちの視点で見るとモーリン・オハラがしょーもない嫁に見えるんだけど、アイリッシュ的昔気質を大事にする健気な女性と見るととても可愛らしく見えてくる。地主と小作人、宗教対立にIRAなお国柄で美しい景観とは裏腹に何やらはけ口的な激しいものをみんな手ぐすね引いて待ち構えてる感じ。結構な物騒さを孕みながらも、臨床の老人まで起こす程の弾けまくったお祭り騒ぎまでに昇華させるジョン・フォード。凄すぎ。伝統はキチっと守ってこそと教え諭された様な具合。で、スイッチ入って嫁を引きずりながらのっしのっし歩くジョン・ウェインは男でも惚れる。

鑑賞日:2020/07/22 監督:ジョン・フォード


ヨコハマBJブルース

レイモンド・チャンドラー、エリオット・グールドってよりは松田優作だわね。要所に面白い演出はあるんだけど、クドくてクサい歌の上にハードゲイまで出てきて、ちょっとゴチャゴチャしている印象。舞台としての当時のヨコハマの雰囲気って事なんだろうけど。『長いお別れ』がやりたかったってだけあって、推理物としてはなかなか良く出来ていると思われる。終わってみれば、宇崎竜童のヘッドホン引っこ抜きのシーンが一番ビシッとしてた。

鑑賞日:2020/07/20 監督:工藤栄一


まともな男

ドイツのおっさんがあちこちで見せる弱さを執拗な程に付いてくる意地悪で悪魔的な脚本。最初から見事なくらいエサに食い付いてきて面白い。表面の正義と保身とで、ゴミ箱の下りまでグラグラと揺れ動くおっさん。しかし、おっさんに限らず、出てくる罪人達の己の身が危険に晒された時に発動する罪の意識の帳消し、これをやるのが要するにまともな人間って事で皮肉だねぇ。超楽しくないチーズフォンデュの会。

鑑賞日:2020/07/19 監督:ミヒャ・レヴィンスキー


卍 まんじ

まぁ、とりあえずマジ卍。脱ぎっぷりの良さは勿論として、擬似か真性か放尿まで披露する樋口可南子。だらしない体の高瀬春奈と実際の年齢差がそんななかったとの事で、それが一番衝撃だった。謎の面白撮影のみならず、原田芳雄によって増幅されるATG的な雰囲気のもと、なんなら混ざりたいくらい良い感じに倒錯してたと思われる。それはともかく、瞬間出演で脳に刻んでくる梅宮辰夫の存在感は凄いやね。音楽が良いと思ったら林光だった。

鑑賞日:2020/07/18 監督:横山博人


ロビンソン漂流記

原作を脳内変換しながらの気合いの英語字幕鑑賞。色々と端折りまくりながら、10000倍くらいのスピードで駆け抜ける28年間。若干学芸会チックなのは置いといて、何気にエンジョイしているサバイバル生活と要塞その他の再現とで結構楽しい。堕ちてからのピューリタンへの目覚めの肝な部分もしっかりしているかと思われる。孤独に対してのエコーのところとかは凄く良い。人食い土人の下りは結構マイルド。あの長い話を一時間半じゃ無理がある気もしなくはない。で、亀肉の魅力。

鑑賞日:2020/07/17 監督:ルイス・ブニュエル


カルメン純情す

日本初の総天然色映画からモノクロ落ちの続編ながら、躍動感が比べモンにならん(特に高峰秀子が)。大体不安定な斜め構図に奇抜なワイプに戦闘系音源のサンプリング、右左の翼とアヴァンギャルドな強烈なキャラ設定とやりたい放題。サンフランシスコ平和条約の混乱の渦中でメタメタにされるカルメンことデコチャンの弱者中の弱者な純情。踏みにじられる悲壮さを、時には着ぐるみ身に付けながら完璧な滑稽さで演じてくるから泣けまくる。で、淡島千景(政治家の娘役!)ん家のお母さんがまたヤバい。唐突なニュース映像風の第二部完と『カルメン何処へ行く』でその後がないって云う。

鑑賞日:2020/07/16 監督:木下恵介


草原の輝き

『草原の輝けるとき/花美しく咲きしとき/再びそは還らずとも嘆くなかれ/その奥に秘めたる力見出すべし』で完了しとる。はちきれんばかりで漏れそうなウォーレン・ベイティと豆腐メンタルなナタリー・ウッドの抑圧とセットな崩壊型な青春。主演の2人がロスト・ジェネレーションタイプでなく良い子同士ってのに由来する悲劇性だわな。それぞれの形勢が大きく変化する世界恐慌を跨ぐ時代に併せての激しくぶつかり、壊れまくる青春って事で割と層の厚い話になっていると思われる。現実直視のターンで『幸福かどうかは考えない』の台詞のやりとりが青春終了のお告げ過ぎて何より痛い。とにもかくにも出てくるアメリカン飯がどれも美味そうで戦争に勝てる気がしない。

鑑賞日:2020/07/15 監督:エリア・カザン


女の座

年寄りから若いのまで誰と話したら良いか分からないとの団令子の台詞よろしく、ややこしい度合いが結構なモンで。死んじゃいけない者から死ぬ事に嘆き、血の繋がった者達に嘆く笠智衆。昭和の大家族的なお家騒動感やアウェーでありつつ頂点のポジションに君臨するデコチャンってのが、先日観た『娘・妻・母』とゴッチャになるけれども、面白い事には変わりない。流石な演技力の抑制からの号泣と宝田明出現の瞬間から何か来そうな草笛光子とのピリピリ感がたまらん。

鑑賞日:2020/07/14 監督:成瀬巳喜男


渚にて

『兄弟たち、まだ時間はある』と警鐘を鳴らしまくる。海中から浮上して開放感と共に映画が始まるも、核戦争後の放射能汚染で北半球壊滅の南半球に接近間近と云う恐怖設定。当時の切迫した未来を描く作品を自国でやらかした現代から観る体。ほぼほぼ有限となってしまった世界の悲壮具合を「近頃は〜」の台詞や斜めフレーム等、あの手この手で演出されている。そして時間に限りが分かってしまった時に人はどの様に過ごすのかの日常生活を静かに色んな角度から描いている...ちょっと無駄なシーンがなくもないけど。それでも各人のその時の迎え方のそれぞれに結構胸が熱くなるものがあって、ちょっと泣きそうになる。多分今までに見た事ないくらいに絶望的なコーラの瓶が出現。

鑑賞日:2020/07/13 監督:スタンリー・クレイマー


リバティーン

公開時以来。イザヤ書53章を体現してみせた男、ロチェスター伯爵2世の物語。天性の才能であらゆるやらかしを放ちつつ、放蕩し闇落ちする姿を怪演するジョニー・デップはイケメン(前半限定)だわな。現実世界の有様から違和感を覚え、芸術の中にしか美を見出せないやら、堕ちないと光を認識できなかったり、満たされないが故の過激さやらでかなり不器用な人物ではある。得てしてそう云う不器用さを好きな人は多いんじゃないかしら。そして最後に流れるのが、マイケル・ナイマンの『if』って事で良く出来てる。フサフサ+付鼻マルコビッチは言われなきゃ分からないレベル。

鑑賞日:2020/07/12 監督:ローレンス・ダンモア


カルメン故郷に帰る

このところ読んでる高峰秀子の本の中でお気に入りの役だと云う事で鑑賞。日本初の総天然色作品だそうで。しかも気合いのデジタルリマスターのお陰かデコチャンの真っ赤な衣装が目に突き刺さる。で、浅間山は山麓の村に錦を飾るべく東京からやってくるヤバい程にはじけた娘を上手い事演じていらっしゃる。現代から見るとショボい事この上ないんだけど、当時にしてみたらセンセーショナル不可避だったと思われる。ざわつきまくる村人も含めて、何か敗戦国の侘しさを感ぜずにはいられない。おまけに佐野周二のオルガンがまた暗い事。いつもより2割り増しくらいなテンションの笠智衆が凄い存在感。

鑑賞日:2020/07/11 監督:木下恵介


革命児サパタ

革命児サパタ

全人類の良心になんかなりたくないと言いつつ、農民の権利の為に戦う男サパタ。逆メザイク気なマーロン・ブランドのお洒落な登場シーンからラストの集中砲火まで結構見応えがある。スタインベックが脚本に名を連ねている事もあってか、戦闘云々よりは『民衆が強ければ強い指導者はいらない』の芯の野太い筋になっている。でありつつも、シミュレーションゲーム的には徳の値が余裕の100越えでジーザスも真っ青なレベルの伝説の指導者描写で凄い。つまりはこう云うのが本物の指導者像って事で納得。教えを諭す指導者マーロン・ブランドのパピーとの戯れるほっこりシーンからのクソ可愛いジーン・ピータース振り落としの穏→厳の変化がまた凄い。

鑑賞日:2020/07/09 監督:エリア・カザン


私は告白する

劇中の人々が真相に辿り着くのを神の視点から眺める感じ。苦悩する姿もイケメンなモンゴメリー・クリフト。聖職をひたすら全うする姿でまたイケメン度が増すのだけれど、要所で法衣をかなぐり捨てたろかって云うのやら、口程にもの言う目とか、よこしまな心が見え隠れするのがまたイイ。で、内容はと云うと、ドイツへの厳しさを醸し出しつつ、ガチガチに周りを固めて行く筋は良く出来ているとは思うけど、回想のところはもうちょいどーにかならなかったのかな。カメオはどこかしらと構えてたら早々でした。

鑑賞日:2020/07/08 監督:アルフレッド・ヒッチコック


悦楽

何か既視感があると思ったら観てた。瞬間加賀まりこの差し替え演出にどえらい構図のオンパレード、更には湯浅譲二で嫌味なくらいに前衛的。買った女のランクがその度に下がってる様でいて、実は逆っぽい、もしくはタイプ別の絶妙な配置。寓話+雰囲気エロスな感じで、以前よりは楽しく鑑賞。加賀まりこは蚊帳の外として、あの中なら野川由美子一択で。

鑑賞日:2020/07/07 監督:大島渚


Mr.BOO!ギャンブル大将

制作順では一作目だそうで。OPのキャッチーなテーマから謎フォーカスに謎ズーム、ぼやきの際の謎効果音と結構良いところ尽くしな気がするのに、話と云うかギャグがびっくりする程つまらない。しかしワニクイズとかラストに突然挿入されて流しそうになる裸族とか無駄に記憶に刻み付けられる感じ。冷静に考えるとそんな悪くなかったって事なのか。

鑑賞日:2020/07/06 監督:マイケル・ホイ


赤い河

また牛肉か〜と云う台詞を吐き捨ててみたい。私刑を嫌うモンゴメリー・クリフトも自分で殺して弔い聖書を読むジョン・ウェインも分かりやすいかにくいかの違いだけで、善の部分で大差はない。背負うものが多い故の厳しさってのを若い方もキチンと分かりつつ、若さ故の激情で状況を変えてしまうと云う映画的には実にオイシイ展開。中年が見せる人生における大目的への執念で若さのケツを追いまくるからこその結末で、ゲンコツと共にその不器用とも言える世代交代の図が痺れる。で、『ナイフを突きつけられた』心の若者には同じ轍を踏ませないジョン・ウェインはどこまで漢なのか。まさにカウボーイ映画。

鑑賞日:2020/07/05 監督:ハワード・ホークス


グッバイ、サマー

何もかも忘却の彼方な己れの青春が悲しいので、願わくば逆回転したいところ。一呼吸置いて30年後の未来に後悔しない選択ができるってのは実に幸福な事なんだな。で、染まらないがまた更に大事。少年の友情が世に沢山あれども、画廊の下りは大人でもあんな気の効いた事はできんので尊敬するわ。指標ともなる友を得て、美少年の転換期の中途半端な時期を落武者スタイルで表現するってのも冴えてる。何でもできそうでいても大人には"まだ"抗えない無念なラストもピリッとして上手。にしても、なまいきシャルロット気なローラちゃんが可愛い過ぎ...無限。あー、車輪付きタイニーハウスで旅立ちたい。

鑑賞日:2020/07/03 監督:ミシェル・ゴンドリー


モン・パリ

オチをブン投げても程々に満足させるジャック・ドゥミはある意味凄い。で、OPからガッチリ掴んでくるミシェル・ルグラン+ミレイユ・マチュー。医者辞めた方が良いレベルの誤診から始まり、イレギュラーな事態へのみんなの適応から何まで超適当で、あぁラテンな国なんだなと。if...もしもなあれこれをあーでもないこーでもないを楽しむのは結構大事かもしれん。劇中殆どマタギみたいなあらゆるポワポワを華麗に着こなす流石なドヌーヴ。原題カッコいい。

鑑賞日:2020/07/02 監督:ジャック・ドゥミ


トゥ・ヘル

定期的にニコラス・ケイジが見たくなる現象故に鑑賞。ツイン・ピークスみたいなバダラメンティ劇伴に乗せて、冒頭から斜め上方向に進みっぱなしでア然とする。幽体離脱を起こす設定からしてもの凄い馬鹿っぽくて...超好き。で、勢いつけて90分が限界みたいな数々のクソ設定の中、全てを己のものとするニコラス・ケイジ。エロ作文やら乱心スイッチが入るところとかもはやアルチザンの域。特殊能力のお母さんはどっかで見たと思ったら『ラン・ローラ・ラン』だった。

鑑賞日:2020/07/01 監督:マリア・プレラ