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ストーリー・オブ・マイライフ / わたしの若草物語

Films: Oct.2020『ストーリー・オブ・マイライフ / わたしの若草物語』ほか

Nov,02 2020 15:30

本数が少ないながら、10月も結構な傑作の数々(タイトル長めなのが多い)に巡り会えた印象。
去年末くらいから過去の映画化作品にアニメ版、原作と気合いのコンプリートで備えてようやくの鑑賞の『ストーリー・オブ・マイライフ / わたしの若草物語』。諸々のエピソードが早巻きを迫られつつも、より作者に寄り添ったジョー目線な構成で過去の作品群とは決定的に異なるクオリティに作り上げたグレタ・ガーウィグ。とても素晴らしかったけれども、欲を言えばもっと長尺なグレタ版若草物語を観たかった気もする。
で、やっぱりグレタ・ガーウィグと云えば、今月の顔アイコンにもしてるダッシュの横からの図よね。

10月は'90年辺りの懐かしき単館ものな雰囲気の作品も多かった。目立つ所としては、ポール・オースター監督『ルル・オン・ザ・ブリッジ』やトニー・リチャードソン監督の『ホテル・ニューハンプシャー』、更にはジャン・ヴィゴ監督作品とロマーヌ・ボーランジェが出ている伝記のやつも、何やらあの時代の空気が蘇ってくる様。

そして絶賛継続中の木下恵介祭り。どれもこれも素晴らしいのは勿論の事で、その中でも特に『日本の悲劇』は多彩なテクニックを駆使して我が国の記憶をえぐり出すかの様な異常な熱量を感じる。
名匠つながりでこちらも定期的に欲するレオーネ+モリコーネの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』。カッコいいの全てが詰まっていると言っても過言ではない。リアルに画面のこちら側まで緊張させる凄さ。
更にはやっぱり名匠のビリー・ワイルダー監督『サンセット大通り』。月の最後にどえらいモンを観たって感じ。ツイン・ピークスのゴードン・コールの元ネタとの事。

その他、全く期待しないで観たブレイク・エドワーズ監督『テン / 10』やハズレのないフリッツ・ラング監督『死刑執行人もまた死す』などの傑作群、それらに加えて数年前にオスカー・ワイルドの原作を読んでからずっと観たかったヘルムート・バーガー版の『ドリアン・グレイ / 美しき肖像』もようやく鑑賞。時代を置き換えつつも結構良い感じに仕上がっている。と云うかヘルムート・バーガーがいるだけで成立する。

そんな10月。

観た映画: 2020年10月
映画本数: 25本

サンセット大通り

ハリウッドの闇って事で往年の各人ほとんど地で体張ってる(亡霊)感が凄い。殆ど狂人扱いしながらも、スポット一つで女優のかつての栄光を蘇らせ、鑑賞者にただの狂人じゃないと分からせるビリー・ワイルダー。凄過ぎ。鏡やらカメラの先のグロリア・スワンソンも然り。こっち来んなって云うラストのアレはトラウマ級だわね。味を知り降りられない老女と降りる決意をした若者。金じゃねぇ、野心なんだよも狂気で破滅に追いやる、まさにハリウッドの闇。ツイン・ピークスのリンチのゴードンの役はこっから来てるのね。傑作。

鑑賞日:2020/10/31 監督:ビリー・ワイルダー


善魔

三國連太郎は立派です(震)。役名=デビュー作からって事でへぇー。とりあえずいきり立ち過ぎ滑舌悪過ぎて何言ってるか分かんない。で、飲み屋の善魔の下りがいまいちピンと来ないんだけど、死体にも想いを貫く程のピュア男の狂気にはマジかなわんって事なんだろう。偶然偶然〜って云う出来過ぎなプロットはともかくとして、森雅之が愛人を追い返す下りの緊張感は異常でこう云うの木下恵介は上手いねぇ。やたら美しい淡島千景と森雅之の何か慎重深く青春を浪費した無惨な中年が若者の衝動、エネルギーにやられて余計惨めな感じになるのを見てこっちも何かショボんとなるな。桂木洋子はいつも病人のイメージ。みんな揃って火鉢に手を当てるのはみんな寂しくて凍てんだね。

鑑賞日:2020/10/29 監督:木下恵介


老人と海

雑コラみたいな酷い映像でも、キッチリと原作に忠実なので余裕で脳内補完可能。人生の中で弧を描く様に訪れる運の悪い時と良い時、でもってツキが回ってきてここぞとばかりに頑張っても必ずしも上手く行く訳ではない。厳しい自然(時々優しく)と常に厳しさと共にある人生(時々優しい)の中でプライドを失わずに生きていくとはこう云う事だとヘミングウェイ先生に叩きつけられる様。柔和さと戦う男を演じ分けるスペンサー・トレイシーがとても良い。

鑑賞日:2020/10/28 監督:ジョン・スタージェス


Dr.Tと女たち

うるせぇー。OPの混沌からの、ロバート・アルトマン的な散漫さで積み上げて積み上げての結婚式の凄まじい混沌へって事で上手過ぎる。女性を理解してる風で肝心なところが駄目なリチャード・ギアのこのヌケ感ある愛されキャラ設定もまた上手い。で、映倫どーなってんのと云うあのラスト。良い面駄目な面と色々ありつつも、女性を賛美せざるを得ないってのは結構分かる。

鑑賞日:2020/10/27 監督:ロバート・アルトマン


郵便配達は二度ベルを鳴らす

原作読んでないんだけども、ヴィスコンティのやつは裁判なんて出てきたっけかな? おまけに無理矢理なタイトルの説明もしてなかった気がする。ジャック・ニコルソンのは観たのが遠い昔過ぎて忘れちゃった。軌道修正する機会を逃しまくるって筋は大体どれも一緒だと思うんだけども、いかんせんテンポが悪い気もしなくはない。ルージュの小道具使いとエコー演出はなかなか。

鑑賞日:2020/10/26 監督:テイ・ガーネット


ドリアン・グレイ / 美しき肖像

ずっと観たかったやつ。60年代に置き変えられつつも、大体のところ原作通りと思われる。ロンドンが舞台ながら完全なるイタリアン・ホラー的雰囲気でサイケやラウンジミュージックがガンガンに流れるけれども、寧ろそれがイイ。肖像画の有様に困り果てつつ、今までの悪行に対しての贖罪って辺りの話が適当だった気もするけど、へルムート ・バーガーが局部隠して立ち尽くすと云う出来過ぎな絵面だけで成立しているんじゃないかと。

鑑賞日:2020/10/25 監督:マッシモ・ダラマーノ


日本の悲劇

戦後の物騒な感じから始まり、もがく程に負のスパイラルにはまる。子供を食わせる為にはあらゆる事をしなくてはいけないし、親を恥に思う子供の方は人生の軌道修正するには非情もやむなしと、母子双方が時代に狂わされると云う戦争が生んだ悲劇以外の何ものでもない。グザヴィエ・ドランのマイ・マザーどころじゃない母子の軋轢は全方向が悲惨で埋め尽くされたカオスな具合で目も当てられない。これが我が国の記憶かと。えぐりだすかの様に描かれるそれらの悲劇をフラッシュバックに無音に多彩なアフレコ演出にとを駆使して、もの凄い作品に仕上げたもの凄い木下恵介。で、もの凄い望月優子。

鑑賞日:2020/10/24 監督:木下恵介


ダンス・ウィズ・ウルブズ

全盛期なケビン・コスナーで公開時に母ちゃんと観に行ったやつ。CGの時代になる前の金かかった感じのハリウッドのスケールは結構好き。ロビンソン・クルーソーをそのままやった感じの序盤から良い形の異文化交流と悪い形がバランス良く描かれている。そして交流には適性の有無も必要と云う難しさも浮き彫りにする。カッコいい感じに聞こえる開拓者精神と云う言葉の裏側にあるアメリカ様の姿。どの民族がと云うより良心を持ち合わせない馬鹿者が多過ぎるのが問題であったりもする。メインどころのバッファローの下りは見事なのは間違いないけど、どれがニール・ヤングん家のやつかは分からん。ジャーキーのシーンは近所の野良ニャンコ思い出してほっこりしまくる。簡単なモチーフから成るジョン・バリーのスコアも素晴らしかった。

鑑賞日:2020/10/23 監督:ケヴィン・コスナー


ステップフォード・ワイフ

大体似たようなもんだと思うけれども、75年版の方がショッキングで胃に来る感じ。結構序盤から出て来る、ヴヴヴ...ネタが見られるだけで満足と言えば満足。フェミニズムがーとか資本主義がーのあれやこれを別の次元に吹っ飛ばす、クリストファー・ウォーケン(首)が一番面白かった。ヴィゴTもなかなか。

鑑賞日:2020/10/21 監督:フランク・オズ


潜行者

前半の30分くらいの主観映像から整形して顔が長くなった(震)ボギーから目線が切り替わるってのはなかなか面白い。妖艶な雰囲気を醸し出しつつボギーに肩入れしまくるローレン・バコールがなんか怪しいと思いきや、何の捻りもなく終わる上に結構雑な印象も否めない。逃亡の果てに2人良い感じで終わってめでたしめでたしの時には立派な殺人者になっていると云う...。

鑑賞日:2020/10/20 監督:デルマー・デイヴィス


喜びも悲しみも幾歳月

同年の『風前の灯』との落差が凄い。全国の灯台を転々とした灯台守夫婦の25年間って事で全体としては昭和で大船って感じの妙な健全さがある。ものの、今ならWi-Fi無しのAmazonが来ない辺境の地みたいなところに従事しなきゃいけない上に戦争を含めた結構重めな苦労に見舞われまくる。そんな中でチラッとグチる高峰秀子の非国民発言が慎ましく暮らす小市民の叫びの様でこの作品の肝でもある気もする。苦労があるからこそ、弧を描いて訪れる喜びもまたひとしおって事でちょっと長いけれども強制的に刷り込まれる主題歌と共に良かった。...にしても、『風前の灯』との落差が凄い。

鑑賞日:2020/10/19 監督:木下恵介


死刑執行人もまた死す

なんつー影使い。戦中にアメリカ撮影のプロパガンダっぽいけど良く出来てる。拾えよ?的なやつとかきっちりナチスのイメージを植え付けつつも、謎解きで思わず感情移入してしまうドイツ側警部の設定とか映画的に上手過ぎるな。人質の命を弄ぶナチスに対してのプラハ市民の団結と筋書きのスッキリ具合、市民が担ぎ出した生贄と結局は隠滅される人質とで後味悪くもある戦争が生む人の行いの恐ろしさ、多面的に描かれているこれらでより映画の深みが増している感じ。不屈の"NOT The
End"でチェコ人の脳内で常に再生されてそうなモルダウ感。素晴らしい。

鑑賞日:2020/10/17 監督:フリッツ・ラング


ホテル・ニューハンプシャー

ホテル・ニューハンプシャー

うーん、"Life is fairy
tale"。とにかく人とワンコに熊にと死にまくり、夢は挫折に挫折を重ね、人生で起きるあれこれが凝縮されている。かなりキツい事だらけなのに実にカラッとしているのも、お伽話ですからって事で麻痺レベルで前向きなのが寧ろイイ。クマ子ことナスターシャ・キンスキーを完全に凌駕したぽよんとしたジョディ・フォスターの魅力のあれこれだけでも充分満足できる。思わずオウフッとなるベロっとするシーンの破壊力。想いを秘めた長距離走者の孤独よろしくな弟と姉の積年の夢が実を結ぶ下りの開放感(放出量)が異常。良かった。

鑑賞日:2020/10/15 監督:トニー・リチャードソン


ボー・ジェスト

ブルーウォーターと言われると情報結晶体のアレを思い出しちゃう。一応、ミステリー上のキーアイテムではあるものの、何やら凄い力が込められているとかではない。序盤の砦で展開される異常空間から始まり、中〜終盤にかけての怒涛の伏線回収で脳がかなり気持ち良い感じになる事確実。兵士としてはやり手なゴミ軍曹への叛乱と宝石の辿る道筋とを綺麗に絡み合わせながら、兄弟達が目の当たりにする兵隊の理想と現実。その渦中において高潔さを失わずに生きるって事で素晴らしい。

鑑賞日:2020/10/13 監督:ウィリアム・A・ウェルマン


テン / 10

日本で云うところの八大+六輔みたいな。無理がきかないのに若いつもりで幻想に猛進するミドルエイジのおじさんの胸中がビンビンに伝わってくる。序盤の婆ちゃんあたりから実に良いテンポで挿入される滑稽さ、からのボレロ使いは『愛と哀しみのボレロ』のラストのアレに匹敵するな。ヘンリー・マンシーニの手がける所謂"エレベーターミュージック"的音楽の古臭いor良いものは良いの論争とジェネレーションギャップの実感から味を獲得する40代って事でかなりグッとくる。で最後はジュリー・アンドリュースの貫禄に屈すると。デュエットのシーンがもうマジ泣き寸前だった。子供心に植え付けられた気がする70年代のマンダムな雰囲気への憧れと共にとても良かった。点数は10段階の11点で。

鑑賞日:2020/10/12 監督:ブレイク・エドワーズ


女の園

お規則、お規則、お規則に反抗する者はアカ呼ばわりと50年代っぽい。根強く残る封建的な女性への抑圧に対して声をあげにくい時代でありつつも、流れは自由主義の時代。なかなか複雑な時代背景を扱いつつ、切り取る風景や人間のやり取り、蜂起の舞台が古都などなど木下恵介の上手いところだらけで面白くはあるけれども、いかんせん全編に渡って暗すぎる。そんな暗さを一人で引き受けたと言っても過言ではない、劇中ほとんど神経衰弱なデコ様のメンタル瓦解シーンはリアルにブチっと何かが切れる音が聞こえてくるレベルで流石。どうせなら高峰三枝子様vs久我美子様じゃなくてW高峰バトルが見たかった。岸惠子様は大変麗しゅうございました。未だ残る日本社会の悪いところを目の当たりにする様な作品。

鑑賞日:2020/10/11 監督:木下恵介


ヴィゴ カメラの前の情事

とりあえず17歳くらいの頃に好き過ぎだったロマーヌ・ボーランジェが見たくて。バィ〜んとした全盛期でどのシーンも可愛いけども、特に水中のやつは美しい。30年代によくある感じの魔の山フィーリングから始まってのジャン・ヴィゴのまさに映画人的な半生。結核とアナーキーな父親の血に苦しみながらも、しっかり血は受け継いでいると。病床で映画を作る図がアマデウスのモーツァルトとサリエリに見えてくる。最初の2本も一緒に観て、身を削りまくったクオリティの高さに納得。アンニュイさと悲劇と大袈裟な90年代のフランス映画感満載で嫌いではないんだけど、英語ってのは謎。

鑑賞日:2020/10/10 監督:ジュリアン・テンプル


新学期・操行ゼロ

これは検閲通りませんな。子供を描いていながらも完全に父親の血を継いだ形で超アナーキー。トリュフォー等々の後の世代への影響力を感じまくる。枕投げのシーンのスローが美しい。英語字幕が速すぎ。

鑑賞日:2020/10/10 監督:ジャン・ヴィゴ


ニースについて

ニースにおける富裕層への皮肉と庶民に対するじんわりした眼差しの様なあれこれが描きだされる。これで90年前かってくらいの編集力とアイデアに溢れており、面白いものってのはツールじゃないと再認識する。踊り狂うモガール達にスプリング・ブレーカーズが見えた。

鑑賞日:2020/10/10 監督:ジャン・ヴィゴ


ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト

構図にタイミングに追求されたカッコいいに全てが効果的かつ完璧過ぎて星10個でも足りないくらい。音と無音とズームと引きとで緩急の異常な精度の高さな上に音抜けの挿入の余裕さえ見せるレオーネ+モリコーネ。あまり緊迫感で否応なしに画面のこっち側でも固唾を呑みまくる。素晴らしい。

鑑賞日:2020/10/09 監督:セルジオ・レオーネ


ダスティン・ホフマンの 100万$大捜査線

OPにサントラにこの60年代の小洒落たイタリアな(アメリカが混じってるけど)雰囲気は大好きなんだけど、滑りまくりなダスティン・ホフマンの黒歴史感が凄い。出来の悪さに序盤はキツかったものの、段々とどうでも良くなって適当に観ていると、終わってみれば何となく面白かった気もしなくもない。

鑑賞日:2020/10/07 監督:スタンリー・ブレガ


麻雀放浪記

麻雀のルール全く分からんので何が起きているか分からんけど、何やら一世一代の大勝負やってる事は分かる。オラオラの鹿賀丈史だから許される大竹しのぶへの「コイツはオレの為に生きなきゃいけねぇ」と無慈悲な台詞、ここに多くを投げ打って博打に取り憑かれた人間のギリギリ感が良く表されている。全く共感できないけど。和田誠がモノクロで描き出した東西南北、上中下と見渡す限り惨めで一寸先は闇な戦後のあれこれは臭ってくるほどだった。

鑑賞日:2020/10/06 監督:和田誠


ストーリー・オブ・マイライフ / わたしの若草物語

公開が決まった去年くらいから過去の映画化作品にアニメ版(無駄にナンとジョー先生まで)、原作(無駄に第四部まで)と気合いのコンプリートで備えていたものの、疫病とタイミングのせいでようやくの鑑賞。文庫で言ったら二巻分を尺に収めなきゃいけないのは仕方ないとしても、詰めるが故に個々のエピソードの良さが少しずつ犠牲になって薄まっている気もしなくはない。俗世に揉まれながらも根底にあるピューリタンの精神を守る、廻り道してそこへ辿り着くってあたりも然りで、現代に合わせて説教臭さを敢えて軽減したのかどうか分からないけどいささか弱い。ジョーとローリー、ブルック以外のミスキャスト感もちょいと気になる。爆泣エピソードな筈がとりあえず入れときました的なピアノや海話とベス、太いエイミー、聖なる母ちゃんを演じるケバいローラ・ダーンはともかくとして、ドイツ人ベア(熊)先生がルイ・ガレルってのは何やら大人の事情を感じる。...なんだけど、上手い具合に操られた時間軸と映えまくる映像の美しさは過去の映画化作品とは比べもんにならん。今までのどの作品も時系列ってのに対して、少女時代との決別の物語として過去を挿入しつつのNY時代から装丁に金付けされるまでの(泣く)構成があまりに巧みで駄目なところをことごとく帳消しにする感じ。きっちりジョー目線で一番忠実に作者の気持ちを汲みつつ、寄り添った作品になっていると思われる。やっぱりグレタ・ガーウィグは上手いってところにまとまった。

鑑賞日:2020/10/05 監督:グレタ・ガーウィグ


ルル・オン・ザ・ブリッジ

トイレで眺めただけの存在からオッサンの走馬灯的妄想が捗る。出会っても出会わなくても、どっちに転んでも哀しいif。瞬間的に末路を見、判断して『君の為に死ねる』を選択したとも言える、空回りまくりな男気な夢(字の如し)物語なのにグッとくる。難儀する数々の梱包、『パンドラの箱』、開けるか開けないかとイチャつく2人が問答する選択ゲームみたいのとで上手い事出来ている様に思われる。ミラ・ソルヴィーノを買いにくるノット・ルー・リードの役をやるルー・リードに90年代のブルックリンの息吹を感じる。

鑑賞日:2020/10/03 監督:ポール・オースター


僕のニューヨークライフ

マリリン・モンローとソフィア・ローレンを世界初共演させるウディ・アレン。年老いた自分と若い頃の分身みたいな具合で継承みたいな良い話風。最後にずっこけるけど。脚本的に言い回しはまんまで余裕がないあの感じなんだけど、ジェイソン・ビッグスに滑稽さが足りないせいかただ単に切羽詰まってる風にしか見えん。あられの如しな教訓の数々に自己防衛狂ユダヤネタは流石な上にデ・パルマより上手いんじゃないかと云う画面分割で結構満足。クリスティナ・リッチは初期段階で放り出しとくべき。「君はどう思う?」

鑑賞日:2020/10/01 監督:ウディ・アレン