Films: Jan.2022『セリ・ノワール』ほか
Feb,02 2022 13:30
久しぶりに1日1本行けた2022年1月に映画レビュー。
毎年元旦は好きなやつからって事で、一発目はハル・ハートリー『トラスト・ミー』から。
こちらも久々なブレイク・エドワーズ『テン』と初鑑賞の『ビクター/ビクトリア』。夫妻+ヘンリー・マンシーニでクオリティ高過ぎ。
寒くて暑くるしさを望んでいるのか、最近妙に香港ノワール的なものを求めていて、久々のウォン・カーウァイ『欲望の翼』に『いますぐ抱きしめたい』で体感温度は瞬間的に上昇。
今年は自分の中の名作をどんどん再鑑賞して行こうって事で、ルイス・ブニュエル『銀河』、ベルトラン・ブリエ『メルシー・ラ・ヴィ』、神代辰巳『宵待草』といずれも素晴らしい。
アニエス・ヴァルダにかかるとドキュメンタリーも色彩豊かになる、『ダゲール街の人々』もとても良かった。
1月の締めはアーサー・ペン+マーロン・ブランドほか豪華役者陣の『逃亡地帯』。アメリカン・ニューシネマをちょっと先取りしつつ、地獄の様相ってな具合で最高。
ほぼほぼ心に決めつつも悩んだ1月の顔はケン・ラッセル『クライム・オブ・パッション』、『トラスト・ミー』をおさえて、アラン・コルノー監督、パトリック・ドヴェール、マリー・トランティニャンの『セリ・ノワール』で決定。近年観た中でもかなり好き。同じく、アラン・コルノーの『めぐり逢う朝』もなかなか。
そんなかんなで次作の準備をしつつ、過去音源整理とか色んな事に手を出して収集付かない感じの今日この頃。
観た映画: 2022年1月
映画本数: 31本
逃亡地帯
石油がもたらした街に渦巻く、恩恵やら怨恨やらで大変。ロバート・レッドフォードの脱走をトリガーとした所から始まり、単なるサタデーナイトが祭になり、やがて地獄の様相を呈してくる(火タイヤとか狂ってるアメリカ様)。人々の胸中に積もったあれこれが爆発して、文字通り炎の中で激情と理性と世代間がせめぎ合う正に暴徒の図があった上で、更に本当の地獄はそこじゃないって締めで、後のアメリカ的出来事の予言っぽくもある。最大限に抑圧されるポジションのマーロン・ブランドの周りに浮かんでそうなゴゴゴ...演技は豪華役者陣の中にあって流石な感じ。からのここまで索漠としたサンデーモーニングの図もそうそうない。
鑑賞日:2022/01/31 監督:アーサー・ペン
壁あつき部屋
怒りマックスまで行ってからの美子猫のお出迎えでほっこり。一応、下衆過ぎで殺されないって設定の小沢栄太郎なんだけど、浜田寅彦が畜生道のループに落ちるか落ちないかの境界の表現として白いのが現るってかなり秀逸。で、安倍公房の『戦犯とは死の商人がかけた平和の仮面である』の良くできた一文にある通り、敵の所在をよくよく考えさせられる。そして下っ端がどこまでも辛酸を舐める図式ってのは腐るほどあったであろうし、現在も同様と考えるとちょっとウンザリする。各種効果音に壁貫通のシーン等々雰囲気抜群だった。
鑑賞日:2022/01/30 監督:小林正樹
パリは霧にぬれて
ぽや〜っとした画面と由紀さおりっぽいテーマのイントロはかなり好き。パリとヴェニスの違いがあるものの、水辺の雰囲気が『赤い影』っぽいのもイイ。途中まで先が読めない展開だったものの、締めは結構力技な感じがしてあまりスタイリッシュとは言えない。ものの、レインボーカーソルがぐるぐるしてるみたいになるまで追い詰められるフェイ・ダナウェイでなかなか楽しめた。
鑑賞日:2022/01/29 監督:ルネ・クレマン
Mr.BOO!インベーダー作戦
序盤のフリがちょっと退屈だったけれども、ニャンコの変顔以降ちょっと盛り上がって盛り下がる。設定から何からブラックな不謹慎ネタと体張りまくってるのは良いんだけど、マルクス兄弟的なとこまではやや遠い。タイヤのとことか電子按摩の下り等ちょいちょい瞬間的に笑わせてくれるから、まぁ良いのか。上手い事言ってやったみたいな終わりは結構好き。
鑑賞日:2022/01/28 監督:マイケル・ホイ
少年期
リベラルと軍国主義と東京と疎開先とで何を信じたら良いか分からない少年期。ただでさえ戦時中で多感な年には理解に余るわな。果報は寝て待て状態でちょっと投げっぱなしな感もある笠智衆が『早く大人になって欲しい』と、涼しい顔して口から出た言葉がかなり切実ではある。ナヨってる少年がちょっぴり強くなったあの夏ってな具合。エンドレスな木下忠司テーマが終わっても流れてる。
鑑賞日:2022/01/27 監督:木下恵介
クライム・オブ・パッション
リック・ウェイクマンのシンセがある意味一番目立ってる。ほとんどのシーンで趣向を変えて変えて変えまくって流れる『新世界より』のフレーズが展開する瞬間にちょっと身震いする。で、倒錯っぷりとカタルシスの期待を裏切らないケン・ラッセル。春画にビアズリー等の静止画と娼婦キャスリーン・ターナーの生身の七変化(偽りってのがまた)とで目にも楽しい。登場シーンからヤバいアンソニー・パーキンスとヴィィィンが怖すぎ。アイソレーション・タンクのやつと同じくらい好きだコレ。
鑑賞日:2022/01/26 監督:ケン・ラッセル
めぐり逢う朝
音楽の消費の度合いを増す現代こそ観るべき作品よね。『楽器は弾けるが音楽家ではない』から始まるサント・コロームとマラン・マレ師弟の芸術問答な具合で、レベルは違えど昨今の世界にも結構当てはまる所も多い。なるべくしてなった隠遁生活(実に理想的な環境)でストイックに生み出されるものと上昇志向の者の差を埋めるのは難しい。制作にあたってアラン・コルノーがスタッフに『陰翳礼讃』を読ませたとの事で、劇中で語られる冥界や陰の描写の深さに納得。ヤングマレ(息子)→老年マレ(親父)のドパルデュー変化に一瞬戸惑うも、すぐ慣れる。
鑑賞日:2022/01/25 監督:アラン・コルノー
アナザーラウンド
どんよりマッツ→シャッキリマッツ→スッキリマッツ→弾ける!マッツとその仲間たち。おまけに何度ももの欲しそうな目をしては呑まれるマッツ。ツラい中年のあれやこれが伝わり過ぎてきて、こっちがツラい。からの生傷だらけの人生でも悪い事ばかりじゃないって事でグッとくる。記憶にあるトマス・ヴィンターベアの雰囲気と全然違うんだけど面白い。
鑑賞日:2022/01/24 監督:トマス・ヴィンターベア
欲望の翼
久々。真冬でもじっとりしてくる。情熱と呪い半々みたいな強烈な1分間だわな。からの連鎖的に振り回し、振り回されながら各々のスイッチに触れてスパークする瞬間が手に取る様に分かる。そしてどこまでも行っても満たされない一方通行。で、微妙に闇な具合で描かれる60年代香港と遠い未来の返還の行方って事で絵作り上手過ぎ。最後にかっさらう美味しいトニー・レオン。
鑑賞日:2022/01/23 監督:ウォン・カーウァイ
マンボ・キングス わが心のマリア
まん防だからと云う訳ではない。観てる方の腰が動いてきちゃう様な序盤から割と斜め上展開だった。終わってみれば兄アーマンド・アサンテが一貫して良い奴過ぎて泣けてくるな。で、何やっても切れ味抜群で格好がつく弟バンデラス。火と水の兄弟の弟が暗黒面に落ちると思わせて、普通に結果オーライっぽい良い話に着地。問題ないんだけど何かモヤモヤしなくもない気もする。場面展開やらでやたらと気合いの入った映像がちょいちょい挿入されてる。
鑑賞日:2022/01/22 監督:アーネ・グリムシャー
ある女優の不在
一堂に会したイランにおける過去~未来の3世代の女優像。国から出られない監督や国へ戻る事ができない監督の国家レベルな問題と、のどかな村と村人の表裏の顔とでなかなか一筋縄ではいかんイラン。来る事なかったんじゃないかってくらいの訪問のお土産は包皮と割れたフロントガラスってのもまた凄い。人々の会話の思考回路が妙な感じとかラストの長回しとかキアロスタミ作品を感じる。ローカルルールをマスターした末にやってくる、行き場のあるんだかないんだか良く分からん雌牛で意味深。
鑑賞日:2022/01/21 監督:ジャファル・パナヒ
セリ・ノワール
服脱げましたよ...と最初から最高と最悪の両方から目一杯引き寄せてる。OPから無駄にキレのある主人公パトリック・ドヴェールの眼と動きが、進むにつれてどんどん研ぎ澄まされていてすんごい。で、1人踊りから始まり、駄目駄目を積み重ねた末のED。やっぱ愛だよと(カミさんの件は...爆汗)、清々しい感じで締められていて超がつく程に素晴らしい。トロッとした目で無口でグイグイくるトランティニャン娘、ありゃ『死ぬほどいい女』ですな。
鑑賞日:2022/01/20 監督:アラン・コルノー
薄化粧
復讐するは我にありみたいな冷血系緒形拳と見せかけて、全体で見ると結構悲しい話。とりあえず地獄の黙示録のアレをやりたかった感じの脱獄から飯場巡りで色んなのが出てくる。やっぱりこの時代の役者達は川谷拓三を筆頭に体張ってる風で細かい仕草なんかもみんな上手い。で、尽くす藤真利子のエロと炭鉱の汗ばむ浅野温子のエロとでたまらん。時系列を崩しつつ、理想的なイイ女を求める道筋。その到達点へ男と女の薄化粧から入り、そしてオチって事でラストが流れる様で素晴らしい。凶悪犯ってのを忘れるくらいに純愛なラスト。まぁ全ては松本伊代のせいって事で。ラジオのとこ好き。
鑑賞日:2022/01/19 監督:五社英雄
そして誰もいなくなった
クローズド・サークルの元祖。って事で最早王道ネタなもんで誰かは偽装なんだろうと思いつつ、全然謎が解けなくて猫を犯人認定するとこまで追い詰められた。疑心暗鬼系楽しいナ。オチが異なるらしく、やっぱりちゃんと原作読まねばと思ってしまった。U.N.Owen=Unknownカッコいい。
鑑賞日:2022/01/18 監督:ルネ・クレール
荒野のストレンジャー
墓標がないと霊が迷うって事で遣わされた無敵亡霊系クリント・イーストウッドって事で、この世とあの世のダブルな感じで超怖い。やれやれだぜって云ういつもの具合で悪人はもとより善人面した奴も満遍なく裁く社会の風刺も結構入ってる。ボヤ〜っとしたOPEDのインアウト、街の赤から炎への変貌、多くを極力語らないとか、あちこちの巨匠の良い所をきっちり学んだ監督2作目って事でかなり良く出来てると思われる。
鑑賞日:2022/01/17 監督:クリント・イーストウッド
ナチュラル・ボーン・キラーズ
四半世紀振りくらい。オリバー・ストーンの中では一番好きではある。ものの、脚本タランティーノのいかにもそれっぽい感じに仕上げつつ、オリバー・ストーンの不要な主張をちょいちょい挿入してるので、どうもテンポが悪い。と云うかタランティーノがそのまま撮れば良かったんじゃないかとさえ思う。まぁ頑張って作ってるドラッギーなクドい映像とヨハネ福音書ネタは嫌いじゃない。出てくるだけで面白いウディ・ハレルソンとジュリエット・ルイスのお陰な気もしなくはない。で、やっぱりレナード・コーエンの歌詞は素晴らしい。
鑑賞日:2022/01/16 監督:オリヴァー・ストーン
希望ヶ丘夫婦戦争
キャンディキャンディ、もしくはフランスギャル的なやつと『ひまわり』(タンポポで)ばりなOPの無駄に高い芸術性。全体的にはタモリ倶楽部っぽいノリ、逆に。目に映るもの全てが子供の頃のものばっかりで、当時知らなかった世界を垣間見るみたいで胸熱。親に連れてけとせがんだお城タイプのモーテルの内訳等々、時空を超えて追体験してる様。と、色々あるんだけども蛙を揚げたやつに記憶の部分は全部持ってかれた感じ。で、自慰ネタに出るインテリジェンス感。
鑑賞日:2022/01/15 監督:西村昭五郎
ビクター/ビクトリア
女の振りをした男の振りをした女って事で、カツラ取ってもただのジュリー・アンドリュースにしか見えないけど面白い。ゲイ術な'30年代パリを舞台(リメイクらしい)にしつつ、音楽は完全にヘンリー・マンシーニな時代の米国って具合なんだけども、映画に完璧に合った甘いメロディと歌姫安定の歌唱力で全く問題なし。監督特有な合間に挿入されるドタバタ、ドジな私立探偵ネタなんかと、ビフォアアフターで見せる舞台のバージョン、男装故のゲイネタの数々、更には品の良いOPEDとで実に素晴らしい。絶頂ブレイク・エドワーズ夫妻が生み出した芸術の極地って感じ。最高。
鑑賞日:2022/01/14 監督:ブレイク・エドワーズ
網走番外地
バラエティ豊かなキャラ配置にのっけから最後まで結構エンタメして良く出来てる。特にトロッコから手錠の下りとかテンション上がりまくる。延々と南原宏治にはめられまくった末の健サンのお人好しっぷり。母ちゃんパワーは凄いナ。で、ひっそりしてるのに最初からオーラ全開な嵐寛寿郎すんごい。続編行く気満々俺戦ENDも嫌いじゃない。下に〜下にッのとこ好き。
鑑賞日:2022/01/13 監督:石井輝男
宵待草
15年くらい前に散々探し回った末に新宿蔦屋でVHS借りた思い出。アメリカン・ニューシネマ的趣きと大正浪漫風、しつこいまでの反復系な監督神代&脚本ゴジ節で心地よいチャンポン感。それに加えてユルい細野晴臣サントラとで結構完璧布陣。馬鹿と真面目が入り混じった画作りアイデアの宝庫でもある。不遇の時代にあって三者三様に泣けてくる青春でありながら、あの手この手で笑わせてくるから流石。で、『旅の重さ』な時期の天然物な高橋洋子とそのでんぐり返しの攻撃力、と神代辰巳のエロス分かってる感は異常。
鑑賞日:2022/01/12 監督:神代辰巳
バンカー・パレス・ホテル
ちょっとテリー・ギリアムやら'80年代の色んなやつを連想させる色味と美術ではあるものの、このお耽美なディストピア感は普通に好物ではある。結構ストレートな政府批判と風刺な筋とざっくりした回収はともかくとして、トランティニャン他のキャラとあっちこっちのデザインと設定で良い感じ。で、ふーふー言ってるの筆頭にポンコツのアンドロイド達の動きなんか各自最高な域。エンキ・ビラル読みたくなっちゃった。荒ぶりからの凍死なレオー...
鑑賞日:2022/01/11 監督:エンキ・ビラル
高校大パニック
浅野温子が見たくて。来年受験があるんじゃ━━━、ラジオ講座があるんじゃ━━━と受験ノイローゼ+暑さのせい。日本の夏は暑いからねぇ。1、2、3...8、九州大学のOPはかなり期待できたんだけど、主人公の過剰な棒演技と微妙な脚本で早く捕まってしまえと思いながら観ていた具合。なものの、汗だくに用足しにポロリと浅野温子のとこだけはポテンシャルを活かしてまくってて満点超えるレベル。デビュー作にして体張ってて感心する。趣のある校舎も大変良い。
鑑賞日:2022/01/10 監督:石井岳龍
ハリーの災難
ダイナミックな足構図からしてやられる。死体がただの小道具に見えてくる程の平和的な紅葉の景色と、登場人物の親睦が深まるまでの展開がまぁ鮮やか。バーナード・ハーマンのコミカルな劇伴とで恐怖感が1ミリもない具合が良い。売れた絵の見返りなんかも最高じゃないか。そしてデビュー作にしてキュートさは既に完成形のシャーリー・マクレーンとで文句なし。カメオ出演のあれは分からん。
鑑賞日:2022/01/09 監督:アルフレッド・ヒッチコック
フィル・スペクター
まぁ、どう見てもフィル・スペクターってよりはヅラ被ったアル・パチーノではある。ものの、ヘレン・ミレンと共にローギアから始まって終盤の熟練した演技力で終わってみればなかなか。確証の疑わしきを裁いてしまうケースでフェミニスト中心の周りは敵だらけって云う、大物ならではな超孤独。テーマの問題提起と併せてスッキリしない感じに仕上がっている。ロネッツ他、『ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード』の大袈裟アレンジも崇拝対象の自分としては、これで獄中コロナ死とか全く気の毒、と云うか人類の損失くらいに思ってしまうわな。
鑑賞日:2022/01/08 監督:デヴィッド・マメット
ダゲール街の人々
単なる日常もアニエス・ヴァルダにかかると色彩豊かになるな。さりげないお洒落タイトルクレジット、忘れられた在庫の匂いから始まり、アニエス宅の50m圏内の営みの数々。政治的に中立な場所ってのも結構大事。大型店に駆逐された時代と国から眺めてると個人商店の良さがより分かる。アニエス・ヴァルダの巧みな編集と優し気な眼差しによって切り取られたダゲレオタイプ。街の様々なカラーの中で灰色の沈黙をまとった婆ちゃんを軸にするってあたりの組み立て上手い。この作品の中の世界が個人的には完全にフランスのステレオタイプ。
鑑賞日:2022/01/07 監督:アニエス・ヴァルダ
メルシー・ラ・ヴィ
十年振りに観たらかなり良い映画じゃないか。メタ構造にファンタジーに時空系にとごった煮具合に加えてナチスと当時流行りのエイズ問題とフランス的なあれやこれを詰め込みまくるフルコースっぷり。そこからのほとんど力技な人生讃歌でなんかグッと来る。と云うか、あどけないフェイスとぷりぷり歩くホットパンツなシャルロット、歩く細菌兵器と化した美幌のアヌーク・グランベールだけで乗り切れる。フィリップ・グラスやらデヴィッド・バーンのサントラもクオリティ高い。にしてもあれね、フランス人ってのは眼球譚的なやつ好きねぇ。
鑑賞日:2022/01/6 監督:ベルトラン・ブリエ
グレイン
土足厳禁映画。セミフ・カプランオールって誰だっけと思ったら、ユスフ三部作の人か。ちょっとヌルい感じのディストピアでやるヨハネの一粒の麦の話みたいな話。やらんとしてる事は分かるけど、あっちこっちでよくある色んなネタと説教くさいのとでちょっと眠くなっちゃった。ストーカー的映像美と進撃の巨人になりがちなやつを回避する壁表現はなかなか。
鑑賞日:2022/01/05 監督:セミフ・カプランオール
いますぐ抱きしめたい
『ストレンジャー・ザン・パラダイス』っぽい感じで始まり、『トップガン』かと思えば『男たちの挽歌』みたいなとこもあるけど、終わってみればスローなやつとか(テイスト違うけど)デビュー作にして出来上がってるウォン・カーウァイ。最初の討ち入りの下りとかかなり格好イイ。ベタな筋書きでも映像美で納得させられる感じ。可愛い様な可愛くない様なギリギリなとこをついてくるマギー・チャンとイチャイチャする甘々描写、この辺りも観客分かってる風で上手い。どこまでも漢なアンディ・ラウにあのラストで香港ノワールしてる。あの時代の九龍な雰囲気たまらんなぁ。で、邦題酷いね。
鑑賞日:2022/01/04 監督:ウォン・カーウァイ
銀河
正月3本目、10年振りくらい。精神的にも物理的にも神への道は果てしなく果てしな〜く遠い。良いのも悪いのも真理もそうじゃないのも、波紋の振り幅異常な数多の宗教エピソードと、事の発端のあくまで人間キリストの描写とでまぁ滑稽。西欧の実態を暴く切り口が鋭ど過ぎでアジアの端っこから見てても痛い。特にラスト。時空がヌルヌル入れ替わる演出も最高。
鑑賞日:2022/01/03 監督:ルイス・ブニュエル
テン
40代の切実なあれやこれ。若返るならゲイにでもなったるわとミドルエイジ・クライシスの切羽詰まったのを表現する映画としては最高峰な気がする。10点満点発見の最高な所と本厄どころじゃないバタバタとの共存で良く練られている。ちょっとした事で声が漏れる感じとか的確だわな。中年男の幻想から現実へ辿り着くのは如何に大変かが身に沁み、その末に貫禄のジュリー・アンドリュースに落ち着く辺りの気持ちも分かり過ぎる。散々笑わせてから、泣けるデュエット→ボレロEDで出来過ぎな傑作。
鑑賞日:2022/01/02 監督:ブレイク・エドワーズ
トラスト・ミー
2022年一発目は好きなやつ。手榴弾からTVのパーツまで信頼すべきものとそうじゃない色んなもの、そして自立の色んな形が出てくる。パープリンな格好→ドレス→眼鏡への変化が流れる様で改めて感心する。受け止め試験、親父との距離をアナログで表現する下りも上手い。デジタルは凄いんだって云う時代も、昨今のアナログを知らない世代のアナログ推し懐古主義に比べると健全で良い時代よね。CDはともかくとして、2022年の今なら声を大にしてスマホは阿片だと声を大にして言える。ウルトラセブンばりに眼鏡装着でキリリとした面構えのラスト、完璧な構図の数々、音楽にと最高。
鑑賞日:2022/01/01 監督:ハル・ハートリー