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リバー・オブ・グラス

Films: Feb.2022『リバー・オブ・グラス』ほか

Mar,02 2022 12:00

月の初めにササッと新作リリースする予定が、またしてもミックス、マスタリング沼にはまってる感じな2月。
出したい曲が山ほどあるのに、なかなか進まなくてもどかしい。で、そんな2月も振り返ってみれば結構な傑作揃い。
このところ絶賛マイブーム中なアラン・コルノー監督、『真夜中の刑事 / PYTHON357』。すんごい勢いで落ちて行くイヴ・モンタンと上司と部下の探り合い、あっちこっちのこま細かいところの丁寧さとで期待を全く裏切らない出来。
再鑑賞ものでは冴わたっている頃のニコラス・ウィンディング・レフン、『ブロンソン』に当時の匂いすら戻ってきそうなパトリス・ルコント、『 仕立て屋の恋』、これまた随分なロマン・ポランスキー、『水の中のナイフ』と文句なし。
そして妙にワールドワイド気味な作品も多く、ヴィゴ・モーテンセン主演ほかの『約束の地』、シティ・オブ・ゴッドの続編の『シティ・オブ・メン』など南半球系もちょいちょいと。中でもアルゼンチンのルクレシア・マルテル監督の『サマ』とパレスチナ出身の双子タルザン、アラブ・ナサール監督の『 ガザの美容室』は特に素晴らしかった。
で、散々迷った2月の顔と云う事で、どれを観ても傑作なマイク・リー『秘密と嘘』とチャールズ・ロートン+デヴィッド・リーン監督で完成度高過ぎな『 ホブスンの婿選び』を抑えて、'90年代のフィーリングに脚本、アングル、音使い、カット割にと最高の要素満載なケリー・ライカートの初期作品、『リバー・オブ・グラス』、『オールド・ジョイ』より前者をチョイス。
時間がいくらあっても足りなくて困るが加速してる今日この頃。

観た映画: 2022年2月
映画本数: 27本

約束の地

すこしふしぎどころじゃない。冒頭の"JAUJA/ハウハ(豊穣と幸福の地)"の説明と、その楽園に辿り着いた者はいないって云うほぼネタバレみたいなテロップから始まる。親父と娘では目的とするそこん所が異なるって事で隔り方が斜め上を行く感じ。で、閉鎖的な感じさえするスタンダードサイズの荒野でハウハを求めていつまでも彷徨うヴィゴ・モーテンセン。劇伴クレジットで唄だけで終わりかと思いきや、きっちり作曲もやってた。幻覚剤でも入ってるんじゃないかって具合の泉から洞窟、そこからまた色々と超えてきた場面展開とシーンごとの環境音の劇的な変化もなかなか。

鑑賞日:2022/02/28 監督:リサンドロ・アロンソ


オールド・ジョイ

オールド・ジョイ

サントラだけはリアルタイムで聴いてたものの、映画はようやっと鑑賞。『時代の終わりだ』のこの作品を一言で表したかのような台詞の直後のヨラテン挿入で満点上げちゃう。視覚には目を洗う様な自然が延々と映し出されているに、微妙になってしまった距離感と危うい風なヒゲ男(あー、ボニー“プリンス”ビリーか)でなんか起きそうで終始ドキドキしっぱなしだった。中でも同じ場所にいながら果てしなく遠く離れ、整ってる最中にサワっと触ってくるあのザワっと感。おじさんおばさんには邂逅の際にぶち当たる、なんか知らんけど出来上がってしまった壁とどうにかそれを崩そう、からの諦めってみんな覚えがあるんじゃなかろうか。で、また連絡してねが寒々と漂うエンド。そんな日は涙型の宇宙が落ち続けるってのも分かる気もしなくはない。『都会には木があって森にはゴミがある』は結構な名言。

鑑賞日:2022/02/27 監督:ケリー・ライカート


ブロンソン

“It's a Sin”のとこが観たくて。この頃のレフンは冴えまくっていたな。

鑑賞日:2022/02/26 監督:ニコラス・ウィンディング・レフン


最後にして最初の人類

とりあえずのっけの制作のロゴがほぼタモリ倶楽部。2002年にTouch(当時、個人的に最も熱かった)からリリースされた遠い昔の『エングラボルン』から、いつの間にやら劇伴職人になり、果ては監督、そして若くして亡くなったヨハン・ヨハンソン。音に関しては不安は1㍉もなかったのは勿論のとこから始まり、スポメニック(旧ユーゴの巨大建造物)を延々と撮影した映像素材で飽きると思いきや、終わってみれば結構見入っていた。未来人曰く古代の遺物たる音声会話、オシロスコープで視覚化され語りかけてくる声がティルダ・スウィントンっぽいと思ったら、本人との事で。この人こう云うのがホント合うね。トリッキーな編集と併せて、星は凄いんだヨって事でなかなか良い感じのダークアンビエント&SFに仕上がっている。

鑑賞日:2022/02/25 監督:ヨハン・ヨハンソン


リバー・オブ・グラス

リバー・オブ・グラス

りんごの木から遠くへは落ちない、から随分と飛んでくな。cozy(居心地の良い)と名付けられた女のアンニュイな日常からロードに出るまでのロードムービーってな具合。のっけから脚本にアングルに音使いにカット割にと最高の要素しかないわ。で、聖書の使い方が神がかってる。『真夜中のカーボーイ』で目指した地で20年後くらいに似たような事してる風。素晴らしい。

鑑賞日:2022/02/24 監督:ケリー・ライカート


仕立て屋の恋

映像が鮮明になってキモさマシマシ。ボーリングが異常に上手いとかクンカクンカとかあの手この手で表現されるキモさと、どこまでもどこまでも純粋な行動原理とで加減が絶妙。で、ストーリーの持ってき方は勿論の事、劇中色んな種類の『ハゥアッ!』って声が聞こえてきそうなやつや、覗く男からの衆人環視とかも冴えまくってる。品のあるブラームス使い方やスケートリンク、駅などの美しさと完璧構図とでまたハゲとキモさが浮き上がってくる上手さ。メロディの美しさが際立ってきた時期のナイマン+ルコントで『髪結いの亭主』と共々、個人的に青春時代の匂いが蘇る。

鑑賞日:2022/02/23 監督:パトリス・ルコント


秘密と嘘

積み上げて積み上げてから一瞬で空気を変えるのがホント上手いマイク・リー。胃が痛くなるBBQからそこへ持ってくまで、人の配置もひっくるめて実に滑らかな事。そんな監督の手腕もさる事ながら、ザ ・母ちゃんって感じのブレンダ・ブレッシンの圧倒的な演技力に泣くなって方が無理がある。それをサポートするティモシー・スポールの安定感とでバランスも良い。人生は不公平からいいものへって事で素晴らしい作品。これを作っといて『ヴェラ・ドレイク』ってのがまた凄いけど。

鑑賞日:2022/02/22 監督:マイク・リー


シティ・オブ・メン

やってる事は殆ど動物と変わらん。側から見てると面白いけど、理解不能と云うかしたくない世界。繰り返すスラムの抗争はそのままに、父親と友情的な話は綺麗な感じにまとまっているけど、やっぱり1作目>TVシリーズ>今作な具合。逃げるが勝ちで『未知の世界』へ踏み出すのは良いけど、こっち来んなとは思う。

鑑賞日:2022/02/21 監督:パウロ・モレッリ


地獄に堕ちた野郎ども

長く細々とセルフでダムドの呪いに侵されてる。改めて'80年代くらいまでのでいいやって気になってしまった。満ち満ちた謎エナジーがすっかり影を潜めた年寄りパンクには興味がない。一物のいたずら書きに"U2参上"のとこが一番面白かった。

鑑賞日:2022/02/20 監督:ウェス・オーショスキー


異母兄弟

こんなウチは嫌だと現代の感覚ではそうなるんだけど、当時の時代背景だと珍しくもないんだろうねぇ。終戦を境にガラッと意識が変わった日本にあって、ここの家庭も例外じゃなかったと云う。撮影当時にして今の自分より年上な田中絹代サン(48)が、うら若き乙女から老年までいぢめにいぢめ抜かれる休火山の如き役を見事にこなしていらっしゃる。もう女中じゃございませんの一言に辿り着くまでの果てしない事(そこで終わったら尚良かった)。最初から最後まで人としてブッ壊れてる三國連太郎(34)も流石な演技力。意識が流されるのも、抗えなくもなるのも軍国主義の悲劇って事で、絶望感マックスで音も大きめなパイプオルガンがまた効果的だった。

鑑賞日:2022/02/19 監督:家城巳代治


サマ zama

サマ

見えてくる風景が全然違うんだけど『審判』的な不条理を感じる。不気味なシンセ音や鳴き声と見てるだけで具合が悪くなる感じの強烈な映像。かと思えば、時折挿入されるアマポーラほかのトロピカルなやつとか猛烈カメラ目線のアルパカや馬等のアニマル達でほのぼのさせたりでシーンによっての加減が絶妙。死の臭いに満たされ尽くした末の瞬きによる微かな意思表示のラスト。素晴らしい。で、製作陣が豪華。

鑑賞日:2022/02/18 監督:ルクレシア・マルテル


悪魔のような女

昨日の『悪魔のようなあなた』にその前の『PYTHON357』のシモーヌ・シニョレで我が家的にちょっと混乱。とんだ悪魔。とりあえず、湯沸かしから始まって扉やら色んな音が超怖くて効果絶大。プールの死体辺りから謎が膨れ上がって面白くなる。上手く乗せられてる様で結構使えない夫人への苛々が、結末分からない状態でもこっちに伝染してくるから凄い。で、降って湧いた探偵はあれ解明してるってのは切れ者過ぎだろ。ぬぼ〜っと出てからのライトな『アンダルシアの犬』っぽいやつも生理的な怖さは十分あったけど、最後の少年の一言でちびりそうになる。

鑑賞日:2022/02/17 監督:アンリ=ジョルジュ・クルーゾー


悪魔のようなあなた

全シーンで惚れ惚れする美男っぷりなアラン・ドロン。軽快なOPで取り敢えず掴まれる。素敵館なロケーションで設定から役者まで100%胡散臭い具合で、どう着地するのか結構ワクワクしながらの鑑賞。二転三転はあるものの、あちこちがちょっとザルな感じな脚本で、イケメンパワーの力技で話をどうにかする方向。そんな感じなんだけど、承認する所まで持って行ってからストン(画面上に"ウゲッ・・・"ってのが見えてくる様)と締めるラストはかなり上手い。敢えてエッチな格好でウロウロするセンタ・バーガーも大変良かった。

鑑賞日:2022/02/16 監督:ジュリアン・デュヴィヴィエ


真夜中の刑事 / PYTHON357

中年が若い娘と出会ってゴニョゴニョな良い感じな妄想系っぽい所から始まり、すんごい勢いで落ちて行くイヴ・モンタン。それに併せて、最初はマズイ事になったなぐらいの所から必死の具合もどんどん重くなって顔つきまで変わってくるから凄い(色んな意味で)。証拠隠滅をしつつ証拠を探し、署長とイヴ・モンタンと若いのとで繰り広げられる上司と部下の探り合いも見応えがある。で、車内での営みで曇りまくる窓ややけっぱちな豚なんかの細かいとこから始まり、時間に追われて奔走するのと目覚ましの絡み合いや、スマートな射撃スタイル見せてからの展開など監督と役者とで非常に丁寧に撮られてる印象。どどーんとダーティハリーばりな立派なやつのOPから始まって、訓練と誤認やらでなかなか気持ちいい感じで使わない加減も上手い。

鑑賞日:2022/02/14 監督:アラン・コルノー


世界の涯ての鼓動

シリアスに会いたくて震える男女、生命の起源に政治を絡ませつつ、水と命の話って高尚な話なのは分かる。も、『雨ってゅうのゎ。。9割以上が水分。。。そしてきゅうりも、9割以上が水分。。。そぅ。。これゎもぅ。。。雨=きゅうりってゅうコト。。。空から降る一億のきゅうり。。。もぅマヂ無理。。。浅漬けにしょ。。。。』←切羽詰まってるところで、こいつ頭から離れなくて困った。小津的切り返しとか問題提起とかヴェンダースそのものな具合なものの、ちょっと風呂敷広げ過ぎな気もしなくはない。十字軍よろしくキリスト教圏側の空爆って行為で元の木阿弥感。平和には遠いちきうの現在形って感じ。収められた風景は超がつくほど綺麗。

鑑賞日:2022/02/13 監督:ヴィム・ヴェンダース


水の中のナイフ

久々。これでもかって云う立体的な美しい構図にちょっとした光の加減や音で展開するシーンとで天才的。夫婦の間の主導権から始まり、青年が加わる事で増大する緊張感が異常。ヨット上で表現される安定と不安定で画面の向こうとこっちを揺さぶりまくりつつ、何事も力で服従するとは限らないって意志がビンビンに伝わってくる。クリシトフ・コメダのお洒落劇伴も最高。

鑑賞日:2022/02/12 監督:ロマン・ポランスキー


テンダー・マーシー

キリストとは逆に荒野に来てから洗礼を受けるロバート・デュバル。一難去れば一難な試練の連続な人生で『俺は幸福なんて信じない』ってこぼす気持ちが分かり過ぎる。しかし悪い時の後には良い時が必ず待ってるって事で、安住の地を見つけた放浪が得る静かな幸福に救われる。それは洗礼した直後に何かが変わるみたいな具合じゃなく、人生は悪い事も良い事も少しずつ変化して行くんだって事で、プロばりな歌唱力と共になかなかに沁みる一本。

鑑賞日:2022/02/11 監督:ブルース・ベレスフォード


カリフォルニア万才

これは加山雄三でもモリッシーでも太刀打ちできんキングっぷり。OPの回収をサラッとしてくる塩梅とか映画自体の出来も結構良い。あの3人の中だったら、どう考えても飯ウマなドラムちゃん一択。60sなパーティーのエキストラのアグレッシブ&お洒落さで若干エルヴィスが霞んでたけど、最後はゴーイングマイウェイで痺れるわぁ。で、Wネック(12弦の方)同じの持ってたけど、流石に様になっとる。

鑑賞日:2022/02/10 監督:ノーマン・タウログ


海辺のホテルにて

不幸オーラ全開なドヌーヴ様とグズる役が上手過ぎなパトリック・ドヴェール。冬の避暑地から始まりオンシーズンで幕を閉じる構成で、寒さと裏腹にロケーション、屋敷に各シーンの配色にと結構素敵。そんな季節の中、みんな孤独を埋める為に哀しい努力をしている図で、しまいにはハッテン場まで出て来る。これの後に命を断つパトリック・ドヴェールの台詞、『最初から成功してる人たちはどうやってるんだろう』って云う上手く立ち回る事のできないタイプな人間のどうにももどかしい感じ、それと不器用な具合に切り替わるシーンのいびつさを狙ってやってたら凄いアンドレ・テシネ。気候良くなってる筈のラストのあの寒さっぷりは異常

鑑賞日:2022/02/09 監督:アンドレ・テシネ


父、帰る

パパ、還る(爆震)。初めから終わりまで自分、不器用すからで通す父。どう接して良いか分からない同士な父と兄弟の旅って事で、画面のこっち側目線だと各々の感情が良く分かる作り。高所恐怖症なOPから終盤への変化の弟、生きる術を獲得し大人へ変わりつつある兄とで、ぶきっちょながらしっかりと男親から子へ『わんぱくでもいい、たくましく育って欲しい』な男子的な何かがきっちり継承された感じ。で、父、帰るで思わず出る叫びでちょっとグッとくる。交互に映し出される蒼天と雨模様とカスピ海の上辺り(多分)な田舎風景とでなかなか良いロシアン。

鑑賞日:2022/02/08 監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ


モガンボ

アフリカな風景としての一夫多妻に女性の貞節、そして自然の傾向としての雌を取り合う雄って云う大前提に逆らう事で話が面白くなってる。実生活の逸話とは裏腹でカマトト風(若草物語風な下ネタって秀逸な表現)なグレース・ケリーより、どう考えてもエヴァ・ガードナーの方がいい女だわな。そんな2人とエロさとダンディズムを併せ持つクラーク・ゲイブルなもんだから笑えるくらいにモメる。アフリカ云々より人間の所業で結構現場は荒れてたみたいだけど、腐ってもジョン・フォードってな具合でなかなか楽しい作品に仕上がっている。アニマル達の映像素材はめ込みもさほど気にならないし、屈強なエキストラとケニアなサウンドもとても良かった。ウルリヒ・ザイドルの『サファリ』と併せて観ると楽しさ倍増する。

鑑賞日:2022/02/07 監督:ジョン・フォード


夏の庭 The Friends

エンドレスサマーに陥る事なく、この作品にはきっちり時間が描かれている。公開の'94年は16歳くらいだったけど、死についてこんな重く考えた事はなかったな。制作時の相米慎二と原作者の湯本香樹実とほぼ同じ年代の今にして深く理解できる。無垢な子供目線から切り取り、『人が上手くいく仕組みがあれば良い』とストレートな感情を子供に代弁させ話を進めるってのが実に秀逸。三國連太郎と淡島千景の『おかえりなさいませ』は流石やね。表現力豊かなアサド兄弟のギター劇伴は素晴らしかったけど、ザードは如何なものか。

鑑賞日:2022/02/06 監督:相米慎二


セルフィッシュ・サマー ホントの自分に向き合う旅

孤独と人恋しさ、自然と都会もどっちも良いとこがあると。互いにコイツはって思いながら真っ直ぐな線引くところから、打ち解け弾けてフラフラの線引く感じとか最高。途中で王国を終われた云々をやるけど、謎な原題は2人の名前のアナグラム的なやつなのかな。で、幽霊系な女性で象徴される、2人の女性に対してのそれぞれの呪縛が解き放たれた感じでスッキリする。焼けても再生するあれやこれを捉えた映像と'10年代っぽい劇伴もなかなか良かった。

鑑賞日:2022/02/05 監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン


ガザの美容室

マリアナ海溝ばりに根深いパレスチナ問題をそのまんま美容室に置き換えた具合。狭くて電気も物資も乏しい劣悪なとこに閉じ込められつつ、みんな好き勝手やってて超カオス。これが世界の現実よ。男子禁制の空間さえ安心できない生活でどの政治もクソって言いたくなる気持ちが分かり過ぎる。驚愕のノーフィニッシュカスタマーで映画的には最高に面白い。女が政治した方が良いと言いつつ、仕事中は携帯切るって概念ゼロでダラダラやってるのを見てると、まぁ男女ってよりは文化と歴史と環境の違いだわね。

鑑賞日:2022/02/04 監督:タルザン、アラブ・ナサール


続網走番外地

きっちり旅映画してる。ハメられ気味な建サンが途中アラカンに助けられると基本的には同じ感じなんだけど、メインストーリーの毬藻探しの難易度がどんどん高くなってて面白い。急に女っ気の多い娑婆の世界とカラーとで全体的に華やかな感じでもある。中谷一郎とのホモくさいやり取りの中で予言される相は灼熱地獄系のやつだったのか、熱々トルコ風呂やら何やら色々と火責め系に遭いつつ、泥レスまでやる流石な建サンの図。一仕事して、ふぅみたいな感じだけど、人のを横取りしただけって云う...。

鑑賞日:2022/02/03 監督:石井輝男


ホブスンの婿選び

しとしと雨の中、首吊りと思わせるOPからして上手い。有能長女の表向きはソフトに内訳は結構エゲツない乗っ取り作戦に右往左往するチャールズ・ロートン。階段を一気に駆け上がるとこから終始動きが面白くないとこがない。後の『情婦』では眼鏡の光線だけで最大限の効果を上げているものの、今作はともかく動く動く。挙句に巨大ネズミ登場で涙出るほど笑わせて貰った。で、しっかり丸く収まってOPと同じ画面って事で良く出来てる。効果音みたいな劇伴の使い方も最高。

鑑賞日:2022/02/02 監督:デヴィッド・リーン


獣人

ゾラの前置きがあっても先が読めん。病持ちでも健常者でも獣的なものを内面に持ち合わせるって感じで展開しつつ、おおっそっちかよって云う獣メンなジャン・ギャバン。鉄ヲタじゃないと嬉しくない感じで始まる序盤の筋の進み方がなんかぼんやりしてる気もしなくないんだけど、ダンスシーンと暴走シーンの交差やら、時すでに遅しな懐中時計のクローズアップ、獣系機関士がいなくなって暴走寸前な機関車などの描写は流石なジャン・ルノワール。冤罪喰らう汚いオッサン役最高。

鑑賞日:2022/02/01 監督:ジャン・ルノワール