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按摩と女

Films: Mar.2022『按摩と女』ほか

Apr,05 2022 12:30

せっせとミックス、マスタリング作業に追われていた3月。リリース予定は大幅に遅れていつつも、しっかり映画は観ている。
初めてと再鑑賞と合わせて満点だらけでもあった。
2月に続いてケリー・ライカートもので『ウェンディ&ルーシー』と『ミークス・カットオフ』。どちらもと云うか、今まで観た限りではどの作品も素晴らしい。
再鑑賞ものはその時々の気分によりチョイス。なんとなくキューブリック『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』やヒッチコック『めまい』、ハル・ハートリー『シンプルメン』、裏風と共に去ぬな『マンディンゴ』等々、時勢と季節感でチョイスしている傾向あり。
こちらも久々、森崎東『喜劇 女は度胸』に山田洋次『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』のリリー回。この2人の監督は逆にオールタイムオッケーな感じ。
クラシックものの傑作も多数で、ビリー・ワイルダー『お熱い夜をあなたに』、アンソニー・アスクィス『黄色いロールス・ロイス』、ハル・アシュビー『チャンス』や、こちらは再鑑賞でリチャード・ブルックス+テネシー・ウィリアムズ『熱いトタン屋根の猫』と素晴らしい。
そして質の高い日本映画で清水宏『按摩と女』に家城巳代治『姉妹』はもっと他の作品も観たい。
満を持してのスピルバーグ『レディ・プレイヤー1』とこちらは予習で30年ぶりくらいの『ウエスト・サイド物語』もすこぶる楽しい。
そしてサントラ盤はとても馴染みがありつつも、あまりの長さで敬遠していたヴェンダースの『夢の涯てまでも ディレクターズカット版』を満を持して。世紀末のザワザワした感じを思い出す。
ロイ・アンダーソンの新作『ホモ・サピエンスの涙』も相変わらずの曇天灰色でとても素晴らしかった。
そんなかんなな3月、色々悩んだ末にやっぱり絵面がピカイチに綺麗だった清水宏監督の『按摩と女』に決定。
作業も大詰め、4月はゆっくり映画を観たい。

観た映画: 2022年3月
映画本数: 30本

ホモ・サピエンスの涙

ホモ・サピエンスの涙

ようやっと。で、安定な引き画と曇天灰色感。細かいから大きいとこまで人間の脆さなあるある劇場。滑稽さを孕んでる分だけ余計に哀しいな詰め合わせで、地雷系なギョッとする奴多め。ハラハラと降る窓の外の雪と、無理矢理にでも信じたいみたいな『すべて、素晴らしいよな!』がキューっとくる。

鑑賞日:2022/03/31 監督:ロイ・アンダーソン


男はつらいよ 寅次郎忘れな草

久々。可哀想の度合いはどっちもどっちな、シリーズ中で一番似た者同士なリリーと寅さん。第三形態くらいのグイグイくる浅丘ルリ子にちょっと押され気味で、後の最多登場も頷ける存在感。2人の渡世人が堅気の生活に憧れるって基本筋とシャープに笑わせる鉄板ネタの数々とで、個人的にはあまり好きじゃないラスト以外は結構締まってる印象。対さくらのピアノの話から始まり、汽車賃はかなり泣ける。

鑑賞日:2022/03/30 監督:山田洋次


夢の涯てまでも ディレクターズカット版

ヴェンダース道のちょっとした試練。タイトル曲のU2をはじめとしたサントラはかなり馴染み深かかったけれど、満を持しての初鑑賞。ヴェンダース憧れの役者にヴェンダース組、当時の売れっ子達を配置に加え、毎度なこだわる映像もロケーションもこれ以上ないってくらい資金に恵まれ、監督の絶頂期(もしくは折り返し地点)な具合。ルーツ・ミュージックやリズムに対しての傾倒がより強くなったのもこの頃からな印象。所謂ロードムービーで大陸間移動の物理的に行き着いた先の更なる夢の世界への旅展開、その段階で半分も進んでない涯てしなさに気が遠くなる。で、ラストで更に飛び越えて、行ける所まで拡げる辺りにもう感心するしかない。ジーザスな"Until the End of the World"のキーフレーズと共に探求する、今は過ぎ去ってしまった世紀末とSF感とでお腹一杯。

鑑賞日:2022/03/29 監督:ヴィム・ヴェンダース


ウエスト・サイド物語

劇中の動きを真似したら5秒でどこか痛める自信がある今作、実に30年振りくらい。当時と変わらずミュージカルってものがあんまり好きになってはいない。のだけれど、バーンスタインの偉大さを理解したいい歳した今となっては、只々圧倒される。メイン曲は勿論の事、決闘に行くシーンの各モチーフが混ざり合う所とか鳥肌もの。移民問題と血で血を洗う云々で悲しみのマリアに帰結する図と筋も大変良い。正直そこ歌と踊りいらなくね?ってのはあるものの、今夜はビート・イットにロザーナ等々に羽賀研二はどうか知らんけど、後世に影響与えまくったダイナミズムは伝わってくる。シーン事の色使いサイケな場面展開、エンドロールまで流石に出来は良い。スピルバーグの観るの楽しみ。

鑑賞日:2022/03/28 監督:ロバート・ワイズ


ミークス・カットオフ

ミークス・カットオフ

こっちまで喉渇く。水場から始まり、水場を延々と目指す。照りつける荒野の昼に映画的限界までに暗い夜再現とで不安の4Dみたいな具合。イレギュラー分子挿入で動く、案内人と男達と女達の中から人種を超えた決定権の推移の妙で素晴らしい。からの『続・夕陽のガンマン』ばりの三つ巴。安息の地香るヨシュアツリーっぽいのが出てきて、ようやく一息つける感じ。開拓民のまさに西部劇だわな。川から稜線の謎場面展開やカンテラのやつなんかのトリッキーなのから他の作品同様に基本的に全シーンが美しく決まってるので、映画そのもののクオリティの不安は一切ないケリー・ライカート。ジェフ・グレイスの邪魔しないのに存在感のあるドローンなサウンドも大変良い。先住民の靴の臭いは部室を濃縮した感じ?

鑑賞日:2022/03/27 監督:ケリー・ライカート


レディ・プレイヤー1

80年代を代表する監督に真っ先に名前があがるスピルバーグ。本人自体がカルチャーの一部だった上で、あらゆる日米80年代ネタを詰め込みまくってるからこれはもうアツい。エンターテイメントの作法を元々きちんと分かっていて、膨大な権利問題を完璧にクリアにする事ができる現在のスピルバーグだからこそな具合。で、何処から何処までかは分からないけど、アホみたいに再現度の高い『シャイニング』は『A.I.』でキューブリックに託されたスピルバーグしかやっちゃいけないやつ。これに限らずパロディのクオリティをしっかり保ちつつ、筋もキャラ設定も安っぽいのに何故だかジーンとさせるから流石よね。80年代当時、小学生だった頃に観ていたスピルバーグ作品のワクワク感をほんのり思い出しちゃったわ。H&Mで打ってそうなペラペラのJoy Division Tシャツからの"Blue Monday"のどっちかにしとけはともかく、のっけの"Jump"はこれ以上ないって感じ。書を捨てよ町へ出よう━━━!的な。

鑑賞日:2022/03/26 監督:スティーヴン・スピルバーグ


按摩と女

山は青葉の頃に限るよなぁと白黒でも鮮やかに見えるオンシーズン。ロケ地が塩原温泉との事で伊豆から北上する昔の人間の脚力は凄まじい。で、昨今の弱者像の潮流の真逆を行く様な盲演技と自虐は清々しさすら感じる。「何でもできるんだよ、凄いでしょ」と徳さん、健常者が弱者のポテンシャルを舐めるのは驕りにほかならない。こより攻撃等々で爆発的に笑わせといて、女に対しての按摩、叔父さん、少年とで旅先の切ないやつをそれぞれやる。目には見えない引力は目開きも何も関係ない。そこにちょっとしたサスペンスの味付け。60分でここまで凝縮しつつ、こっちまで匂いがしてきそうな描写、裸足で走るとこも含めた音使いと見事としか言えん。そして傘さして橋に佇む高峰三枝子の絵面が素晴らしい。円盤ジャケもお洒落。

鑑賞日:2022/03/24 監督:清水宏


冷たい水

自分達以外のものへ配慮する余裕がないのが青春だわな。それとなく通ってきた道で理解はするけど、今にしてみると気持ちは少年の父親と一緒で一言「愚か者め」と言いたくなる。無理矢理音楽で演出してたものの、中途半端に時代背景を70年代初頭にこだわらなくても良かったんじゃないかと。ジョン・ケイル+ニコの『内なる傷痕』、途中でぶった切られるけどレナード・コーエンの選曲は評価する。何にせよ、せめて20年前に観てたら少しは共感できた気もしなくはない。

鑑賞日:2022/03/23 監督:オリヴィエ・アサイヤス


お熱い夜をあなたに

飛行機に飛行機で乗り付けるOPからして良い。2世代に渡る情事の図であるものの、ジメっとしたものは皆無でここに埋葬したい気持ちも良く分かる。で、劇中のジャック・レモンと同じく、こっちも異国情緒にみるみる魅せられて行く。1時から4時のランチタイムも7月15日から8月15日までの逗留でも何でも、人間には息抜きが必要だわな。チビでデブでと己を卑下するジュリエット・ミルズもぽんよりして可愛らしい。馬鹿みたいな安っぽい脚本ながら、ラストまでひたすら滑らかな展開で流石。往年のビリー・ワイルダー作品とも劣らない上にヴァカンス気分で最高。

鑑賞日:2022/03/22 監督:ビリー・ワイルダー


シンプルメン

この世はトラブルと欲望なんだけど、そこへ踏み入られずにはいられない。で、最後の動機はみんなシンプル。巡り巡って自分を受け止めてくれる聖母マリアの抱擁に辿り着き、絵画化した様なDon't MoveのラストとKool Thingの下りはやっぱり最高。ハル・ハートリー劇伴も素晴らしい。エリナ・レーヴェンソンのおかっぱ+ボーダー+ブーツ+革ジャンが最強過ぎ。

鑑賞日:2022/03/21 監督:ハル・ハートリー


熱いトタン屋根の猫

虚偽の世界も様々なもんで、汚い真実に良い嘘にと色々。性根が炙り出される家族の危機の1日に錯綜する嘘と真、気の利いた台詞がギュ〜ッと濃縮されている。同性愛風なところは控えめでも、完璧なまでの戯曲で舞台でも映画でもなんでも行ける作りで流石なテネシー・ウィリアムズ。良い身体つきなお年頃で終盤まで孤軍奮闘するリズもとても良かった。んで、タイトルからして秀逸。7年くらい前に観た時に何も理解してなかった自分を叱りたい。

鑑賞日:2022/03/20 監督:リチャード・ブルックス


ジム・ヘンソンのウィッチズ 大魔女をやっつけろ!

ジム・ヘンソンのウィッチズ 大魔女をやっつけろ!

ニコラス・ローグっぽいのかぽくないのか良く分からなかったけれどもなかなか。アンジェリカ・ヒューストンのトラウマ変化な特殊メイクや、ほぼフェルト状態なネズミと本物を使い分ける等の人力の妙とまさに縦横無尽なカメラワークが堪能できる。で、最後には僕の考えた最強な遊戯設備に萌える。絵の中の少女よろしく、こんな状態でも結構な楽しいヨと泣かせる一幕で終わってたらもっと良かった気もするけど、力技な子供向けエンドもアリではある。

鑑賞日:2022/03/19 監督:ニコラス・ローグ


スペインは呼んでいる

スペインは呼んでいる

今回は踏んだり蹴ったりなスティーヴ・クーガン。黙って飯食えないロブ・ブライドンとの英国役者のモノマネ合戦はそのままに、ミック・ジャガーやら異常に特徴掴んでるデヴィッド・ボウイ等ミュージシャンネタ多め。マーロン・ブランドからウディ・アレンにトランスフォームの下りは最高。中年から初老へ向けての幸福の在り方って事で、前作に続いて内なるところではかなり切実で重いもんを秘めている。飯レポ映画と思わせつつ、中年の哀愁を絶妙に描く具合がやっぱりマイケル・ウィンターボトム。で、スペイン飛び出して荒野に1人の図で泣ける。相変わらずな使い回しマイケル・ナイマンも素晴らしい。人の携帯は投げるな。

鑑賞日:2022/03/18 監督:マイケル・ウィンターボトム


陸軍

陸軍省プレゼンツなゴリゴリのプロパガンダ風ではあるものの、そこかしこに見え隠れするものがある。幕末から日清、日露からの日中戦争までのとある北九州の愛國一家を描いている訳だけど、配置された役者達の元々のキャラのお陰(敢えてか?)か全体的ほのぼのしている印象。殆ど人間地雷原で取り扱い注意なお父さんこと笠智衆もどこかほんわかしている。なんだけども、泣いてしまうからと息子の出征式に行かず1人家に残る田中絹代のスーっと表情を変えるシーンから、初めて映画に感情が込められたかの様な具合で、そこからのラストとで一気にグッとくる。むしろ良く検閲通ったなコレ。

鑑賞日:2022/03/17 監督:木下恵介


ウェンディ&ルーシー

爆泣。悪い事が重なり、行き着いた暗がりのあれは超恐怖。それを経て人生どん底からの上向きの兆しと山積み現実問題の塩梅が見事。ラストの涙が止まらんワンコとの一幕も勿論素晴らしかったけれども、2人の安全の砦とも言える車がにっちもさっちも行かなくなったとこで、青い空を飛ぶ鳥のカットに鳥肌。泣き言を言わず現実と貧困に何とか耐えながら生きている劇中のミシェル・ウィリアムズの唯一の願望の如きなシーンで、私に翼があればってのを一瞬で表現する天才的なケリー・ライカート。素晴らしい。

鑑賞日:2022/03/16 監督:ケリー・ライカート


アダプテーション

自分自身をハゲでデブ設定へ脚色(アダプテーション)するところから始める現実のチャーリー・カウフマンのセンス。書けない様を作品にする8 1/2的手法ながら、色んなジャンルを行き交いつつな展開とかなりエンターテイメントしてるっては構築力半端ないねぇ。で、徹底的にやる自己憐憫の沼(メタファーではなくリアルってのがまた)での泣ける目覚めのシーンとか普遍的なものをバチっと入れて、観客をサラって行く感じとかも実に上手い。役に関してはジェラール・ドパルデューより、いるだけで面白いニコラス・ケイジ×2で大正解。

鑑賞日:2022/03/15 監督:スパイク・ジョーンズ


マンディンゴ

安定の裏『風と共に去りぬ』でアメリカのまさに黒歴史。エグい話の詰め合わせみたいな具合だけど白人様はこんなもんだろ。マディ・ウォーターズ沁みる。しかし映画は勿論の事、ポスターの出来が良い。

鑑賞日:2022/03/14 監督:リチャード・フライシャー


喜劇 女は度胸

調停も破壊も再生も全ては清川虹子の掌の上って事でまさに女は度胸。戦争を経験してきた世代が描く平和と生活の賛美の如き洗濯物のパンツのラストでこれまたまさに新世界よりって感じ。笑いと泣きで隙間なく埋め尽くす森崎東。最高。

鑑賞日:2022/03/13 監督:森崎東


博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか

冗談みたいな話だけど、プー○ンが一番好きな映画らしい。各部隊が融通が効かないほどに良く訓練されせっせとミッションコンプリートに向かう反面、機械は地味に最後まで抵抗すると云う皮肉。赤い国の親玉がリッパー状態の疑い&現在進行形でいつ起きても不思議じゃない今日この頃。総統! 歩けますからのWe’ll Meet Againでやっぱりキューブリック最高だわね。因みに90年代中頃に初めて作ったメアドはR作戦の通信暗号から拝借していた。

鑑賞日:2022/03/12 監督:スタンリー・キューブリック


落穂拾い

撮ってる本人自ら始まる現代のグラヌール。食品ロスなんかの様々な問題を扱いつつも、割とニュートラルな立場(視点)を維持しつつなので全く説教くさくない。で、アニエス・ヴァルダの柔軟で活性化してる脳みその良い感じの波動が伝わってくる上にやる事がいちいち可愛いので、ドキュメンタリーながら退屈なシーンは殆どない。気を抜くとすぐ文明に飲み込まれる現代の環境において、よくよく賢い人であらねばってのを思い出させてくれる一本。

鑑賞日:2022/03/11 監督:アニエス・ヴァルダ


コールガール

70年代のNYの裏社会と孤独とって事で、結末まで全部のシーンが既視感あってどうやら昔観てたっぽい。途中でネタバレの、まったりサスペンスでちょっとテンポが悪い気もしなくはない。犯人探しの筋と並行して娼婦業のジェーン・フォンダの変化が描かれる訳だけど、序盤のスレてる都会の娼婦の卑猥なワード連発も父親の顔がチラついて全然興奮しない。ドナルド・サザーランドに優しさを与えて貰いこんな感情初めてってうろたえてても父親の顔がチラついていまいち萌えない。けれども、フルーツ頬張りながらイチャついてる図なんかは微笑ましくて良かった。鼻垂らす演技なんかもやっぱり役者って感じ。なんのかんので全体的には暗いトーンの画作りで嫌いではない。

鑑賞日:2022/03/10 監督:アラン・J・パクラ


網走番外地 望郷篇

健さん長崎へ望郷すって事で、二十六聖人やら見覚えのあるあちこちできっちりロケーションな良質ご当地映画。東映あるあるで続きもので不死鳥の如く蘇り別人になってる等はご愛嬌で、作品自体の出来が良いのでさほど気にならん。「男が怒るのは、一生に一度だけだ」まで展開、討ち入りの純粋な仁義ものから、黒塗りのあいのことの唐突なハートウォーミングなストーリーとで、網走っぽいのは遠い回想だけって具合なんだけど全体の話としては結構面白い。で、禿げてる姿しか知らない殺し屋の杉浦直樹(超格好イイ)との対峙のシーンのどれもが映画のお手本の様。ライターのとこや7針の傷のとこなんかの構図は堪らんね。そして役が変わっても重厚感は変わらぬ流石なアラカン。と、〜ぜぇ⤴︎。

鑑賞日:2022/03/09 監督:石井輝男


チャンス

グルーヴィな『ツァラトゥストラは如く語りき』ともに俗世に放たれた人間モノリスかムイシュキン公爵みたいなピーター・セラーズ。庭の話を深読みして、実態不明なものに踊らされてくれるお上の方々のお陰でミラクルが成立するって云う聖者と愚者ものの見事な風刺映画。放置プレイをきちんとやってのける→スッキリする流石なシャーリー・マクレーン。『人生とは心の姿なり』からのラストの水上の画と実に良い。

鑑賞日:2022/03/08 監督:ハル・アシュビー


楽園の瑕 終極版

時代劇でも、っぽさ満載でスタイリッシュ。『記憶は悩みの源』って事で、みんな愛の飢えやら後悔やらな様で寂し過ぎて死にそう。嘘か真か過去を忘れられる酒で幸福になるかと言えばそうでもなく、忘れた振りっぽいってのがまたツラい。で、ほぼ砂漠ながら、エピソードと鬼画力で季節感をきっちり演出するってのが流石。刮目からのブワッとした展開にちょっとブルッとする。

鑑賞日:2022/03/07 監督:ウォン・カーウァイ


公園通りの猫たち

公園通りの猫たち

MGM風のオープニングは問題ない、スペイン坂のチート物件もまぁトレンディ。パルコにSEED館にまだ新しい感じのシネマライズにと記憶にある形態の渋谷でちょっとノスタルジー。で、ロケーションと時代は良いとして、ドラマ部分は凄惨。ミスド前で踊り狂ってるのは面白かったけど。動物保護団体案件なレベルで体張ったニャンコ達に免じて、2.2点加算。成田から公園通りはスゲェ。

鑑賞日:2022/03/06 監督:中田新一


黄色いロールス・ロイス

ゴージャス。新車から始まり黄色いロールス・ロイス辿る運命を'30~'40年代まで、イギリス→イタリア→ユーゴの3つのエピソードで描く。3つめの「胸が張り裂けたりしないわ、時々傷が疼くだけ」の台詞の如く、ちょっぴり辛い大人な忍耐と『道徳』で構成。大女優3人+大物3人の演技力とそれぞれの話がなかなか良く出来てるので、ロケーションに混じってのスタジオ撮影もさほど気にならん。アンニュイなジャンヌ・モロー、高潔感ほとばしる流石なイングリット・バーグマンの両者共に素晴らしいけれど、全身で可愛いで頭一つ出るシャーリー・マクレーンとイッヌを推す。愛用され最後はアメリカへって事で、現代のファストなあれこれと対極に位置する作品でもある。

鑑賞日:2022/03/05 監督:アンソニー・アスクィス


オー・ブラザー!

公開時以来。ちょいちょいそれっぽいのは映るけど、裏で『怒りの葡萄』の時代とは思えんほど良い感じにコメディしとる。重厚なハーモニーな曲群、序盤のトロッコの盲の爺さんの予言通りとで気持ち良く進む。きっちりとずぶ濡れボーイズからずぶ濡れボーイズへまとめて行く辺りが流石に上手なコーエン兄弟。やりたかっただけっぽいけど、魂を売ったロバート・ジョンソンと見事なクロスロード描写も最高。で、改革派の中身がKKKとかあまりにあんまりで面白すぎる。ヘアが。

鑑賞日:2022/03/04 監督:ジョエル・コーエン


姉妹

先日の『異母兄弟』に続いて。面白いなぁ家城巳代治作品。設定は特需の前くらいだと思うんだけど、上昇傾向でありつつも、戦後の数々のヘビーで暗いエピソード満載。そんな中で全てを明るくしちゃうコンチこと中原ひとみはとっても良い子。図式とすると集団主義の中にひとり個人主義みたいな感じで、キャッキャッした女学生時代の純粋無垢の化身みたいな子が大人世界と正論の通じない社会に溢れる『何故』の洗礼を受けてプロ市民かなんかにならないかだけが心配。対極となる野添ひとみことお姉ちゃんの麗しい設定もばっちり。脚本に名前を連ねる新藤兼人に、望月優子にDV泰ちゃんにと周りも厚い。昭和的な人への思いやりも正しい言葉遣いも、現代から見ていると如何に多くのものを失ってしまったかと思わざるを得ない。

鑑賞日:2022/03/03 監督:家城巳代治


めまい

20年振りくらい。やっぱり若干ヒッチコックっぽくない気もするんだけど、鐘楼等の映像は勿論の事、色んな形態のキム・ノヴァクの設定、話の構成と色んな方向で凄い立体感。渦巻きの極地みたいな着せ替えシーンの亡霊系な緑や扉を開けると花とかの諸々のカラーリングなんかの技巧がとんでもない域。ばっちりなバーナード・ハーマンの音にソール・バスの洗練度最高級なビジュアルとで文句があろう筈がない。で、焦点合ってない演技とかキモい演技とか流石なジェームズ・スチュワートではある。正直、ミッジことバーバラ・ベル・ゲデスの方が色んな意味でイイ女だろ、そっちを選ばなかった災難だわな。カメオは結構イージー。

鑑賞日:2022/03/02 監督:アルフレッド・ヒッチコック


フォート・サガン

農民から没落貴族の時代に上の階級及びサガン砦と名前が付くまでと登りつめた男の話。若い頃の苦労は買ってでもしろって事で、人生で求めるべきものは名誉なのか愛なのか何かってのをひたすら。画面にバーンと広がる砂漠に『アラビアのロレンス』ばりな壮大なテーマ曲、現地における静謐さと過酷さのソレはヨーロッパの戦争とはなんか違くてロマンがあるんだよって感じがやりたいのは分かる。砂漠での極ハードな進軍や手術!は結構な生々しさがあるものの、戦闘がいかんせん小競り合い感が否めない。で、ラ・ブーム2後のまだぷにぷにしてる頃のソフィー・マルソーと、唐突に現れ唐突に絡み、また唐突に現れるドヌーヴ様とで、ちょっとフラフラ気味ではある。そんなかんななんだけど、やっぱり大小シーン問わず要所で決まってる所も多いっちゃ多いアラン・コルノー。

鑑賞日:2022/03/01 監督:アラン・コルノー