Films: Aug.2018『赤い影』ほか
Sep,02 2018 14:30
珍作多めな8月。
『赤い影』はちょっとした衝撃だった。
そして、やっぱり最高な『ワイルドバンチ』、ソクーロフの『ファウスト』も良かった。
観た映画: 2018年8月
映画本数: 17本
ある女の存在証明
確かなものを追求するってのはキリがないんだよな。やっぱり盲目のまま行き着くところまで行くんだろう人類は。と、アントニオーニが冷ややかに語っている様にも思われ。五里霧中感は半端ない。
鑑賞日:2018/08/28 監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
夜行性情欲魔
ソフトロックと古城とエロフィルムの謎組み合わせ。それぞれ問題を抱えた3人+1人のエロい3本立てで好色四重奏って事らしい。みんな記憶は曖昧なんだねぇ。3歳児にはドラゴンに見えちゃうのもしゃーない。で、楽しい無限ループ。ややこしい筋よりも図書室等々の圧倒的ロケーションとサントラだけでも充分楽しめる。珍作。
鑑賞日:2018/08/26 監督:ラドリー・メツガー
パフォーマンス
サイケでドラッギーでスウィンギング・ロンドン。まだキラキラとして妖艶さすら醸し出してる頃のミック・ジャガーとブリテッシュ全開なジェームズ・フォックス。ドナルド・キャメルとニコラス・ローグのイケ過ぎてる映像と縦横無尽に描き出される二面性にクラクラしてくる。最高のパフォーマンスとは理性を捨てる事なんだそうな。なるほど、妙な説得力はある。悪魔に魂売りたくなるな。良作。
鑑賞日:2018/08/23 監督:ドナルド・キャメル, ニコラス・ローグ
12人の怒れる男
シドニー・ルメット版の完全なる密室劇とは異なり、ちょいちょい外気が入ってくる。全体としてかなり上手いこと現代のロシア事情(キャラ含む)も絡めているので、単なるコピーではなく、あくまでリメイクって事で外を絡ませるのもアリな気がする。それにしても、やっぱりオイシイところをかっさらって行くニキータ・ミハルコフ。全員の自分語り云々はあるものの、この作品自体のテーマが人の善意のあり方を問うものである故にその辺はしっかりキッチリやってたと思われる。また、最初の11対1のざわ・・・ってところから最後まで割と細かやかな演出がされており、ニキータ・ミハルコフ作品らしい重さがあった。熱い語りと膨れ上がる善意の塊みたいなもんは変わらずに表現されており、とてと良いんじゃないでしょうか。良作。
鑑賞日:2018/08/21 監督:ニキータ・ミハルコフ
黒い牡牛
とてもじゃないけど、今夜はステーキだ!なんて言えない雰囲気になってくる...汗。展開が早い割には余計なところの描写が長かったり、子役の演技が絶望的にわざとらしかったりする。ものの、牛と子供とメキシコ国民の闘う姿勢に若干熱い気持ちになる。とにもかくにもワラワラと画面を埋め尽くすアニマルなファンタージェンだけでも観る価値はあるんじゃないか。良作。
鑑賞日:2018/08/18 監督:アーヴィング・ラパー
ファウスト
取り敢えずメフィストフェレスは出てこない。生きる意味を追求しつつ、探すところを間違えまくるファウスト。高潔さをつくろっていても一皮剥けば醜悪な欲にまみれているのは人間皆同じ。『人は自分自身を本気で欺く事ができる』とどこかで読んだけども、その悪魔的欺きが発せられる時にスタンダードサイズ内の空間を歪ませている様にも思える。ファウストの如く皆が悪魔に魂を売りまくったら大変な事になる訳で、純粋さを殺すからこそこの世界の秩序は保たれているなどとぼんやり考えてしまった。傑作。
鑑賞日:2018/08/16 監督:アレクサンドル・ソクーロフ
ワイルドバンチ / ディレクターズ・カット
Let's Go!!キリッ って事でサム・ペキンパー作品の中でも特に好きな今作を久々に。後のプライマル・スクリームの曲名にもなる『If They Move, Kill 'em』の最初から引き込まれる。火薬や弾丸の量も凄まじいもんだけども、一発二発と空間を埋めてカオスへと発展するあのリズムにゾクゾクっとくる。敵ってのは数じゃないんだゼ。傑作。
鑑賞日:2018/08/15 監督:サム・ペキンパー
野獣死すべし
ラスコーリニコフ的発想から始まる奴は手抜かりがあるッ!!てのがお約束。別に優作版のも大して好きではないけれど、今作はそれにも増してスリリングさがない。この時期のサイコな役柄の仲代達也はそれだけでウザいくらいの存在感なんだけども、全体的になんだか説明的で演出が野暮ったい。更には佐藤允と白川由美の役とか無駄過ぎて切ない。とは云え、冷酷かつ淡々とミッションを遂行する下りなんかはなかなか好きだったりする。仲代の猫パンチが見ものの一本。
鑑賞日:2018/08/14 監督:須川栄三
ドアをノックするのは誰?
最近『リバティ・バランスを射った男』を聴きまくっていたら、劇中で映画の言及をされていてなかなかタイムリー。スコセッシの初期衝動ってな具合で荒いけども、奇抜なシーン多数。相手の過ちを許せど、どーにも上手く噛み合わないクリスチャンでちょっと古風なハーヴェイ・カイテル。自身の罪深さを棚に上げまくった『The End』のシーンは『地獄の黙示録』と張るくらい好き。良作。
鑑賞日:2018/08/13 監督:マーティン・スコセッシ
ギャルソン!
Hが発音できないとか、「ドイツ警察だ!」等々、色々とフランスっぽい。個人主義よろしく他人に興味がない極厚防壁な男に誤解され、惚れた女たちとの付き合いは良い人止まりと、華麗なるステップで給仕する姿とはちょっと異なるアレックスことイヴ・モンタン。そのアンバランスさを持ち合わせつつ、夢に邁進するってのが人間くさくて格好良い。この人には陽気な雨の感じがとても大事なんだろうね。とても良かった。
鑑賞日:2018/08/11 監督:クロード・ソーテ
日本の夜と霧
久々の鑑賞。追悼
津川雅彦って事で安保闘争に従事する役どころの作品を敢えてチョイスしてみる。表面的には晴れやかな披露宴会場を帰りの会化させる、デモ帰りの起爆男こと津川と若き日の大島組の面々。蓋を開けてみればどいつもこいつもあー言えばこー言う状態で世にも見事な内ゲバ見本市となる。理想実現の為の道筋を誤った末の若者たちの空虚さたるや、暴き立てるのも可哀想な気もしなくはない。うっすら思うのはアレだな、周囲中を敵認定しまくるよりはピースフルなヴァイブスに身を任せたり距離を置く、ある意味麻痺的な状況こそが幸せなのかもしれん。とりあえずお前らは居残りで演技について自己批判せよって感じ。傑作。
鑑賞日:2018/08/09 監督:大島渚
20センチュリー・ウーマン
断然トーキング・ヘッズが好きな自分はバリバリの軟弱者って事なんだろう。だいたい20世紀('70年代末)の女性たち。人間的には埋めたいと思う、けれども埋められな世代や文化のギャップ。一つ言えるのは無理して埋めるもんでもないと思うし、その時代に生きていなければ全てを理解する事は難しい。その多様性こそがアメリカ様なんだゼって事で。結果はともかく20世紀を経て時の過ぎ行くままに成り立った21世紀の今のアメリカから振り返るとちょっと複雑ではある。共有ではなく尊重するって事の難しさは今の時代だからこそ考える必要がある気はしなくもない。
鑑賞日:2018/08/08 監督:マイク・ミルズ
赤い影
予知と時間でSF(すこしふしぎ)なニコラス・ローグ。喪失の痛手は回復したかのように見えても翻弄する。そして弱いところをジワジワと突いてくる宿命と見ようとしない者が踊らされると云う皮肉。ゴボゴボと沈みそうでいて迷宮で閑散とした陰鬱な冬のヴェニスで表現される夫婦の状態の見事さ。水中から出て深い呼吸をする為のような濃厚過ぎる哀しい哀しいカラミ撮りと鬼編集がまた素晴らしい。後のアート・ガーファンクルのケツと云い巧い。しかしまぁ、あのドワーフは怖酷い。傑作。
鑑賞日:2018/08/07 監督:ニコラス・ローグ
存在の耐えられない軽さ
プラハと云うか人生の春的な。十代かそこらで観た時の印象は長いってのとエロいくらいしかなかったけれど、歳取ってから改めて観てこんなに良い作品だったとは。一体何を観てたんだろねって、多分ジュリエット・ビノシュ他のエロしか見てなかったんだろう。普通の幸福感は今だからこそ良く分かる。脇毛があっても超絶キュートなカミさんと、まして野山とトラクター付きなんて最高だな。傑作。
鑑賞日:2018/08/06 監督:フィリップ・カウフマン
ゾンゲリア
マッドだねぇ。超が付くほどベタなんだけども、なかなかに忙しい展開で最後まで飽きずに観られる。マルチなフィルム映写シーンなんかはかなり良い画だと思われる。ヒプノシスみたいなデザインのジャケとちょっと違和感あるけど哀しげなテーマも結構好き。良作。
鑑賞日:2018/08/03 監督:ゲイリー・シャーマン
デ・パルマ
イケてるデ・パルマ作品をイケてる本人の解説を交えて初期から淡々と追う。バーズみたいなイケてるテーマソングのGreetingsがデビューと初めて知る。久々に観たい。傑作と限りなく駄作と振り幅が大きいけども、画面分割と奇抜なカメラワークとがあればデ・パルマ作品として成立しちゃうのはある意味凄い。ご自身で仰っる通り、確かに模倣ではない形でヒッチコックに追従する一人ではあると思われます。
鑑賞日:2018/08/02 監督:ノア・バームバック
復讐のダラス/怒りの用心棒
この時代ににアメリカ本国じゃダラスで大統領暗殺ネタなんてできないだろうねぇ。不自然を通り越してアヴァンギャルドな感じさえする遠近法とクドいズームを多用のマカロニでスパゲティ。筋もなんだかズルズルな具合で、元々ジュリアーノ・ジェンマが好きじゃないのでいささかダルかった。この後、トニーノ・ヴァレリがどこで化けるのかが、むしろ気になる。
鑑賞日:2018/08/01 監督:トニーノ・ヴァレリ
category: 映画レビュー
tags: 2018年映画レビュー, サム・ペキンパー, ニキータ・ミハルコフ, ニコラス・ローグ, ミケランジェロ・アントニオーニ, 大島渚