Films: Nov.2018『愛人/ラマン』ほか
Dec,02 2018 13:00
キワモノ多めな11月。
新藤兼人作品の安定度は勿論として、マルグリット・デュラスを読んだ後の『愛人/ラマン』も格別。
で、『雨のしのび逢い』もなかなか。
そして初鑑賞で圧倒的だった『欲望という名の電車』。凄まじい。
観た映画: 2018年11月
映画本数: 18本
禁断のエチュード マルグリットとジュリアン
まぁトリュフォーが撮ってたらどうなってただろうと思わせる題材ではある。足フェチどころじゃないぞ。テーマは過激だけども露骨な露出も(何がなんでも)少なくさせる事でかえってエロティシズムは増していたと思われる。アナログな静止シーンや時代錯誤なヘリ等々、芸術的な品のある方法へ持っていきたいのは分かるけども、そっちがちょいとイヤラシイ気もする。ドラマチックな逃避行の末に、なんだか火の鳥みたいな感じに着地するラストは嫌いじゃない。
鑑賞日:2018/11/30 監督:ヴァレリー・ドンゼッリ
悪夢の惨劇
割とダルダル。タイトルでネタバレしてエンドロールのSweet Child o' Mineで妙に合わせてくるみたいな。VHSとCDとMTVがあるゼって台詞が爆発的にツボった以外は、まずまず。
鑑賞日:2018/11/28 監督:アンドリュー・フレミング
雨のしのび逢い
原作のモデラート・カンタービレは読んでないけれど、どこを切ってもどうしようもなく漂うアンニュイなデュラス感。桟橋も何やらメコン川に見えてくる。映画史に残るレベルの笑っちゃうくらいにさりげない登場のジャン=ポール・ベルモンドと生きながらにして瞬間的に死を表現してしまうジャンヌ・モローと一見の価値あり。月光みたいなディアベリのソナチネも実に合う。良かった。
鑑賞日:2018/11/27 監督:ピーター・ブルック
影の軍隊
絶望的に寒い。暗い画面と共に描かれるハードな状況。その全てが傍観者的視点から淡々と描写されるのにもかかわらず、簡単には風と共に去らんぞと云うグツグツした不屈の闘志を感じさせる。ものの、何やら観た後は虚しさだけが残る感じ。良作。
鑑賞日:2018/11/26 監督:ジャン=ピエール・メルヴィル
カンザス・シティ
いや可愛いな、ジェニファー・ジェーソン・リー。超物騒な感じなのに陽気なジャズが流れてるだけで平和な雰囲気になる。アルトサックスバトルを見守る少年が後のバードとか、ちょっと胸熱。ヴィト・コルレオーネっぽいハリー・ベラフォンテと今作では赤毛なミランダ・リチャードソン、出番少なめながらキレ演技で存在感を発揮するブシェミと大変よろし。ロバート・アルトマンのこのカオス感、最高。
鑑賞日:2018/11/24 監督:ロバート・アルトマン
レディ・バード
OPが怒りの葡萄ラストで号泣するとこからってのが冴えてる。まず行き場を失った人々を描く怒りの〜から始めといて、実は自分のホームを持っているのに隣の芝が青く見えちゃう少女の回り道を描くと云う絶対的なセンス。堂々巡りした末に今感じているこの悲劇は大した悲劇じゃなかったと気付いちゃう事が大人になるって事なんだな、やれやれ。役者のみならず、監督業でもかなり良い感じのグレタ・ガーウィグ。
鑑賞日:2018/11/22 監督:グレタ・ガーウィグ
悲惨物語
サド原作をベースにしたって事だけども、なんか話が近いような遠いような。とりあえず母親は出てこないし、映画としては途轍もなく悲惨な出来な気がしなくもない。ものの、しつこく流れるお洒落ラウンジと体育座りと爆毛で総合的には最高。
鑑賞日:2018/11/17 監督:ジェス・フランコ
Ryuichi Sakamoto: CODA
平和じゃないと音楽ができないってところから始まって、ちゃんと行動しているからこその説得力。教授に対してのシンセで電気使ってるだろって反論はあまりに低次元になるわな。過去の映画音楽に加えて、近年(ちょっと古い気もするけど)のアルヴァ・ノト、フェネス他、老いも若いも問わず大勢の音楽家とのコラボ等々も含めて、しっかり音楽に向き合う姿勢がそこらの老いたアーティストとは異なる。BWV639のコラールを自分流に表現する教授。政治的発言はともかく、そんなところがやはり尊敬に値する。asyncメイキング的意味合いとしても非常に興味深かった。
鑑賞日:2018/11/15 監督:スティーブン・ノムラ・シブル
ダーティ・セブン
ザコキャラたちの扱い的に、とりあえず邦題はよろしくないなぁ。要塞奪回までの流れは良くも悪くも割とまったりで緊迫感はない。銃撃戦もなんだか雑な感じなんだけど、最後のジェームズ・コバーンの死ぬほど格好良い台詞+やたらと壮大なテーマだけで全ての印象が覆った感がある。黒くなるまでそこでマッチ擦るってのも結構好き。
鑑賞日:2018/11/14 監督:トニーノ・ヴァレリ
黒いジャガー/シャフト旋風
一応、グルーヴィ。ファンキーでお洒落な踊り子やら前衛的な濡れ場等々の楽しいシーンは沢山あった。ちょいと長めなアクションもバイィンとなるテンプレっぽいカーチェイス含め良いのではないかと思われる。ものの、シャフトの銃の扱い方が絶望的に素人臭くてダサいのが最大の欠点な気もしなくはない。そう考えると銃口向けるだけで威圧感を出すクリント・イーストウッドって凄いなとストーリーそっちのけでボンヤリ考えてしまった。アイザック・ヘイズのテーマは切っちゃったのも残念。
鑑賞日:2018/11/12 監督:ゴードン・パークス
三国志
げぇっ! 俺の知っている三国志じゃない。士官のシーンからめちゃくちゃでいささかゲンナリする。お前は呂布かってなくらいに小物感丸出しの関羽&張飛の二人を相手にする。時代は端折りまくるわ、あんまり頭が切れなそうな孔明だわ、五虎大将軍の残りの二人は空気だわの割に昔は良かったみたいな感じで胸熱されてもいまいち乗れん。三国志って事を抜きにすれば、サモハンと目の保養のマギー・Qとでまずまずなところもなきにしもあらず。んで、あれだな、劇伴はモリコーネに土下座しなきゃいけないレベル。
鑑賞日:2018/11/11 監督:ダニエル・リー
ブラックボード
久々の鑑賞。スクール☆ウォーズくらいの時代。社会問題はお手のものの新藤兼人監督。他の作品に比べると若干薄味は否めないけれども、勧善懲悪に陥ることなく問題の本質を流石にキッチリ提起する。ツッパリ連呼とサザン攻めでゲシュタルト崩壊気味なものの、甘酸っぱい青春要素も盛り込んでくる抜け目なさ。そして天才的に掃除婦を演ずる乙羽信子と財津一郎の存在感に感嘆する。けどまぁ、色んな意味で佐野量子無双の一本。
鑑賞日:2018/11/10 監督:新藤兼人
愛人/ラマン
原作を読んだので鑑賞。マルグリット・デュラスの時空超えまくるけれども美しい文体が見事に映像化されている。手すりのイマージュ+お互いが見て見られている事を知っているって事がキッチリ表現されているので、言うことなし。デュラスの心の声(ジャンヌ・モロー)もなかなか。何度観てもショロンの男の豆腐メンタル具合は同情できないけどね。外出時にヘッドフォンで聴くと確実にアンニュイ気分になれるガブリエル・ヤーレのテーマもまた素晴らしい。傑作。
鑑賞日:2018/11/09 監督:ジャン=ジャック・アノー
注目すべき人々との出会い
言ってる事が高尚すぎてよく分からんけれども、本に音楽に我が家のプチアイドル的存在のG・I・グルジェフ。そんな彼の真偽の程がいささか怪しくもある自叙伝の映像化って事で、偉大な俺の偉大な道程がどこまでもドローンなサウンドと共に何やら壮大かつ怪しげに描かれる。で、後半には胡散臭さMAXで異次元レベルで様子がおかしくなる。しっかり神秘的雰囲気は醸し出されてはいるけれど、書籍と同様にやっぱりどこかふんわりしている印象。でもそれが良かったりもする、何故だか分からないけれど。そんな感じ。
鑑賞日:2018/11/08 監督:ピーター・ブルック
黒いジャガー
アイザック・ヘイズのイケてるテーマ曲とサントラはしこたま聴いたのに、何故だか今のいままでオリジナルの方を見ていなかったと云う。OPEDはまぁ、あの曲出されちゃ否応なしにアガるけども、全体的にはなんかグダッとしている印象。しかしながら、瞬間的に格好良すぎる台詞は所々にある。と云う事で、'70年代的なお洒落で黒々しい感じは勝新の顔役とか警視-Kにつながるものがあるので、サミュエル・L・ジャクソンのリメイクよりは好き。ライトォォン。
鑑賞日:2018/11/07 監督:ゴードン・パークス
落葉樹
久々の鑑賞。うーん、喪失。トトロにも出てきそうな失われた日本の風景、そしてマザコン映画としてはトップクラスの出来映え。鬼婆から狂気の演技等々の振り幅の広い乙羽信子だからこその底無しの愛情表現、動かざる事山の如しながらも、無念の化身みたいな財津一郎が醸し出す妙な存在感と両者共に圧倒的。そんな監督自身の原風景とも云えるものへの郷愁を毎度お馴染み蓼科の新藤邸別荘より伝える、くたびれた小林桂樹。土手シーンのバリエーションだけで物語る新藤兼人の凄さ。素晴らしい。
鑑賞日:2018/11/05 監督:新藤兼人
欲望という名の電車
スカーレット・オハラからの超が付くほどのご乱心と云った具合。世の中は混乱に満ちているとアナタが言ったら説得力があり過ぎる。原作が先日、読んでいたテネシー・ウィリアムズとなかなかタイムリーだった。凄いな、エリア・カザン&ヴィヴィアン・リー。★10コで。
鑑賞日:2018/11/03 監督:エリア・カザン
黒い警察
全然関係ないんだろうけど、何やら拭えない大映感。おまけに主人公も若干、田宮成分が入っている。イタリア映画特有のアフレコ具合で前半はまったりしていたものの、後半は筋と演出が加速。右傾化を目論む連中と私設警察の粛正とでどんどん盛り上がってくる。己が正義の世直しの形のいかに多様な事か。流されて...のオネーサンと最近マイブームのステルヴィオ・チプリアーニのメロウな劇伴とで終わってみれば大満足の一本だった。
鑑賞日:2018/11/02 監督:ステファノ・ヴァンツィーナ
category: 映画レビュー
tags: 2018年映画レビュー, エリア・カザン, トニーノ・ヴァレリ, ロバート・アルトマン, 新藤兼人