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草原の実験

Films: Jun.2019『草原の実験』ほか

Jul,03 2019 1:00 PM

梅雨で気だるいせいか妙な作品、妙なチョイスが目立つ6月。
原作を読んだ後の再鑑賞で、『エデンの東』と『』は印象深い。
どちらも原作の素晴らしさには遠く及ばない感じだったけど。
安定のフランク・キャプラの『群衆』とサム・ペキンパーの『砂漠の流れ者』は文句なしな感じ。
バート・ランカスターがパン一で走る『泳ぐひと』はすごい変。そしてすごい哀しい。
そんなかんななラインナップでロシアのアレクサンドル・コット監督『草原の実験』、
ピーター・グリーナウェイの『プロスペローの本』は別格だった。

観た映画: 2019年6月
映画本数: 19本

魔術師

ちょっとダラっとしていたものの、映像の魔術を使いまくるラストで覚醒。色んな顔、顔、顔。内に秘めたる欲望は顔じゃ分からんよと。

鑑賞日:2019/06/29 監督:イングマール・ベルイマン


化身

劇中ではイイ女になって行く設定の黒木瞳であるけれど、序盤が一番エロ可愛い。藤竜也は良く見る藤竜也って感じでムフムフ言ってる感じ。で、凄い超展開。からの竜也辰夫のWたっちゃんの反省会とかしょーもない。現在じゃあちこちからお叱りが来そうなバブル期東映な具合。割と潔い方向な『男はつらいよ(辛過ぎるだろ)』なんだけど、どうなんだろ。店の名前がマノンとな。別荘物件が一番魅力的だった。

鑑賞日:2019/06/27 監督:東陽一


フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法

食い物の内容と比例している感は否めないな。貧しくとも豊かさを持てる人はいる。アメリカ及び資本主義の現実ですって言われても何もかもが逃避で不快にしかならん。

鑑賞日:2019/06/25 監督:ショーン・ベイカー


エデンの東

中学生の頃以来。迫真のジェームズ・ディーン、変なカメラワーク、そして音楽も良いんだけど、『ティムシェル』はどこ行った。完全に無き者とされているリーの東洋思想とサミュエルがアダムを囲うって図式がないとやっぱり物足りない。そしてアダムとチャールズ兄弟とその親父との因縁からの双子の命名シーンがないとカインとアベルテーマもあんまり重みがない。超重要な『汝、治むることを能う』の言葉の追求はなくして、何やら軽やかに選択の自由があると無理矢理まとめてる感じなのも如何なものか。毒婦感の極薄なキャシー(ケイト)の扱いもいまいち。良いシーンも結構あるんだけども、第4部だけだとやっぱり中途半端な感は否めないな。そんな訳で設定を結構パクってるタッチを1話から見直す(今カッちゃん死んだとこ)事で充足感を得ようとする今日この頃。

鑑賞日:2019/06/24 監督:エリア・カザン


プロスペローの本

デレク・ジャーマンのと甲乙付けがたい。話の筋は完全なるテンペストなのに何やらもの凄いものに昇華させているピーター・グリーナウェイ。古典に全く新しい生命を吹き込む、まさに創作って言葉が相応しい。卑猥じゃないですから、妖精ですからって云う数多の丸出しも別の意味で凄い。クネクネ動く麿赤兒みたいなキャリバンもなかなか。何書いてもマイケル・ナイマンになるってのも凄い絶頂期のナイマン曲。素晴らしい。そんなかんなの詰め込む方の美学もここまでやられたら拍手したくもなります。

鑑賞日:2019/06/23 監督:ピーター・グリーナウェイ


ソウル・パワー

JBが出て来るまでが長いけども、どいつもこいつもグルーヴィ。ルーツ回帰なザイール'74の模様で色んな意味で熱量が凄い。そんな中でテンション下げ気味のビル・ウィザースで何故だか泣きそうになる。アリvsフォアマンに合わせての開催って事でちょいちょいモハメド・アリの熱いトークも挿入。どの演奏聴いても勝手に腰が動き出すけども、JBだけは圧巻過ぎて見入っちゃう。

鑑賞日:2019/06/21 監督:ジェフリー・レヴィ=ヒント



デュ・モーリエ原作を読んだので久々。結構話と設定が違くてちょっとダルい(特に最初の一時間)のだけれど、ジャングルジムのカラスの下りとかカモメと俯瞰のところなんかはやっぱり圧倒的。数の恐さと音の恐さのお手本みたいな映画だな。勿論タイトルバックもお洒落。カメオはワンコに目がいって見逃すよね。

鑑賞日:2019/06/20 監督:アルフレッド・ヒッチコック


セールスマン

建前で反米の中身は親米風ではありつつも、性的タブーと恥の概念は被害者加害者、男女共により強いお国柄の様子。それを無視する形でのハンムラビ法典的復讐の結果が生み出す寓話的な立場の逆転劇とで昨今のイランの複雑な現在を堪能。あれもこれも内緒で臭いものには蓋をしちまえと古今東西ありそうな話だけれども、ビニールで蓋をした中からちっこいニャンコが出てきたのには超ホッコリ。期待のアラビアンな飯は出て来ず、パスタ!!(結構美味しそう)なのがちょっと残念だったな。いずれにせよ、アーサー・ミラーちゃんと読まないと。

鑑賞日:2019/06/18 監督:アスガー・ファルハディ


たかが世界の終わり

息も詰まる様な暑さと感情の交錯で凄い緊迫感。沸点低めにやり合う感じがグザヴィエ・ドラン作品って感じ。イレギュラーな事態で良くない事があるくらいは各々動物的に感じつつも、空白に等しい家族間の埋め合わせを愛情表現だったり怒りだったりで世にも不器用に修復作業を試みる。崩壊のトリガーともなる街への羨望の裏返しの怒りと喪失の恐れとで複雑にかき乱されまくるヴァンサン・カッセルに特に同情。無理に分かり合う必要のない事柄が世の中には沢山ある。しかし、何が起きても「この愛は誰にも奪えない」と言い切るマイ・マザー感にちょっとグッとくる。
飲ま飲まイェイ!

鑑賞日:2019/06/16 監督:グザヴィエ・ドラン


ハリーとトント

茶トラが出てくる映画は名作が多い(別に我が家のネコが茶トラだからって訳ではない)。おまけにビル・コンティっぽいサントラの映画が観たいなぁと予備知識ゼロでチョイスしたらご本人のミラクル。そんなかんなの路上にてフィーリング全開の作品。居場所を失ったり人と別れたりする事は新たな場所を見つけたり知らない人と出会うチャンスなんだと超ポジティブ。会話は成立しない?
でも意思の疎通はできるぞと、老いた者同士の旅。ただ老いる事と歳を重ねても尚、経験値を上げる人との違いがここにはある。ラストの茶トラ再びで涙腺崩壊。

鑑賞日:2019/06/15 監督:ポール・マザースキー


泳ぐひと

今日はみんな様子がおかしいナと盛大におま言う案件。遠方から近所へと事情により詳しい人々がいる渦中へ赴くぶっ壊れ気味かつ何やら股間が目立つバート・ランカスター。辿り着いた先の平和な共営プールの悪夢っぷりが凄い。海パンと素敵な思い出だけを所有しつつ進む姿に持たざる者の自由はない。およげ!たいやきくんみたいな挫折感の映画だな。鬼フォーカスなサイケな映像に大袈裟風だけど、時々ロジャー・ニコルズみたいになる劇伴も大好物。

鑑賞日:2019/06/13 監督:シドニー・ポラック


バスケット・ケース

バスケットケースの言葉の意味を調べて超納得。グロの塊と云えど、生態は性欲の強い凶暴なニャンコみたいなモンだと思えば可愛く見えない事もない。童貞の壁を突き破る事の出来ない若者+1のあまりにあんまりな悲しいお話。時折シュヴァンクマイエルみたいになる。

鑑賞日:2019/06/12 監督:フランク・ヘネンロッター


草原の実験

サイレント(台詞なし)でも通用するってのはとても大事な気がする。それだけにとどまらず、どのシーンを切り取ってもパーフェクト過ぎる構図でちょっと圧倒的。オープニングから嫌な予感しかしないんだけども、牧歌的な静かな暮らしを淡々と積み上げる様に描きつつも、時折挿入される太陽のメタファーとで実に上手くラストに繋がる。結構理想的な生活なんだけども、ロケーション的にはちょっと遠慮したい。確認くらいしなさいよ。そんな辺りが恐ロシア。しかし、とんでもない美少女だったな。

鑑賞日:2019/06/11 監督:アレクサンドル・コット


友は風の彼方に

もはや潜入捜査と哀愁とホモ臭さ漂う漢の友情と云ったら香港的イメージがある。レザボア・ドッグスの元ネタって事で納得できるけども、全体としてらちょっとダレるのは否めない。ダサ過ぎるヴィジュアルも何やらバブル期の東映作品を観ている気分に陥る。良いシーンも沢山あったけども、やっぱり男たちの挽歌とは比べ物にならん気がするなー。怒りの煉瓦で感情の爆発は良かった。

鑑賞日:2019/06/10 監督:リンゴ・ラム


フィアレス

死の恐怖心を失う事の恐怖。他者への癒しの裏側で死の実感を取り戻す為の行程の苦しみたるや想像を絶する。文字通りにイントロ...ドンッ!!な"Where The Streets~"のとこやらラストのカタルシスとかなり震えまくる。今にしてみると地味に面子も豪華。これは良い再生の物語。

鑑賞日:2019/06/09 監督:ピーター・ウィアー


砂漠の流れ者

超ホッコリする復讐劇。なんだけど、復讐するは我にありって事で天罰的な恐ろしさもある。与えて奪うとぼやく牧師さながら。更には善人と悪人、新旧の時代の中間、町との中継地点を生きるって事で実に絶妙な設定。で、水が低きに流れるが如くに西部開拓時代は着実に終焉に傾く。デ・パルマばりの分割タイトルバックからして好きな感じ。

鑑賞日:2019/06/07 監督:サム・ペキンパー


バチ当たり修道院の最期

煩悩だらけで良いじゃない。あらゆるルールを破り何かを愛するってのは実に人間らしい(人に迷惑かけなければ)。尼寺の閉塞空間であらゆる自由を描く80年代なアルモドバル。最高。

鑑賞日:2019/06/06 監督:ペドロ・アルモドバル


ファイブ・イージー・ピーセス

誰よりも才能がありつつも、それを活かす適切な居場所を見つける能力のない男。妥協と違和感の間で揺れ動きまくる男心。それでもそれが正しい状態じゃないってのだけは分かっているから、何かしらの変化を渇望しやっぱり逃げる。デカダンスでありつつ、見方を変えると結構前向きな一本だったりする。渋滞のピアノシーンはとても良い。

鑑賞日:2019/06/04 監督:ボブ・ラフェルソン


群衆

あらゆるイデオロギーも蓋を開ければこの世は利用する側と利用される側で成り立っている。キリスト教的終局地点の隣人愛と云えど太古の昔から散々利用されてきている訳で、迷える子羊達は自由を差し出した上で躍らされ続ける事を選ぶそんな世界。それでも尚、くすぶる群衆の火を絶やさず理想に近づきたいってのも分かるけど、『汝の敵日本を知れ』の前ではちょっと説得力減るかなぁ。ラストがフニャっとしていたし。でも「新聞を読まなくても世の中が腐っているのは知っている」って台詞は良かった。所有する事が自由からの悪循環を生み出すってのもまさにその通りだよね。

鑑賞日:2019/06/03 監督:フランク・キャプラ