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サタンタンゴ

Films: Dec.2020『サタンタンゴ』ほか

Jan,01 2021 18:00

師走のせわしなさを久々に味わいつつ、あんまり映画モードではなかった2020年の12月。
otomの新作新作作業が中盤辺りで落ち着いてからようやくポツポツ観始め、良作と傑作のバランスはまずまずと云った具合。
月に一本は観ている感じのビリー・ワイルダー監督『フロント・ページ』、ハワード・ホークス監督『脱出』は当然の如くと云った感じで素晴らしい。
マネの絵画を映像化してしまうジャン・ルノワールの『草の上の昼食』は『ピクニック』同様美しい。
『ロビンソン・クルーソー』と『流されて...』が混じった具合なマルコ・フェレーリ監督『ひきしお』のお洒落美術と'70年代イタリア的デカダンスも大好物。
25年振りくらいのヴィム・ヴェンダース監督『時の翼にのって / ファラウェイ・ソー・クロース!』は思い出補正抜きにしても実に良くできた作品と思われる。U2の面々が天使化する映像が観たいのにどこにもなくて悶々とする。
そして後半のやばいの1本目はケン・ラッセル監督『アルタード・ステーツ 未知への挑戦』。アイソレーション・タンクと幻覚剤を組み合わせた科学者の話(実話を元に)って事で、筋もとんでもないけども松本俊夫級な映像も凄い。
後半やばいの2本目は時間のある時にと考え、敢えてみたいな感じで2020年ラストになったタル・ベーラ監督『サタンタンゴ』。
終末感のあれこれとそれらを表す様な寒村の映像とで観てるだけで凍えそうな7時間18分! で、天使の呼ぶ声じゃなかったかと云う鐘の音が脳裏に焼付く。
流石に3日間に分けての鑑賞だったけれど、劇場に足を運んだ人はさぞかし苦行だったと思われる。インターミッション3回とかとんでもないよねぇ。
そんなかんなで当分長い映画は観たくない今日この頃。

2020年に観た映画の総本数は『312本』でした。
ここ数年は365本に到達できていないので、2021年はもうちょっと色々観たい。

観た映画: 2020年12月
映画本数: 16本

サタンタンゴ

傘がない。と云うか雨に構ってられない程に村人達に終末感が降り注ぎまくる。タンゴのステップの如く進んでは下がるな構成で視点が変わり世にも惨憺たる物語を浮かび上がらせる。幼い女児の腕力で網に突っ込んだと思いきや、巧みな話術と手口で人心を捉える奴もいる。罪悪感に幼い身を滅ぼすのに比べると、他人の夢につけ込んだ上に感謝されるまでに熟成されたものってのはまさに悪の所業。寧ろ蓋を開ければ今日の世界はそんな具合と云う事で、アポカリプティックサウンドが鳴り響きまくるのがヤバい。酒場の壊れた蓄音器みたいなヤツと最後の教会のヤツもまた終末感が凄過ぎ。窓に板打ち付けるだけじゃどうにもならんだろ...。ともかく凄いもんを観た。

鑑賞日:2020/12/30 監督:タル・ベーラ


音楽

7年で4万枚を1人で描き上げたとの事で写経の域。色んな要素が加算されて行くグッド・ヴァイブレーション。名作ジャケ詰め合わせのシーンに止まらず、マイルス級な縦笛、からの昇天で岡村ちゃん降臨とかちょいと鳥肌が立った。どう見ても形態が違うのにちゃんと坂本慎太郎を感じるってのも凄い。素晴らしい。

鑑賞日:2020/12/26 監督:岩井澤健治


アルタード・ステーツ 未知への挑戦

感覚遮断タンクと幻覚剤の素敵な出会いって事で、実際のモデルがあるらしい。深淵を覗いた先に見たものは愛だよ、愛(ドカーン!)ってピースフルなラストは嫌いじゃない。で、ずっと眺めていたい気合いの入りまくった激ヤバトリップ映像。

鑑賞日:2020/12/25 監督:ケン・ラッセル


捜索者

OPからEDへの持って行き方が出来過ぎで序盤の時の流れの分かりにくさがどうでも良くなるレベル。ケアしながらって云う裏話はともかくとしても、開拓者寄り過ぎな話で完全悪者扱いな原住民側にしちゃちょっとエゲツない内容ではある。その上、セット感満載やらヌルいところが多々ありつつも、後半の畳み込む感じは流石なジョン・フォード。原住民以上にしつこく、そっちに染まってしまった者は姪っ子でも殺してしまえと鼻息荒くなる程に病的なジョン・ウェインが『家へ帰ろう』のほわっと切り替わる瞬間の上手さったらない。

鑑賞日:2020/12/23 監督:ジョン・フォード


時の翼にのって / ファラウェイ・ソー・クロース!

25年振りくらい。ベルリンの壁崩壊を挟んでの続編。地上に降り立ち『今はエンゲル』なカシエルを据え、人として生きる事の重さと文字通りの重さを描く。前作と異なり馬鹿みたいな娯楽をねじ込みつつ、統一ドイツの混乱と時の記憶を縦横無尽に撮り尽くすヴェンダース。当時からなぜだか評価低かったけども、懐の広さとでとても良い作品に仕上がっていると思われる。善良になりたいと歌うルー・リード、天使級なナスターシャ・キンスキーを始めとして、ヴェンダース組勢揃い+時間講釈する堕天使ウィレム・デフォーって具合で絶頂期(のちょっと後か)って感じ。U2の面々が天使化するMVも散々観たな。思い出深い作品。

鑑賞日:2020/12/21 監督:ヴィム・ヴェンダース


ひきしお

ロビンソン・クルーソーと流されて...が混じった感じでイイ。フライデイの如くに忠実な犬と引き換えにワン子状態になるカトリーヌ・ドヌーブと厭世とSの入り組んだ絶妙演技のマストロヤンニ。雑な感じで挿入されるナチの記憶とエーゲ海の陽光とで妙な温度差にクラクラしてくる。俺的理想郷な無人島とそれに引き立ちまくるイヴ・サンローラン衣装もこれまた眩しい。飛ばないピンクの機体のデカダンスさったらない。

鑑賞日:2020/12/19 監督:マルコ・フェレーリ


ダウンタウン物語

ひとりだけ別オーラなジョディ・フォスター目当てなものの、あんまり出てこないのが残念。子供だけの設定でやってやった感は理解できるし、どこを切り取ってもアラン・パーカー節満載なんだけども、何故だか捗らず。まぁ、でも平和な感じで良い。マイケル・ジャクソンは難易度高過ぎ。

鑑賞日:2020/12/18 監督:アラン・パーカー


Bubble

嫉妬と妬みがモリモリ膨らんで行くのが手に取る様に良く分かる。も、別の見方をすると何の変哲もない街の淡々とした日常の平衡を脅かす存在を排除する、と云う妙な使命感に動かされている様にも見える。教会の下りのスポットのシーンで日常の守りと外敵への攻めの意識が合致して、何やら神がかり的な状態に陥ってしまう悲劇な感じ。何にせよこのオバサンのおかげで悪人がいなくなって街は色々平和になっている風。とにかくずっとバーガー食べてる映画で腹減る。画面構成が絵心ありまくって素敵。

鑑賞日:2020/12/16 監督:スティーヴン・ソダーバーグ


二人で歩いた幾春秋

『喜びも悲しみも幾歳月』の灯台守から道路工夫へとジョブチェンジした風な佐田啓二とデコちゃん(とら江!!!)。文字通り子供の為に身を粉にするこの夫婦像で、最後は無くなっちゃいそうでなくならないたくましさ。丁度祖父母の世代の印象ってこんな感じではある。デコちゃん愛の鞭からの「メガネが〜」がヤバい。共に長年苦労してきた2人が講堂外にて人知れず安堵するシーンが素晴らしい。チョイ役な倍賞千恵子も可愛い。

鑑賞日:2020/12/14 監督:木下恵介


Four Times That Night

ぐわんぐわんクドいズームとモンド+サイケな『羅生門』〜『去年マリエンバートで』風。OPのアニメーションからあらゆるプロダクトまでお洒落。各エピソードのそれぞれがかなり無理がある&馬鹿だろって具合なものの、楽しいので良い。

鑑賞日:2020/12/12 監督:マリオ・バーヴァ


脱出

やたらとカジキネタが出てくると思ったら、ヘミングウェイ原作って事で納得。しかしまぁ、いちいち粋でクソがつくほど格好いいボギー(顔長いけど)と色気のムンムンで肝っ玉デカ目なローレン・バコールとの大人かつスムーズなやり取りが痺れる。終始冷静にしてるかと思いきや、ちょいと弱みを出したり震えたりするさじ加減もまた絶妙。で、名言の宝庫。劇中の歌コーナーってのは大体退屈な気がするけども、ホーギー・カーマイケルの演奏+ローレン・バコールには目と耳が釘付けになる。最後のクイックイッってのも最高。これはずっと観ていたい映画。

鑑賞日:2020/12/11 監督:ハワード・ホークス


草の上の昼食

マネの絵そのままに自然を讃えまくるのは良いとして、みんなテンションが異常。人工受精推奨の生物学者で婚約者がドイツ人とかフランス人的恨み節と云うか皮肉みたいなややこしさ。からの自然な性に目覚めた教授の「科学を粉砕せよー!」で科学と自然の間のニュートラルな位置へ収まるラストでスッキリする。大風吹かせてもいちいち構図がキマっているのと、水っ気たっぷりな圧巻の印象派的濡れ場は最早エロスが消し飛んで自然の営みにしか見えないのが凄い。

鑑賞日:2020/12/09 監督:ジャン・ルノワール


クリード 炎の宿敵

本作のあらすじチェックしないで観始めたら、いきなりドラゴが出てきてヒィィっとなる。で、スタローンの登場シーンがまたお洒落過ぎ。完全に4作目ありきな上に筋はいつものロッキー的様式美なんだけれども、脚本の出来が異常に良い印象。深い傷を負った同士のドラゴとロッキーのピリピリした顔合わせ以降の目だけの会話とか素晴らしい。一皮剥けて星条旗トランクスBLACK演出にも痺れたけど、やっぱりタオルの使い方にガツーンとやられる。そう来たかぁと脳内から気持ち良い汁が出まくる感じ。スタローンの元嫁にしてドルフ・ラングレンの劇中嫁のブリジット・ニールセンが4に続いてクズ過ぎて唖然となった。

鑑賞日:2020/12/07 監督:スティーブン・ケープル・ジュニア


劇場版 SHIROBAKO

ようやっと鑑賞。とりあえず23話の涙腺ぶっ壊れるみたいなやつはない。没落から盛り返すって筋なんだけど、多過ぎなキャラを揃えるのに尺を割きまくってる印象。前向きでやってる風でいて、昔の仲間を集めて云々がかなり後ろ向きって具合。全体としてどっちに重きを置きたいのか伝わりにくい所があり、どうにも中途半端さが否めない。この辺がどんどん新キャラが出てきて構築されるTV版と異なるところなんだろうな。西部劇→討ち入りも展開があんまり変わらなくてちょっと残念。ミムジー&ロロを従えたみゃーもりの麻薬的な脳内展開とジャージ姿の小笠原さんはなかなか。

鑑賞日:2020/12/06 監督:水島努


サン★ロレンツォの夜

配信のコンディションが酷過ぎるのはともかくとして、良く出来ていると思われる。ナチスから逃れアメリカの保護を求める村人たちの逃亡劇。その末にパルチザンとファシストの潰し合いに巻き込まれると云う世にも悲惨な道のりなものの、燦々と眩しい地中海性気候な画面のせいか妙にほのぼのした空気感も同時に持ち合わせる。同居人で繰り広げられる小麦畑のイタリア的混乱、緊迫感が凄まじい。狐が嫁入りしてそうなお天気雨と突然の終戦の組み合わせがまた上手。

鑑賞日:2020/12/05 監督:パオロ、ヴィットリオ・タヴィアーニ


フロント・ページ

ハワード・ホークス版と甲乙付け難い疾走感と役者の捲し立て。前作の男女に置き換えた斬新さとやりとりも良いけど、ジャック・レモン+ウォルター・マッソーの円熟した上手さとスレたブン屋ってのがピッタリ来る。チクチクとお国の色んな所を突き刺しつつ、窓ガラスと云う大ボケを最後までほったらかして突っ走るビリー・ワイルダー。ヤバすぎ。

鑑賞日:2020/12/03 監督:ビリー・ワイルダー