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トラフィック

Films: Jun.2021『トラフィック』ほか

Jul,01 2021 15:30

しょっぱなの『男たちの挽歌』からジョン・ウー気味な一月。
何故だか夜の歯磨きタイムに観ていた『ベルセルク』の勢いで劇場版とでやたらと続きものを観ていた印象。
そんなかんなながら、ジョン・カサヴェテス『ハズバンズ』あたりから始まって、ポール・グリモー『王と鳥』、クロード・シャブロル『気のいい女たち』、アッバス・キアロスタミ『風が吹くまま』等々、満点作品が結構多かった気もする。
そんな中でも『サンセット大通り』より悲惨な事になってるライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの『ベロニカ・フォスのあこがれ』。様々な二面性を光と影で表す描写に惚れ惚れする。
サブスク様々で先月から続くジャック・タチものって事で今月の顔は『トラフィック / ぼくの伯父さんの交通大戦争』で。遺作の『パラード』も素晴らしかった。
次作の作業で本数ちょい少なめな6月。7月はもっと観よう。

観た映画: 2021年6月
映画本数: 23本

風が吹くまま

人の生死ってのはいつどこで何が起こるか分からんもんで。実態のないもんを待ち続けるよりは目に見えて触れられるものを享受しろと諭されている様。働き盛りの男が殆どいない貧しい僻地の村。そんな日々の営みに携帯の電波拾いに行く都会の馬鹿っぽさまで村のルーチンに取り込まれているみたいで空恐ろしい。徐々にいわゆるオーバーヒートする主人公と迷路の様な村、広がる荒野に映える黄金色の麦畑、ひたすらの日中からの終盤の夜の鮮やかさ、からの川の流れに漂う如くな人(骨)って事で素晴らしい。

鑑賞日:2021/06/29 監督:アッバス・キアロスタミ


ベロニカ・フォスのあこがれ

搾取する方とされる側のエゲツなさ。ナチ時代の栄華からの転落に執着の女優像としてはグロリア・スワンソンより悲惨な事になっとる。モルヒネに音楽に映画と云う夢まで色んなモンを運ぶアメリカの皮肉が痛烈。現実と憧れを軸にしつつ、ドイツの辿ってきたあらゆる二面性が多様な光と影で描かれている。岡本喜八の『殺人狂時代』ばりな本能で拒否するレベルの精神病院描写の白で展開される黒々としたあれやこれって普通に上手過ぎ。で、多彩なトランジションにライトの十字から締めの十字まで細かい所までよくやる。

鑑賞日:2021/06/28 監督:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー


カラー・アウト・オブ・スペース 遭遇

激ヤバ汚染水映画。『マンディ』のチーム再びって事で、ずっと観たかったやつ。分かりやすい布石置きまくりの静かな序盤から、エンジンかかっていつものニコラス・ケイジになり始めてから、痛いの嫌いマンを悶絶させる描写多数を含めて色々テンション上がってくる。男泣き必至なアルパカからの俺の宝シリーズの末路。そして気合い入りまくりな特異点描写シーンでリアルにネットワークエラー映像切断されて超怖かった。あしたのジョー風からの投げやりなラストでズッコケるも、全体としては実に面白かった。

鑑賞日:2021/06/27 監督:リチャード・スタンリー


狼たちの絆

『冒険者たち』+『突然炎のごとく』+『男たちの挽歌』的ジョン・ウーって事で凄い事になってる。で、フランスにいながらにして香港に見えてくる3人。起承を経て、百恵ちゃんの『さよならの向う側』のカバーorパクリから香港へ戻ってからの加速度が半端ない。アラン・ドロン要員のレスリー・チャンは勿論良い役者と思うけど、車椅子演技と多彩な顔芸を披露するチョウ・ユンファの底なしな役者力が圧倒的。コーラレンチン等々、ラストの畳み掛けに爽快系な脳汁が出まくる。

鑑賞日:2021/06/26 監督:ジョン・ウー


パラード

モーションとユーモアの宝庫。ジャック・タチのやりたかった事は図らずもかどうなのか分からないけど、遺作にしてこう云う事だったんだろうってのが詰まっている感じ。幕間に舞台裏に観客にと全てを巻き込んで作られていく空間でしまいには映画的がどうのとか段々とどうでも良くなってくる。そもそもカメラワークやら展開が上手過ぎ上にキッチリ起承転結な締めの子供のところとか絶対的なセンスを感じる。

鑑賞日:2021/06/24 監督:ジャック・タチ


グーニーズ

30年以上振り。なんかこのアミューズメント感がもう凄い好きだった小学生のオレ。クソゲーだけど映画のおかけでキッチリ脳内補完余裕なファミコン版も好きだった。大人の汚い心で観ると予定調和なものの、しっかり盛り上げしっかり泣かせる音楽の使い方とか教科書レベルで感心する。合間とラストのシンディ・ローパーも勿論良い。80年代から90年代初頭ってのは特撮全開な人力技術の最高潮な時代だったって気もするな。当時版の手書きポスターも然り。マウスがパープル・レインのTシャツ着てんのに今回始めて気付いた。

鑑賞日:2021/06/22 監督:リチャード・ドナー


ディック・ロングはなぜ死んだのか?

ディックはロングでもアスホールは小さかったって事でどんだけ下品なんだ。逆にピンピンしてる残った2人は人間としてどんだけ計り知れないのかと。証拠隠滅を重ねる度に恥の上塗りを重ねまくってる風で実に良く出来てる。積み上げて積み上げてからの、浮気の相手は誰なのよって云う馬のシーンに『スイス・アーミー・マン』然りこの監督の絶対的な馬鹿センスを感じる。

鑑賞日:2021/06/21 監督:ダニエル・シャイナート


気のいい女たち

失われし60年代パリの圧倒的魅力とほぼほぼアニマルなジェンヌ達の生態。出勤してるだけ偉い。持て余し気味な若さとセットの如くな危険性って事で、綱渡り状態みたいな女子達を見舞う危うさのジャブ、からの終盤でガツーンとくる。で、あのラスト。怖過ぎ。全体的に男はゴミクズみたいな扱いだけど、まぁ反論はできん。ベルナデット・ラフォンを見てるだけで幸せになれる。

鑑賞日:2021/06/19 監督:クロード・シャブロル


シェーン

『わんぱくでもいい、たくましく育ってほしい』のハム的なフィーリングが漂う。主人公があんまりオーラがないし、子役はなんだか可愛くないし、あちこちなんか雑な気がするんだけど全体的にはとても良かった。北軍になんか恨みがありそうな訳あり風な流れ者。自分と一家が望むブルーカラー的生活の為に己を犠牲にすると云う漢っぷり。銃撃戦描写が凝縮されてるのは良いとして、なるべく拳で決着ってのは分かるけどそこの所は微妙にテンポは良くない気もする。ともあれ背中に投げかける『シェーン、カムバーック』の絵面で綺麗に締まってる。

鑑賞日:2021/06/17 監督:ジョージ・スティーヴンス


民衆の敵

ギャング映画の基礎との事で。見るからに非情っぽい表情のジェームズ・キャグニーが出てから結構楽しい。社会情勢のせいか、なるべくしてなったと云うか、そっち行く奴はどうしたってそっちへ行くと云うか。そんなパブリック・エネミー状態で色んな悪事に手を染めて行く訳だけども、馬のシーン等々の引きでの所業と雨の討ち入り前のアップなんかとで良く出来てる。玄関先に置くタイプの基礎の基礎を観させて頂いた具合。

鑑賞日:2021/06/15 監督:ウィリアム・A・ウェルマン


シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢

頑固じゃなきゃ貫徹できないってのは良く分かる。あくまでニ義的な事なのだろうけれども、世界の美しいものだけに思いを馳せてた男が世界から注目を集めるってのはカッコイイな。自分不器用っすからってレベルじゃないコミュ障でも言いたい事は作品に込めるってのは芸術家としては真っ当な姿なんじゃないだろうか。どれだけ脚色したのか分からないのと、やたらと壮大な音楽はどうかと思うけども、なかなか。

鑑賞日:2021/06/14 監督:ニルス・タヴェルニエ


トラフィック / ぼくの伯父さんの交通大戦争

人間のみならず、機械に至るまであらゆるモーションの宝庫。ユロ氏単体ってよりは全体的に調和が取れてる感じな割とフランスで良く見る光景。ほんと細かい所まで良く拾ってくるな。ラストの車と雨傘の画は素晴らしいの一言。モップ犬下敷きの爆発力。最高。

鑑賞日:2021/06/13 監督:ジャック・タチ


ベルセルク 黄金時代篇 III 降臨

スタッフの熱い意思を感じる、アニメ版より無駄にクオリティの高い濡れ場の数々。で、蝕の下りの沢城みゆきのクセがくど過ぎてやばい。ファントム・オブ・パラダイス完全体なフェムトことグリフィスの目が猛禽類のソレっぽい感じで良く出来てる。始まりに過ぎないってのは分かるけど、よくよく考えるとファンタジー全開なガッツ一行のこの後の展開って別の作品みたいよね。

鑑賞日:2021/06/12 監督:窪岡俊之


ベルセルク 黄金時代篇 II ドルドレイ攻略

端折りまくりつつ、良くも悪くも上手い事繋げてる印象。ゲノン提督のゲス具合とドルドレイに向けてのグリフィスの心境なんかはちょい弱い気もする。三国志能的には奇襲系は楽しいんだけど。時折、CG絵の無表情な奴が気持ち悪いけども、概ねクオリティは高過ぎて満足。鷹の団を去る時は既に対等の存在になっており、喪失感を得るのはグリフィスの方って原作からして良く出来てる。

鑑賞日:2021/06/11 監督:窪岡俊之


ベルセルク 黄金時代篇 I 覇王の卵

久々。アニメ版の声(特にキャスカ)に慣れちゃうとやや違和感がない事もないけれども、3DCGの画作りはこれはこれで気合いが入っている印象(泥臭い迫力があるかないかは別だけど)。ちゃんとした劇場版だと作画崩壊回みたいなのがないのが良い。鷹の団台頭からのグリフィス暗殺の下りなんかは大臣の計略がないと繋がらない気もしなくはないけれど、序盤の大事なところは大体やってるかと思われる。鉄板な平沢進+エヴァっぽい鷺巣劇伴とで上がる。

鑑賞日:2021/06/10 監督:窪岡俊之


王と鳥

細かいところまでヌルヌル動く上に圧倒的な建物萌え要素。悪政に革命とフランスあるあるなベタな内容が気にならない程のクオリティ。崩壊するレンガ作画とか凄過ぎ。王の兵器でありながら、革命の道具と化す考える鉄人、鳥籠開放でめでたし。配色も素晴らしい。本物の王の事を考えると超怖い。

鑑賞日:2021/06/09 監督:ポール・グリモー


暗殺

清河八郎に詳しくない上に司馬遼太郎も読んでないので細部が良く分からないなりに面白かった。幕府を上手い事欺きつつ、尊王攘夷で一貫してる基本筋でありながら、人から人へあっちこっち飛ぶ回想の入れ子のお陰で鑑賞者をブンブン揺さぶって疑心暗鬼の渦に巻き込む作りで結構スリリング。こうしてみると幕末史に俄然興味が出てきた。変わらぬ倒幕目的の清河八郎、目的が暗殺そのものに切り替わってる風の佐々木只三郎ってのもなかなかで、そこからのラストの対峙のシーンのあの顔つきがやばい。随所に盛り込む篠田正浩的な静止画も効いてるんだかどうなのかって具合だけども、個人的には割と好き。石抱き食らって悶絶する岩下志麻に底なしなエロスを感じる。

鑑賞日:2021/06/08 監督:篠田正浩


ハズバンズ

ハメ外すオッサン3人。葬式トリガーからの中年ならではの喪失を埋めようと埋めようとして、歌の如く暗闇で踊りまくるオッサン3人。グダグダ体感時間と即興がほとんど現実のソレな具合で凄いオッサン3人。ハイセンスなOPから、なんとなく人生を見つめ直してきた男を迎える怒りと優しさの両方とも与えてくれそうなジーナ・ローランズ(出ない)が絶妙。

鑑賞日:2021/06/07 監督:ジョン・カサヴェテス


ポリスアカデミー2 / 全員出動!

ゼッド動画詰め合わせみたいなやつは度々観てるんだけども、本編通しは30年振りくらい。全く色褪せないな。皆んなそれぞれ面白いけど、若い頃のU2ボノ属性の入ったゼッドが最強。シリーズで一番好きかもしれん。

鑑賞日:2021/06/06 監督:ジェリー・パリス


狼 / 男たちの挽歌・最終章

馬鹿みたいなシーンの連続なんだけど、いちいち徹底的にカッコ良い画に仕上がっているので、シリーズと関係ない感じでも無問題。義の人な関羽にマリアな東西混合香港事情に新旧時代の仁義の有無とで火傷しそうなくらいに熱い。3とは比べもんにならんクオリティな鳩、鳩、鳩のこれが観たかった。

鑑賞日:2021/06/05 監督:ジョン・ウー


男たちの挽歌Ⅲ アゲイン / 明日への誓い

何か観た覚えが無い上に微妙につまらん&鳩が出て来ないと思ったら、最終章と記憶がごっちゃになっていた。監督がジョン・ウーでなくなってキレも何も薄まりまくってる印象。漢っ気もあるにはあるけど、女性が絡んでなんだかなぁってな具合。マークの形が出来上がってくのはなかなか楽しい。レオン・カーフェイはラマンよりは生き生きしてた。

鑑賞日:2021/06/04 監督:ツイ・ハーク


男たちの挽歌 II

ムムッ、あれは凶兆!と云う巨大な前フリに敏感な国よね。人がゴミの様な大大大殺戮のカオスにいちいちキマりまくりな画をぶっ込んでくるから恐れ入る。炒飯の下りの飯テロ感からの店爆破の本気テロとか酷面白い。

鑑賞日:2021/06/02 監督:ジョン・ウー


男たちの挽歌

落ちぶれさせるだけ落ちぶれさせてからの最後の『巻き返し』の爽快感と怒涛の胸熱回収。死にに行くべく戻るチョウ・ユンファにマジ泣きできる。

鑑賞日:2021/06/01 監督:ジョン・ウー